引きこもったことで見えた景色
20歳までダイエットとは無縁な人生だった。
小学6年生の時から拒食症だった私は、厳しい食事制限も激しい運動をしなくても痩せた体で毎日を過ごせていた。
でも当時の私は、自分のことを「痩せている」だなんて意識はもちろんなく、周りのみんなと大差ない体型だと思い込んでいた。
また痩せた?ちゃんと食べてる?痩せすぎだよ
みんなからかけられるそんな言葉の数々は、ただの社交辞令、ただのあいさつ。
そんな風に思っていた。
非嘔吐過食に移行し、4年前までかけられていたそんな言葉は、社交辞令でもあいさつでもなんでもなく、わたしの体型に本気で心配して、かけられていた言葉だと気づいた。
当時撮られた写真のわたしは、痩せていて、いかにも折れそうな体だった。
羨ましいほど細い体と小さい輪郭。
当時死にたくなって泣き叫んでいた体重の数値は、今の私が憧れる数値で、夢のまた夢の遠い数値だった。
引きこもり生活の中で摂食障害は悪化をつづけ、簡単に操ることができていた体重計の数値ですら自分の意思ではどうすることもできなくなった。
痩せていないと外に出れない
家の中から誰かに覗かれているんじゃないか。
そんな見えない視線に恐れながら食べ物を詰め込む毎日。
痩せたい。
そう強く思えば思うほど、味のしない食べ物を詰め込んだ。
電子レンジを待つことすらできない。
麺を茹でている時間すら詰めたい。
調味料・ふりかけをそのまま食べていることに気づいたときには涙すら出なかった。
そんな過食の沼に溺れていたわたし。
外に出たい!痩せたい!
そんな欲求にかられ、山に登った。
そう、この引きこもり生活の中で新たに見つけた趣味。山登り。
歩くことで痩せられるかもしれない!
ダイエットの一環として始めた登山。
トレッキング。
地元が怖く近所を散歩することすらできなかった私が、顔見知りが誰もいない山なら隠れることなく堂々と歩けた。
「こんにちは」
通りすがりの登山客からかけられる挨拶も、気持ちよく返すことができた。
そんな自分にうれしくなった。
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子どもの頃から運動音痴で体育の時間が大嫌いだった。
体育の文字を見るだけでお腹が痛くなった。
昔の自分なら考えられない趣味。
「痩せられるかも。」
そんな気持ちから始めた登山は、枯渇していた私の心に潤いを与え、自然の力がわたしにパワーを与えてくれた。
たくさん歩いたのに体重減ってないじゃん!
なかなか減らない体重に発狂して死にたくなるけど、新たに見つけた趣味は、確実に私の人生に彩りをくれた。
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