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俳優・坂本龍一の軌跡
坂本龍一の50年近いキャリアの中でも、特筆すべき項目のひとつが、『ラストエンペラー』によって第60回アカデミー賞作曲賞を受賞したことだろう。
エンニオ・モリコーネをはじめとする映画音楽の巨匠たちが、監督のベルナルド・ベルトルッチへ、我こそはとアピールするなかで、坂本が音楽も手がけることが決まったのは、撮影終了から半年後。ベルトルッチは当初、坂本を〈俳優〉として起用しただけだった。
俳優・坂
安倍晋三元首相暗殺犯を描く『REVOLUTION+1』が映す風景
これほど足立正生の映画が話題になったことがあっただろうか。36年ぶりの監督作『幽閉者 テロリスト』(2007)、その10年後に撮られた『断食芸人』(2016)が意外なほど受け入れられなかったことを思えば、新作の『REVOLUTION+1』は、ひょっとすると、1965年に足立を含む日大新映研の学生たちが自主製作した実験映画『鎖陰』(1963)が新宿文化で上映された時以来か、同じく新宿文化で上映され
もっとみる闇と魔術的リアリズムで描く『夜を走る』
昼間、会社に営業へ訪れていた姿を記憶する女性が、夜もかなり更けた時間に駅前で立ちすくんでいるのを、2人づれの男のうちの1人が見つける。男は声をかけようと連れの男に言い出し、かくして3人は酒席をともにすることになるが、結局、終電を逃すことになる。そこから単調な日常が崩れてゆく『夜を走る』は、世界が無数の変貌の可能性で醸成されていることを示唆する。
郊外のスクラップ工場で働く秋本(足立智充)は、
連合赤軍映画としての『鬼畜大宴会』
国立映画アーカイブで、熊切和嘉監督の『鬼畜大宴会』を観た。フィルムで観るのは公開以来だから、24年ぶりか。
知っているひとは読み飛ばしてほしいが、70 年代の左翼グループの崩壊を、残酷スプラッターを加味して撮られたこの映画は、大阪芸術大学映像学科映画コースの卒業制作であり、PFFの準グランプリ選出後に一般劇場公開されるという〈出世コース〉を歩んだ。
久々に『鬼畜大宴会』を観て思ったのは、連