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短編小説「私がシンデレラの継母です」
2555文字
私の話を記事にしたいなんて、あなたも変わり者ですね。
誰が信じてくれるというんです、すっかり世間で私は悪ものです。
えぇ、正直に言うと、まさか、こんなことになるなんて思いもしませんでした。
私のやり方は、やはり間違っていたのでしょうか。
国外追放された娘二人は、前の夫との子です。
子どもの頃から、裕福な生活に憧れていた私は、持ち前の若さと野心で、村一番の富豪と結婚
短編小説「アニキ in wonderland」
さすがの俺も、今日はキメとかねぇと。それ位わかってる。
米良次朗、28歳独身、は内心焦っていた。
ぬらぬらと光るオールバックに黒のスーツ。覗いているテロテロした素材のシャツは、よりによって薔薇柄で、派手というより下品だ。胸元は大きく開き、もちろんネクタイなどほとんどつけたことはない。代わりにやたらと重そうな金色のネックレスが下がっている。今時こんなのが実在するか知らないが、ここは海も山も近い片田舎
短編小説「スマイル」
シメジとキャベツとミニトマトで飾られたペペロンチーノは、見た目の色合いもさることながら、辛さ、塩加減もちょうどよかった。
フォークをくるくる回して麺をまきつけながら、麻美は、目の前に座る浩一の顔をそっと盗み見た。
浩一は、いつも通り、温和としか表現しようのない鶴瓶のような笑みを湛えている。
笑うと目が一本線になるこの笑顔と、バリバリと仕事をこなすギャップにやられたのだ。
前の派遣先の上司だった浩一
短編小説「変なおじさん」
思えば初めから違和感はあった。遺影の男は、耳上で刈りそろえられた白髪に、ネクタイなんか締めて、記憶よりも随分と真っ当そうに見えた。
達郎がおじさんの訃報を受けたのは昨日の夜のことだった。おじさんはおじさんでも、このおじさんは、血の繋がらない、ただの近所のおじさんだ。実家を出た達郎は十年以上顔を合わせていない。
勤めに出るような姿を見たことが無く、いつも近所にふらりといる壮年の男は、子どもながら