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年度末、多忙につき

今朝、通勤時電車に揺られていると、急ブレーキが作動しました。
いきなりの衝撃に対して、立って乗車している人の多くがバランスを崩しました。

そんな中、僕はいつものように本を手に持ち立っていました。
僕の後ろに立っていた女性がバランスを崩し、僕にもたれかかる形になりました。

その時でした。
ちょうどその女性と僕の間に位置する場所に立っていた若い男性がその女性の背中を支え、優しく「大丈夫ですか?」と声をかけたではありませんか。

本の世界に夢中になっていた僕は、あっけにとられてその様子を見ていました。

もたれかかる形になった僕に対して申し訳なさそうな視線を送る女性に対して、僕は認識可能ギリギリの軽い会釈をすることしかできず、
体を支えるどころか声をかけることすらできなかったのです。

大丈夫ですか?
僕は大丈夫なので気にしないでください。

そうとっさに言えたらよかったのですが…。

瞬時に物事を重大なことと捉え落ち込む才能を持つ僕に、
追い打ちをかけたのが、

その気遣い満点の若い男性が
「恋人と一緒にいた」ということです。

見知らぬ女性に優しく手を差し伸べ、声をかけた後、恋人と手を繋ぎ、仲睦まじく電車を降りて行ったのです。

その後姿を呆然と眺める僕の劣等感ときたら…
皆さんも想像に難くないのではないかと思います。

せめてその男性が恋人とではなく1人で乗っていたならば、
僕も「この出会いをきっかけに恋に発展すれば素敵だねえ」と上から目線で無言のエールを送れたのかもしれませんが、
恋人と同伴となると話は変わってきます。

くそお…やられたなあ…。
心底悔しかった。

日々、何かにつけて比較したがる世の中や教育に毒を吐いている僕ですが、
こんな時は露骨に醜い心で劣等感を抱くのです。
心の中だけでの話なので誰にも文句は言わせません。

あのハラリさんも、確か「比較するのはヒトの本能だ、抗えない」的なことを言っていたはず。

出勤前から何だか惨めな僕に残された切り札は、
「自分の余裕の無さに気づける余裕はある」という苦しいものしかありません。

最近、27にして企業における年度末の多忙さを初体験している僕ですから、
余裕が無いのも仕方ないと言い聞かせながら。

もともとキャパは広い方では無いし、いったんキャパオーバーまでいって爆発してから傷だらけになりながら持ち前の反骨心で強くなって復活していくというタイプ(と自分では思っている)なので、

自分の余裕の無さに気づかせてくれたあの男性と女性に感謝しつつ、
これからも元気にひねくれた視点で世の中を見ながら、毒を吐いていきたいなあと思います。

小野トロ

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