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採用のレベルが上がっているからこそ本当に大事なこと

ここに来て、人材の確保がとても難しくなっているのを肌で感じます。

新卒採用でいうと、今年は母集団が集まらない、まだ内定者を出せていないという企業が多いのではないかと思います。

昨年に比べて、圧倒的に採用が難しくなっているのには大きく2つの理由があります。

1つには、少子高齢化で、大学生や高校生の絶対数が減っているということはよくご存じだと思います。

もう1つは、今年度(2024年3月卒)の採用活動について、リクルート系の就職みらい研究所の調査では、全業種を合わせた平均採用予定数が昨年よりも約10%(平均26.9人から29.5人に)も増えているからです。

学生の数が減っているのに、企業は全体で採用数を昨年よりも増やしているので、当然採用活動は過熱するわけです。

採用ブランディングと言う言葉を初めて世の中に打ち出し、大学生の採用事情に詳しい、むすび株式会社の深澤社長に伺ったのですが、昨年は大学生一人当たり平均して12~13社ぐらい企業訪問をして内定を獲得していたのですが、今年は大学生一人当たり平均4~5社に訪問して、2~3社から内定が出るような状態なのだそうです。

自分が希望する企業を数社受けただけで、内定をもらえてしまうという、とてもうらやましい状況になっています。

ということは、学生のエントリー企業数が半分以下になっているので、大手でも、有名でも、ベンチャーでもない企業はなかなかエントリーの対象にならず、母集団数が昨年に比べて半減している企業も出てきているようです。

中途採用にいたっては、若くて、業界経験があって、さらに必要な資格も持っているなどの即戦力の人材の採用は、一部の企業以外はほぼ不可能な状態になっています。

そうすると知名度の低い中堅・中小企業は、近い将来採用方法をいくら工夫しても、応募者がまったく集まらないという状況になる可能性はかなり高いと言えます。

このような状況の中で、今人材採用に苦戦している企業が、人材確保を実現する唯一と考えられる解決策は、人材が本当に魅力を感じる「本質的にいい会社」になり、その良さを効果的に打ち出して、一貫した採用活動を展開することです。


そこで今回の記事では、

・「本質的にいい会社」とはどのような会社なのか
・「本質的にいい会社」をつくる際に考慮しなければならない人間ならではの本質的な3つの欲求とは何か
・この人間の本質的な3つの欲求を満たし、社内に創造性と相乗効果を生み出す経営を実現するにはどうしたらよいのか


の主に3点についてお伝えしたいと思います。




1、人材を確保できる「本質的にいい会社」とは

人材を安定的に確保することができるようになるためには、給与や休日などの勤務条件や福利厚生などの処遇面での改善もとても重要ですが、それだけでは他社と、特に大手有名企業との差別化はできません。


特に中堅・中小企業が大企業と対抗して人材を確保できるようになるためには、唯一大企業と差別化できる、本質的な部分でいい会社になることが必須の戦略です。

中堅・中小企業が勤務条件や福利厚生で大企業に勝ることは難しいですし、大企業並みに充実させたとしても、知名度や信頼度ではどうしても大企業に負けてしまいます。

したがって、大企業には太刀打ちできない部分で勝負するのではなく、大企業に勝る可能性がある「本質的な部分」を鍛えて、いい会社になる必要があります。


それでは、外部人材や自社の社員にとって「本質的にいい会社」とはどのような会社なのでしょうか。

一言で言うと、「社員一人ひとりを大切にして、お客様や世の中の人びとに貢献する会社」です。

もう少し詳しく言うと、社員一人ひとりが最大限に力を発揮し、社内に創造性と相乗効果を生み出すことによって、その会社独自で質の高い価値を提供し続け、世の中の人びとに喜んでもらえる会社です。

したがって、「本質的にいい会社」をつくるためには、社員を大切にし、社員が最大限の力を発揮できるような環境をつくることが起点になりますが、どうしたら社員のモチベーションを高め、最大限の力を発揮してもらえるようになるのでしょうか。


2、人間ならではの「本質的な3つの欲求」

人間には、他の動物にはない、人間ならではの欲求があります。

動物は生存していくために、生理的欲求や安全の欲求、所属の欲求を無意識に追求しています。

捕食活動を行ったり、危険を避けたり、集団で行動したりしているわけですが、もちろん人間にも生存していくために、この動物と同じ生理的欲求、安全の欲求、所属の欲求がありますが、人間はそれだけのために生きているわけではありません。

人間は、動物的な生存の欲求を超えた、より高次の欲求を持っていて、生存の欲求を満たしながら、本質的にはその生存の欲求を超えた高次の欲求を満たしたいと思っています。

そして、人間はその高次の欲求が満たされると、人間としての最大の喜びを感じることができます。

ではその生存の欲求を超えた人間ならではの欲求とはどのようなものなのでしょうか。


それは次の3つです。

・人や社会の役に立てる存在になりたい
・自分らしく成長したい
・よい仲間に受け入れられ、認められたい

という3つの欲求です。


この人間ならではの高次の欲求は、

・人を愛したい
・自分自身を愛したい
・人から愛されたい

という言葉に置き換えることもできます。

いかがでしょうか。この人間ならではの高次の欲求、やっぱりそうだよねと思えるでしょうか。

たとえば、信頼できる仲間から認められることを一番重視している人は、そのためにも仲間を含めた周りの人びとの役に立つ必要があると考えていますし、人の役に立てるようになるためには、自分が成長しないといけないとわかっています。

また、人の役に立つことに最も喜びを感じる人は、そのために自分らしく成長したいと考えていますし、最終的には自分の行ったことを周りの人びとから認めてもらいたいと思っています。

したがって、会社が社員に対してこの本質的な3つの欲求を仕事をとおして満たすことができる環境を整えてあげると、社員のモチベーションは自然と高まり、もっと努力・創意工夫してさらにこの欲求を満たしていきたいという好循環が会社の中に生まれるようになります。

ですから、社員に最大限の力を発揮してもらい、社内に創造性と相乗効果を生み出すためには、この人間が本質的に求めている3つの欲求を満たすことができる働く環境を整えてあげることがとても重要です。

このように、人間の本質的な3つの欲求を満たすことを意識しながら経営を行えば、社員が仕事をとおして最も求めている喜びを得られることになるので、この会社に入りたい、そしてできるだけここで長く働きたいと思う「本質的にいい会社」になることができます。


人は、一貫性のある想いと行動に惹かれ、信頼します。

だからこそ、社員に「やりがい」「成長」「よい仲間」を実感させ、社内に創造性と相乗効果を生み出す「ビジョン経営」が大事になってきます。

次項では、実際に、どのように実現したらよいのかについてお伝えしたいと思います。


3、社内に創造性と相乗効果を生み出す組織作りとは?

社員一人ひとりが「やりがい」「成長」「よい仲間」を実感できる環境をつくり、社内に創造性と相乗効果が生まれ、世の中の人びとが本当に求めている価値を生み出し続けられるようになる組織を実現するためには、次の内容を次の順番で取り組んでいきます。

・企業理念の言語化
・人や社会の役に立つための経営方針の明確化
・自分らしく成長できる環境の整備
・信頼し、協力し合える人間関係の構築

1つ1つ見ていきましょう。

①企業理念の言語化

企業理念については、皆さんよくご存じだと思いますが、自分の会社がこの世の中に存在する意義(理由)や事業を展開する上での重要な価値観をまとめたものです。

事業を展開していく上での重要な判断基準になるわけですが、これを経営者だけが考えるのではなく、社員の想いと合わせて言語化することが重要です。

なぜ言語化することが重要かと言うと、言語化していないと当然社員の間での理解度に差が出ますし、さまざまな重要な場面で社員が活用することができないからです。


②人や社会の役に立つための経営方針の明確化

企業理念の言語化ができたら、次にお客様や社会の役に立つための経営方針の明確化を行います。

要するに、自分の会社はお客様や社会の役に立つために、どのような価値を提供できるどのような会社になりたいのか(ビジョン)とそれをどのように実現するのかを明確にしたものが、人や社会の役に立つための経営方針です。

数年後(3~10年後)に自分の会社はどのような価値を提供できるどんな会社になりたいのかを明確にした「わくわくするビジョン」を描き、そのビジョン実現のための戦略を立案し、その戦略を実現するために今年は各組織でどのように活動するのか目標を設定し、その組織目標を実現するための個人目標を個人のビジョンの実現も見据えながら設定します。

このことによって自分の会社が世の中に価値提供していく一貫性のある道筋が見えてくるので、社員にとっては目の前の仕事に取り組むことにやりがいや意味を感じられるようになります。


③自分らしく成長できる環境の整備

これは、社員の主体性を重んじながら、社員が自分らしく成長できる環境を整えることです。

このことを実現するためには、管理職が各々の社員の仕事の目的とゴールを明確にするサポートをして、そのゴールの達成方法は社員に任せ、社員が自分で考えて、創意工夫し、良い試行錯誤ができるようにマネジメントすることが最大のポイントです。

社員一人ひとりに良い試行錯誤をさせ、成長を促すためには、先ほども言ったように各々の仕事の目的とゴールを明確にして管理職と社員の間で共有する必要がありますし、良い試行錯誤をするために必要な情報をできるだけ提供してあげる必要があります。

また、社員の成長を促すために「求める人材要件」を会社が提示してあげる必要がありますし、社員一人ひとりの仕事ぶりをよく見ていて、定期的な1on1などでフィードバックをしてあげることも重要です。

そして、社員が主体的に行った試行錯誤で成功したり、成果を上げた場合は、明確に認めてあげる、称賛することが重要で、もし社員が失敗した場合は、管理職はその原因を一緒に考えて、管理職がその原因の解消に向けて責任を持って対応するように促すことも重要です。


④信頼し、協力し合える人間関係の構築

信頼し、協力し合える人間関係をつくることは、ある意味組織に創造性や相乗効果を生み出すための土台になる訳ですが、とらえどころがない部分もあるので、どうしたらよいかわからないというケースも多いと思います。

最も重要なことは、お互いを違う存在であり、それが当たり前で、その違う存在を違う存在としてそのまま認める、存在承認するということです。

このお互いの存在を違うものとして認め合うというベースがないと、信頼し、協力し合う人間関係をつくることはできません。

そして、信頼し、協力し合える人間関係をつくる上で最も重要な姿勢は、相手をありのままに理解しようとすることです。

自分が持っている過去からの経験則や価値観をいったん横に置き、相手がどのような状況にあり、どのような考え方を持ち、どうしたいのかなど、相手に100%意識を向け、ありのままに聞こうとすることです。

いわゆる「傾聴」ですね。

そして、傾聴の次に大事なことは、傾聴によってわかった、相手が大切にしていることを尊重することです。

たとえ、相手が大切にしていることが自分の価値観とは違ったとしても、相手はそれを大切にしているんだなということを受け入れます。

その上で、自分が大切にしていることと相手が大切にしていることの両方を大切にしながら、自分の考えだけでもない、相手の考えだけでもない、第三の案を見つけようとすることが重要です。

このWin‐Winを見つけようとすることが、創造性と相乗効果を生み出します。

このように、人や社会の役に立つ一貫性のある経営方針を明確にし、社員が自分らしく成長できる環境を整備し、信頼し、協力し合える人間関係を築こうとする組織づくりに継続的に取り組んでいけば、社員は「やりがい」「成長」「よい仲間」を実感できるようになり、社内に創造性と相乗効果が生まれます。

そして、社内に創造性と相乗効果が生まれることによって、世の中に対して独自で、より質の高い価値を提供できるようになり、お客様や世の中の人びとに喜んでもらえることができ、自分たちもうれしいという、誰もが喜ぶWin‐Winの状態が生まれます。

このような状態を生み出している会社に魅力を感じ、一緒にこの事業にできるだけ長くたずさわりたいと思うのは当然の結果です。

全員が当事者意識をもって働くことができれば、お客様、世の中の人々に対して独自で質の高い価値を提供し続けることができる「本当にいい会社」になるための近道であり、今考えられるもっとも確実な方法だと思います。



4、最後に

もしあなたの会社が、世の中の人びとが本当に求めている価値を提供していきたいと考えているのであれば、ぜひ存続し、発展していって欲しいと思います。

そして、あなたの会社が存続し、発展していくためには、あなたの会社の考え方や方針、組織風土に共感し、一緒に働きたいと思う仲間が自然に増えていく「本当にいい会社」になる必要があります。

「本当にいい会社」とは、社員が「やりがい」「成長」「よい仲間」を実感でき、社内に創造性と相乗効果が生まれ、世の中の人びとが本当に求める、あなたの会社独自で、質の高い価値を提供し続けられる会社です。


この「本当にいい会社」になるための近道であり、今もっとも確実な方法が「ビジョンを明確にし、カルチャーにあった人材のみを採用するということ。

これは、少し時間がかかりますが、一旦形ができ始めるとすぐにいい循環が必ず生まれます。

「採用=カルチャーフィット」

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