採用はカルチャーフィットが大事
「せっかく入社したのに、3か月で退職してしまった」
「面接では評判が良かったのに、なかなかチームになじまない」
企業の採用活動において、このような状況は珍しくありません。
こうした早期退職やミスマッチを防止するために注目されているのが「カルチャーフィット」という考え方です。
カルチャーフィットは「企業の文化や社風にどれだけ適しているか」といった意味で使われ、近年注目を集めている採用基準のひとつです。
そこで今回は、カルチャーフィットのメリットや、カルチャーフィットする人材を採用するための考え方をご紹介します。ぜひ、参考にしてください。
1、カルチャーフィットとは
カルチャーフィットとは、企業の文化や社風に対しての適応性を示しており、求職者の価値観や性格特性が企業文化と合っているかどうかを採用基準に設ける手法です。
新しく採用する人が企業文化に対しての適応があると、企業理念が浸透しやすく、離職率をおさえることができます。
逆にカルチャーフィットがない人だと、企業風土に合わず、早期に離職してしまうリスクも高いでしょう。
2、カルチャーフィットのメリット
カルチャーフィットは今、採用活動で非常に重視されるようになっています。
特に魅力的な事業を創出している成長ベンチャー各社では、ほぼ100%の確率で、どんなにスキルが高い人でも、自社のビジョンや人材価値観に合致しない人は採用しないという明確さを持っています。
いったいなぜカルチャーフィットは、そこまで重要なのでしょうか。
採用時にカルチャーフィットを重視するメリットは下記の3点です。
①早期離職を防げる
カルチャーフィットを重視する一番のメリットは、早期離職に歯止めをかけられる点です。自社の社風や価値観にフィットした人を採用するため、入社後のギャップを理由に退職する人の割合減少が期待できます。
また、似た価値観を持つ社員が集まれば、コミュニケーションが円滑になる効果もあります。
とある会社で「マッチ率50%以下の人は面接に呼ばない」というルールをつくったところ、翌年1年間の新卒離職率が0%になったそうです。ほかにもマッチ率の高い人材を優先して選出することで、内定承諾率が20%向上した会社もあります。
会社に長く定着してもらうには、採用段階でカルチャーフィットした人材の見極めが重要です。
②生産性が向上する
社内にカルチャーフィットした人材が増えると、業務の生産性向上が期待できます。会社の経営方針や大切にしている考え方にフィットできていれば、社員自ら「自社にとって何が必要か」「何が求められているのか」を察知し、自主的に動けるようになるためです。
また同じ価値観を共有する者同士が集まると、組織全体としての一体感も生まれます。カルチャーフィットを取り入れた採用活動は、社内に良いサイクルをもたらし、結果的に生産性向上が期待できるのです。
③従業員エンゲージメントが向上する
カルチャーフィットした人材が集まり、コミュニケーションが活性化したり、生産性が向上したりすると、従業員自身が会社に対してポジティブな印象を形成します。安心して会社に所属し、過ごすことができるため、会社の将来に対しても希望を持つことができるのです。
入社してしばらく経ち、業務に慣れてくると、会社の理念やビジョン、経営計画と自らの業務との結びつきを理解することができます。
そのとき、会社の文化と自らの価値観がフィットしていれば、日々の業務がどのように会社の将来に貢献しているかを感じ取りやすく、さらに意欲的に取り組むことができるでしょう。
足元の業務だけでなく、会社の将来を見通して前向きな気持ちになれることで、ますます会社に貢献したいと考えるようになります。
3、カルチャーフィットの注意点
メリットばかりお話ししてもダメなので、デメリットになり得る部分もお話し出来ればと思います。
カルチャーフィットのデメリットは、過大評価しすぎると、企業内の多様性が失われる点です。
多様性を失い同質性が高まると、チーム全員が同様の考え方をするようになり、新しいアイデアが生まれにくくなるでしょう。
また、優秀な人材を見逃してしまう可能性もあります。
企業カルチャーが明確になっていないまま採用活動を行うと、採用担当者の「この人は自社と合っていない気がする」「この人なら自社でやっていけそうだ」という感覚で採用するしかありません。
採用基準にカルチャーフィットを取り入れる場合は、採用活動をする前に自社のカルチャーを明確にして、採用担当者に落とし込むことが重要です。
4、カルチャーフィットのためにすべきこと
カルチャーフィットする人材を採用するために、大事にすべき2つのポイントをお話ししていきます。
①企業のカルチャーを明確にする
カルチャーフィットする人材を採用するためには、企業のカルチャーを明確にすることが必要です。
最初にすべきことは、企業の既存社員に話を聞くことです。
「あなたは、何を大切にして仕事をしているのか?」
「自社の好きなところはどこなのか?」
「どうして好きなのか?」
上記の質問をしてみることで、いくつか共通する要素が出てくるはずです。
また、「普段どういうコミュニケーションを取っているのか」「どういう仕事の進め方をしているのか」なども確認していきます。
そうすることで、いきいきと働くために必要な要素がはっきりしてくるでしょう。
そして聞いた内容を言語化し、採用時には定量的に評価できるようにするのが合理的なやり方です。
②求職者への質問の質を上げる
求職者がカルチャーフィットする人材かを見極めるためには、言語化した内容に基づいて、自社カルチャーを特徴づける項目を質問していきましょう。
質問をするときには、個々の項目について、どのように体現してきたのかを具体的に説明してもらうのがおすすめです。
例えば、仕事の進め方が合うかを見極めたいときには、「何を基準にして意思決定をしてきたか」「プレゼンテーションするときには何を重視してきたか」などを確認しましょう。
また、自社の大切にしている理念や価値観に求職者が合うかを確認する場合は、感情や価値観が見え隠れしているキーワードを捕まえて掘り下げてください。
例として
当社は◯◯という考えを大切にしています。あなたは◯◯についてどのように考えていますか。
・当社の理念は◯◯なのですが、あなたが◯◯を感じた(◯◯について考えた)エピソードがあればお聞かせください。
自社カルチャーへの共感度を知ると同時に、発信している内容を理解して応答するかを確認して「転職先について知ろう」という候補者の積極性や意欲を知ることができます。
「知っているかどうか」とテストするような質問の仕方では候補者を萎縮させてしまうため言葉選びの工夫は必要ですが、情報収集能力も測れるので、ぜひ面接の場で投げかけてみてください。
あとは最後に逆質問を設ける面接がほとんどだと思いますが、自由度が高い質問だからこそ、採用候補者の本音が浮き彫りになります。
会社の方向性に合わない質問が出ると、そこで自社のカルチャーにはフィットしない人物だと判断できるかもしれません。たとえば、社員の積極性を重視する会社で「研修制度は充実していますか?」と質問された場合には「自力で学ぶ姿勢はないのか?」と探ることができます。
また「とくにありません」なんて返されると「そこまで自社の志望度は高くないのか?」と感じ取れるでしょう。採用候補者のリアルな人物像が垣間見える質問なので、面接の最後に入れると良いでしょう。
5、最後に
今回はカルチャーフィットのメリットや注意点、カルチャーフィットする人材を採用するためにすべきことについてご紹介しました。
カルチャーフィット採用を導入すると、早期離職を防ぎ、生産性向上が期待できます。
しかしカルチャーフィットを重視しすぎると、新しいアイデアが生まれなくなり、企業としての成長が止まってしまうかもしれません。
これまでの企業の文化や風土と、新しい価値観のバランスを取ることが大切です。