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本の感想

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2020年に読んだ本の感想です。
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2020年4月の記事一覧

アディクションから逃れる 町田康 『しらふで生きる: 大酒飲みの決断』

(2020年の24冊目)昨年Kさんと会ったときに知って読もうと思っていた本。1日平均3000円ぐらい酒に使ってた、という大酒飲みの作家がどうやって酒を辞めたのか、について書いた本っぽい感じなのだが、酒の辞め方については正直よくわかんない。っていうか、途中がめちゃくちゃダラダラしててダルかった。が、ところどころ面白い。

とくに以下の

酒を飲みたいというのは理屈ではなく、実際的な身体の欲求であるか

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手仕事から見る民藝の地図 柳宗悦 『手仕事の日本』

(2020年の23冊目)『アウト・オブ・民藝』から柳宗悦への関心が少し高まりつつあったので。

機械は世界のものを共通にしてしまいます。それに残念なことに機械はとかく利得のために用いられるので、出来る品物が粗末になりがちであります。さらに人間が機械に使われてしまうためか、働く人からとかく悦びを奪ってしまいます。(P. 11-12)

のっけからマルクスの疎外論めいた話がでてきて度肝を抜く。こうした

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一家に一冊か!? 20世紀アートの教科書 『ART SINCE 1900: 図鑑1900年以後の芸術』

(2020年の22冊目)ほぼ毎日ちょっとずつ読み進めていた本を読み終える。副題にある通り、1900年〜2015年までのアートのトピックを著名なアメリカの批評家・研究者が語り尽くすような教科書というか、イメージ的な美術の資料集みたいな本。900ページぐらいあってサイズも巨大で、我が家にある本の中でも2番目ぐらいのヴォリューム感。図版は基本的にカラーで印刷もまあまあ良いので値段もそこそこするのだが、本

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衝撃的に面白く、複雑にカナシイ ルシア・ベルリン 『掃除婦のための手引き書』

(2020年の21冊目)2019年の海外文学翻訳書で異例のヒットとなった一冊。Twitter上で話題になっていたのは目にしていたがようやく読む。本国アメリカでも2015年に本書の底本となった短編集がでるまで知る人ぞ知る作家だったというが、なぜ、こんなにスゴい作家がそのような位置に甘んじていたのか、よくわからない。ルシア・ベルリンの作品が持つ、衝撃的な面白さ、とにかく笑えるのに、とてもカナシイ(ペー

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事例が新しいし、リーダブル 三谷宏治 『すべての働く人のための新しい経営学』

(2020年の20冊目)たまにはビジネス関係の本も。2019年にでた新しい経営学の入門書。企業の事例を見ていきながら、ビジネスモデルや戦略、思考のフレームワークなどを解説していく本。新しい本なので事例も最新事例まで押さえているし大変リーダブルで良かった。

増補部分が良いので文庫版で買い直す価値あり 千葉雅也 『勉強の哲学: 来たるべきバカのために 増補版』

(2020年の19冊目)本書については単行本を読んだときにも結構長めに感想を書いていた。当たり前だが文庫版になってもその価値が変わることなく、勉強のやり方を教えてくれる良書であり、かつ、文庫版の増補部分である「補章 意味から形へ - 楽しい暮らしのために」が加わったことで本書の射程は生活のレベルへとより広がっているともいえる。

今回読み直してみて本書で言及されているユーモアのあり方、このモードに

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いまこそ、本当のマルクスを 田上孝一 『マルクス哲学入門』

いまこそ、本当のマルクスを 田上孝一 『マルクス哲学入門』

(2020年の18冊目)20世紀に最も影響を与えた思想家であり、かつて関心をもっていたアドルノを読むのにも避けては通れないながらも、敬して遠ざけていた(正確には『資本論』を通読しようとしたけど、岩波文庫の6巻で挫折した)マルクス。Twitterでこの入門書の良い評判を目にしたので読んでみたのだが、非常に勉強になるテクストだった。

本文が120ページぐらいとちょっとしたパンフレットとも言える小著な

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