衝撃的に面白く、複雑にカナシイ ルシア・ベルリン 『掃除婦のための手引き書』

(2020年の21冊目)2019年の海外文学翻訳書で異例のヒットとなった一冊。Twitter上で話題になっていたのは目にしていたがようやく読む。本国アメリカでも2015年に本書の底本となった短編集がでるまで知る人ぞ知る作家だったというが、なぜ、こんなにスゴい作家がそのような位置に甘んじていたのか、よくわからない。ルシア・ベルリンの作品が持つ、衝撃的な面白さ、とにかく笑えるのに、とてもカナシイ(ペーソスや痛みや愛しさが複雑に入り混じった哀しさ)がポピュラリティを得るには、時間が必要だったのかもしれない。

作家自自身の人生が投影されている作品群は、多彩すぎてひとりの人間の人生とはとても思えない。そこに通底しているのははじけるようなエネルギーであり、驚きに満ちたストーリーテリングに圧倒される。とにかくスゴい本。底本となったアンソロジーにはまだ訳出されていない作品もあるという。残りの作品を読む日がとても楽しみ。久しぶりに小説を読んだ気がするが、真夜中に大声で笑ってしまった。

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