インシデンツ(8)
「ところで、野原さん」とハナホウ・ジローは言った。
「あなたはその依頼主の方の父親が誰かあたりをつけていらっしゃいますか?」
ぼくはハナホウ・ジローから受け取ったメモから目をあげる。
「いえ。ただ、今回の依頼主も韓国にルーツがある方なんです。ですから、テディ金山が父親かもしれないとは勝手に思い込んでいたかもしれません」
「その方は何年生まれですか?」
「ぼくの三つ上と聞いていますから一九八二年ですね」
「だとしたら、父親がテディ金山である可能性は限りなく低いでしょうな」
ハナ