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2022年7月の記事一覧
【短編小説】カプセル
お、やった。シークレットだ。
ん、あぁこれ?
知らない?カプセルトイ。ガチャガチャとも呼ばれているやつだよ。
ほら。表記された小銭分入れて、このハンドルを回すでしょう?
その時の音からきてるんじゃないかな。まぁ詳しくは知らないけれど。
どうせだし、あんたも先行き占うつもりでやってみ?お金なら出すから。
そうそう。そこにコインを入れて…そんで、それ回してご覧?
おぉ、あんたもってるねぇ。レア
【短編小説】うちの子
動物を飼ってる人ってさ、自らのペットを『うちの子』って言うじゃん?あれってすごくいいよね。
愛玩ではなくもう家族の一員なんだよ、彼らにとっては。けれど動物を飼ったことのない人からしてみれば、ペットはペット。そんな呼び方をする意味が理解出来ない人もいると思う。
責めはしていないよ?僕も昔は理解が出来ない者達の枠の中にいたのだから。
だからこそ、僕は理解しようと善処した。
そうして僕はやっとその
【短編小説】進めない、進む
我先にと争うようにけたたましく鳴く蝉達の声を除けば、ここは本当に静かなところだ。
手頃な場所に腰掛けてギリギリ地面に届かない足をブラブラさせていると、またあいつがやってきた。
「よぉ。久し振り」
またキミか。この時期になると毎年1人でくるよね。友達とかいないの?
僕がそう問いかけると、あいつはふっと笑ってみせた。
「お前が生きてたらきっと、いつまでも昔のこと引きずって生きるなー!とか言うんだろ
【短編小説】例えば、守る為に吐く嘘のような
「それって美味しいの?」
放課後になり、生徒が私しかいない教室で小袋に詰められたグミをつまんでいると、先生はそう訊いてきた。
「美味しくなきゃ食べないですよ」
「相変わらず可愛くない回答だな…」
可愛くなくて結構です。と返して先生から顔を逸らすと、先生は私の手許からひょいとグミの小袋を取り上げ、それの成分表をまじまじと見た。
「なんですか…」
「あー、残念!ローカロリーのこんにゃく入りかぁ!
【短編小説】断れない
私は昔から、頼まれると嫌とは言えない性格だった。
掃除手伝って。
いいよ。
虫退治してくれる?
任せて。
それ1口頂戴。
どうぞ。
と、まぁこんな感じに。
断って相手の気分を損ねたくなかったし、何より自身が、誰かの役に立てているという充足感を得ることが出来たから。
こういう性格だからこそ、大変なことも多々あったけれどね。
だからさ、今もすっごく困っているんだ。
あなたは私に、助けてくれ
【短編小説】夜空に問う
夜空を見る時、その日の気分やどう1日を過ごしたかによって、見え方が変わると思っている。
大切な人と喧嘩した日。
誰かに親切に出来た日。
悲しい別れがあった日。
何かある度に、僕は夜空をぼんやりと眺める。
叱責してくれている気がして。
共に喜んでくれている気がして。
慰めてくれている気がして。
ただ、こういう時は夜空が何を投げかけてくれているのか分からない。
あいつの血液で赤黒く染まった両手
【短編小説】あと一歩
もう嫌だ。
もう疲れた。
もう知らない。
『もう』ってつくその言葉達を、何度心の中で叫んできただろう。
校舎の屋上に、申し訳程度に設置された低い柵。それはもう越えたけれど、あともう一歩踏み出せたなら、楽になるのかな。
「千歳!」
あー、またきた。煩わしい奴が。
「なに?入江くん」
「頼むからこっちへきてくれ…!馬鹿な真似するな!!」
へぇ。その『馬鹿な真似』に縋るしか選択肢がなかった人間