【短編小説】推し
僕には昔から、推し続けている人がいる。
推しがいるっていうのは幸せなことだ。その存在だけで、その人を推していることで、こんなにも世界が素晴らしいものに感じる。
『みんな、今日も1日お疲れ様!(*^^*)』
そんな推しの何気ない呟き投稿だけで、今日も生きていて良かったと思える。
推しにお疲れ様って労われた。例えそれがその人を推している不特定多数の人間に投げかけられた言葉だとしても、僕は明日も生きていける。
推しはみんなの推しであって、誰かが独り占めしていいもんじゃない。
遠くからその輝きを眺めているだけで、ファンってのは満足なんだ。
ねぇ、キミにこの言葉の意味が分かる?
あの人が最近怯えているストーカーはキミだよね?
頼むからもうあの人に付き纏わないでくれるかな?最近の投稿を見ているだけでキミがどれだけ悪質な奴かは、手に取るように分かったよ。
そういえばキミ、他の人にも手を出そうとしているらしいじゃん。
ゴシップ記事とかはあまり読まないんだけれどね、あの人に関わることなら僕は何でも把握しておきたいんだ。ちなみにキミの住所も行きつけのお店もこっちは全部知っているから、逃げようったって無駄だよ。
これ以上僕の推しを泣かせるようなことしたら、そうだなぁ…きっと明日には分解されて、キミの地区で生ゴミとして、狭い袋の中へと詰められているかもね。
それが嫌なら金輪際、あの人に近付くなよ。分かった?
はー…。自覚がないってのも厄介だよね。
一部の界隈でもてはやされているからって、調子乗り過ぎだっての。
あ、推しがまた呟きを更新している。すぐ見て反応しなきゃ。
いつも使っているアカウントは、何故かストーカー被害にあの人が遭い始めた時期にブロックされたけれど、アカウントなんて幾らでも作れるからね。
ああ…今日も推しが尊いなぁ。
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