【短編小説】甘い蜜
人の不幸は蜜の味、って言葉を知っているかい?
あれってひどいと思わない?
だってさ、他者が痛い目遭っているのを喜んでいるように聞こえるだろう?俺はそんな人間になりたくはないね。
だから、お前も早く楽になれよ。つまらない意地張っていても、辛いだけだぞ?
俺だって本当はこんなこと、したくないんだ。誰かを苦しめる手法は好まない。お前が苦しんでいるのは、見ている方も心にくるものがある。
早いとこ、真実を話してくれないかな?そうすればお前はすぐ家に帰れるんだし、俺もお前にこれ以上ひどいことしなくて済むし…。あれだ、ウィンウィンってやつだ。
ん?あぁ。確かに、お前の義理の娘さんには残ってもらうことになるな。
けれどお前は、自分が善意で預かった娘が魔女だって知らなかったわけだろう?だったらこんな事態になったのはお前のせいじゃない。その薄汚れた魔女のせいだ。
どうした?また口を閉ざして。
さっきから言っているが、お前もこれ以上痛いことや辛いことは懲り懲りだろう?だったら、一言あの女は魔女でしたって、自分は知りませんでしたって吐露するだけでいいんだ。認めてしまえよ。
お前のことは、悪いようにはしないからさ。
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