【短編小説】夜空に問う
夜空を見る時、その日の気分やどう1日を過ごしたかによって、見え方が変わると思っている。
大切な人と喧嘩した日。
誰かに親切に出来た日。
悲しい別れがあった日。
何かある度に、僕は夜空をぼんやりと眺める。
叱責してくれている気がして。
共に喜んでくれている気がして。
慰めてくれている気がして。
ただ、こういう時は夜空が何を投げかけてくれているのか分からない。
あいつの血液で赤黒く染まった両手を見ても、いつものように夜空を見ても、罪の意識も昂る感情も湧き上がってこない。
「ねぇ…夜空」
誰に言うでもなく、1人呟く。
「これでキミは、僕と幸せになれるよね?」
顔を上げると、壁一面に貼られ、それぞれ違うアングル違う場で撮られた同じ少女の写真が視界に入った。
これでいい。これで僕達を邪魔するものは何もなくなったんだ。
そうだろう?
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