#読書
ライトミステリの顔をしたメッセージの強いミステリ『なんで死体がスタジオに!?』
本の賞味期限、みたいな観点があるのだけど、この本は今放送中の番組名やら人の名前やらを連呼しているので、時間が経っちゃったらどうなるんだろう…と勝手に心配しちゃいました。
だからこそ、急いで読んだ方が面白い小説だとも言えます。
”すべらない話”を彷彿させるような、生放送特番の「ゴシップ人狼」。出演者は順番に芸能界のゴシップを暴露していくのですが、中に嘘を言っている人狼が紛れ込んでいる、というゲーム
オポチュニティを想って泣きました『宙わたる教室』
本屋大賞発表時には「いいなー、みんなこれからあの感動を得られるんだ」みたいな気持ちになるんです。が、今年はそういう気持ちにもならないくらいにこの『宙わたる教室』に感動して過ごしています。
来年の本屋大賞はこれになってほしい!って思ってるくらいなんですが、残念ながら発売日が昨年の10月だったので、今回の対象作品。無念。
ちなみに順位は14位です。
もともと伊予原さんは好きな作家ですし、この本につ
同時代を生きてきた駒子に会えた『1(ONE)』
入社して間もない頃、とにかく出版社の名前や本の名前を覚えなきゃいけない、と、やっていたのが棚を凝視するくらい見ること。そもそも、本の仕事をしよう、と決めたきっかけの1冊が北村薫の『スキップ』だったので、文芸書の「き」のあたりには立ち止まる時間が長くなるんですよ。北村薫の新作出てないかなー…なんて。当時は日常の謎流行の時代だったので、その近所にあった「かのうともこ」とか「きたもりこう」とかを順々に読
もっとみる『スピノザの診察室』で野心に追い越されながらも、矜持に生きる人たちのことを考えています
主人公はある理由から、大学病院から離脱し町の病院で勤める道を選んだ雄町先生(マチ先生)。この先生、元々は凄腕の医者で内視鏡界隈ではめちゃくちゃ難しい手術を成功させてきた将来嘱望株だったのです。なので、大学准教授という立場にいる花垣は「大学に帰ってこい」というメッセージを送り続けています。
そんな花垣が放った「野心はなくても矜持はある。そうだろ?」という言葉にドキッとさせられました。そこにしっかり
このワクワク感たるや『成瀬は信じた道をいく』
出版業界では「ベストセラー作家だからって部数が出なくなっている」「著者繋がりの読書が減っている」なんてな話がよく聞かれます。確かに、有名著者だからといって売れる時代ではなくなったのかもしれません。でもね「なんと!あの本の続編が出るだと!?買わねば」ということはあるんですよ。私も成瀬の続編が出ると聞いたときにソッコーで手帳に発売日をメモしました。
このワクワク感たるや。
このシリーズのスゴさは「と
世の鳥好きに全力で薦めたい『水車小屋のネネ』
発売当初から「あれいいよ」「読んだ方がいい」などの絶賛コメントを目にし、直接オススメされてもいたのですが、ようやく読めました。そして読んだ瞬間から誰かに薦めたくてたまらなくなっています。
動物と人間の関わりを描いた作品はいくつもありますが、ここまで心揺さぶられたのは久しぶりです。
この『水車小屋のネネ』は、水車小屋に住むヨウムの”ネネ”とそれを取り巻く人たちの40年間を描いたお話です。この物語が成
息を止めながら読んだ『歌われなかった海賊へ』
人がなぜ悪意に支配されてしまうのか、戦争はなぜなくならないのか…など巨悪の発生する理由を問う本が多くなってきたように思う。
たしかに、ウクライナ侵攻しかり、パレスチナで起きていることしかり、人がどうして殺し合わなければならないのか、その答え探しをせずにはいられない。
一方で、そういった巨悪に立ち向かってきた人がいることも事実だ。歴史に名を残した有名人もいれば、この本に出てくるような市井の人たちの抵
日常と背中合わせにある悪を感じた『悪逆』
最近まで黒川さんの本を読んできていないので、疫病神シリーズなどの人気シリーズは未読のままです。前回読んだのが『連鎖』、このときに関西弁の刑事コンビの空気感がいいなーと印象に残っていたので新作『悪逆』にチャレンジしてみました。
前回の刑事たちと登場人物を替える必要があったのかしら。決して腐すわけではなく、しょうもない日常のあれこれを言いあい、とはいえ、必要以上に自分をすり減らすわけでもない刑事の姿
『誰が勇者を殺したか』
いつのまにか、私のなかにはラノベレーベルと単行本ファンタジーの間に何かの境界線があるような刷り込みが出来てしまってた。
もっとも、あの『十二国記』だって、元は講談社X文庫ホワイトハートで刊行されたわけで、ラノベレーベルからだって何かの境界を飛び越えて読み継がれる作品はいっぱい出てるんですよね。
とはいえ、ラノベと聞くと、どうしても初速型で人気絵師や人気作家のものがぱぱっと売れて沈静化して…という印
大好きな酒見賢一さんが亡くなってしまった
酒見賢一さんが亡くなってしまった。
色々な本を読んできたし、好きな作家もいっぱいいるけれど本の仕事に就くきっかけになった一つが『後宮小説』との出会いだったのです。
初めて読んだのは高校生のとき。子どもの頃からそれなりに本は読んできたけれど、よくありがちな「読書の谷間」のような時期に入って、積極的な読書から遠ざかっていた頃の話でした。
学校から言われた課題ばかりを読んでも、タメにはなるかもしれない
『素敵な圧迫』が癖になる
本屋大賞の実行委員をやっていると「本屋大賞って、女性に受ける本しか取れないんでしょ?」と聞かれる事があります。書店の店員=女性 というイメージがその一因だと思うのですが、今回20回記念フェアで小冊子を作り過去のノミネート作を振り返ったところ、ある人に「こんなにゴツゴツした本も選んでたんですね」と驚かれました。
*その小冊子、もう現物は入手困難ですがこちらのHPからダウンロード出来ますのでぜひ見てみ
命を繋がりを強く感じた『リラの花咲くけものみち』
北の大地で獣医師を目指す、といえば古くは『動物のお医者さん』
でもって最近は『銀の匙』。とそれぞれに夢中になって読みました。あ、銀の匙は酪農の話だからちょっと違うか…
藤岡陽子さんご自身が看護婦なので、彼女の小説には様々な形での命との向き合いが出てきます。今回は、口をきくことが出来ない動物たちの命を扱った小説だったということで、動物好きにはたまらない小説になっていました。もうね、誕生も、死も、
暑さが増すホラー『禍』。小田雅久仁はやっぱすごかった
これまた事前評判のよい『禍』
「評判がよい」という事以外の情報を入れずに読んだので、読み始めて気持ち悪…となりました。あんまりホラーだと謳っていないけど、まごうことなきホラー。
乱歩の人間椅子読んだあとしばらく、ふかふかのソファーに座りたくなくなるじゃないですか。あんな感じの読後感が残ります。
しかも、人の身体がモチーフになった話ばかりなので、その気持ち悪さもより身近というかなんというか。
「楽