(掌編小説)庭で子猫がミャーと鳴く
一人暮らしの奈津子さん(82歳)お庭に子猫がやってきた。
奈津子さんの朝は遅い。古い一軒家はまだ秋口だというのに寒々としていて、なかなか布団から出る気にならないのだ。50代の息子は結婚して遠くに住んでいて、正月に帰ってくることもほとんどない。にぎやかだった夫も10年前に亡くなってしまって、家の中はいつもいつもシーンとしている。奈津子さんは7時半頃にむくむくと起き出すと、1階に下りて仏壇の前に座る。仏さんは夫一人だけだ。お線香の匂いと、おりんの澄んだ音色で朝が始まる。
「今