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日常奇譚(ショートストーリー集)

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日常に存在する奇妙な謎や出来事などを題材にしたショートストーリー集。
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#短編小説

[掌篇集]日常奇譚 ―― 目次 ――

前書き 第1話 幽虫   晴れた日のほうがよく見えるようです。 第2話 いつか勝利する日  こ…

[掌篇集]日常奇譚 第50話 裏返し

 何かに憤ったことが一度もないのではないかと思うような女性が知り合いにいて、そのことにつ…

[掌篇集]日常奇譚 第49話 コックリ

「ねぇ、コックリさんで決めない?」と唐突に持ちかけてきたのだという。祥子という若い女性だ…

[掌篇集]日常奇譚 第48話 ふたつ名

 先日、さわやかな声で嘘をつく(としか思えない)人の話を書いたのだが、実はある意味同種の…

[掌篇集]日常奇譚 第47話 ブックハザード

 食料の調達に出た帰り道で奴らに遭遇してしまった。  鉤状に曲げた指に危うくつかまれそう…

[掌篇集]日常奇譚 第46話 さわやかな声

 ぼくは何度か大きな転職――職場を変わるだけではなく職業自体をがらりと変える――というこ…

[掌篇集]日常奇譚 第45話 コール

 純太とは一種奇妙な友人関係であったと思う。まず言えば、ぼくらは小学生時代からの親友だった。しかし高校の卒業後にぼくが関東に出て、それでぼくらはほとんど会うことがなくなった。最初の頃はそれでも半年に一度くらいは帰郷していてそのたびに純太にも会っていたのだが、忙しさもあって徐々に帰郷しなくなり、それでぼくたちは約束した。一箇月に一度電話で近況を話し合おう、と。  こうした約束はしばしば「義務」と化し、負担になってきたりもする。だがぼくらに限ってはそういうことにはならなかった。

[掌篇集]日常奇譚 第44話 たまたま、ねこ

 今のアパートに引っ越したときの話をしよう。  その当時は一時的に遠方に住んでいて、そし…

[掌篇集]日常奇譚 第43話 いつなんどきでも

 夕刻、仕事帰りの電車の中だった。  この時間、シートに座れることは稀なのだが、この日は…

[掌篇集]日常奇譚 第42話 ついていった

 猫に対するよくある誤解として、クールであるとか、自分中心で人にそれほどはなつかない、と…

[掌篇集]日常奇譚 第41話 纏顔

 せっかくのことなら顔は小さいほうがいい、というのは、ひょっとしたらどの時代や国でもある…

[掌篇集]日常奇譚 第40話 安堵の過程

 ある日、コーヒーを飲もうとして、ドリッパーがないことに気づいた。  洗い場のあたりを目…

[掌篇集]日常奇譚 第39話 商品が先か、清算が先か?

 ごく小さなことであるにもかかわらず棘のように神経にさわる出来事がたまにある。  そうし…

[掌篇集]日常奇譚 第38話 黒子(ホクロ)

 ホクロを数えるとホクロの数が増えてしまう、という話を聞いたことがありますか? 「数えると増える」などということはもちろんつまらない嘘なのでしょうけれども、ホクロが増えるものだというのは実は本当の話です。大きくもなります。ホクロというものはどんどん成長するものなのです。  そのことについてひとつの興味深いお話をいたしましょう。  昔、ある知り合いの女性からじかに聴いた話です。  どういうわけなのか彼女は顔にホクロがたくさんありました。そばかすなら愛敬にもなると思いますし、ホ