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『20年後のゴーストワールド』

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2023年11月映画『ゴーストワールド』を観た。 私は歳取ってもフラフラして、毒吐いて、身勝手に傷ついて……今も消えたい気持ちで主人公イーニドとまるで変わらないままだった。 「イ…
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#ファンタジー

20年後のゴーストワールド

20年後のゴーストワールド

はじめに

2023年11月映画『ゴーストワールド』のリバイバル上映を観た。2001年公開の映画。あれから20年強経つ。私は歳取ってもフラフラして、毒吐いて、身勝手に傷ついて…今も消えたい気持ちで主人公イーニドとまるで変わらないままだった。
「イーニド、怖いこと教えてあげる。耳塞がないで聞いて!このまま20年くらい経ってもずっと変わらないで、うだつのあがらない人生を送ってる私みたいなのもいるんだよ

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『20年後のゴーストワールド』第2章(2)愛という憎悪

『20年後のゴーストワールド』第2章(2)愛という憎悪

人生どん底の私の元へ、来るはずのない待ち望んだバスが何故か突然あっけなくやってきた。私は今、バスの中で"レンタルなんもしない人"的にダメ人間と話をするというバイトをしているイーニドと話している。私は選ばれしダメ人間としてバスに乗ることとなったようだ。

イーニドが言う。
「私が沢山シーモアの絵を描いたように、あなたは重鎮(おじさん)を物語の中の人として描いたのね」

バスの中の空間は自動翻訳装置で

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『20年後のゴーストワールド』第2章(3)消える記憶

『20年後のゴーストワールド』第2章(3)消える記憶

突然やってきた来るはずのないバスの中で、とめどなくおしゃべりしているイーニドと私であるが、一応バスに乗車してすぐの段階で私はバスの利用規約にサインをしていた。

そこには、"乗車賃は無料です"と記載があって胸を撫で下ろした。バス型の新手のボッタクリガールズバーだったらどうしようかと一瞬思ったのだった。バスの運賃箱に入らないくらいのお金を請求されたら……という不安は拭われた。本物の"レンタルなんもし

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『20年後のゴーストワールド』第2章(4)空の色すらも変わる

『20年後のゴーストワールド』第2章(4)空の色すらも変わる

私の母のこと、私の本当の悲しみに最初に気がついたのは実は浅井だった。私と重鎮ことおじさんが繋がるきっかけになったバンドマンだ。
(第1章・私のシーモア(2)私を構成した42枚参照)

私は母のことで辛くてircleの『忘レビ』という曲をSNSに投稿した。母について具体的なことは何も書かなかったが、その悲しみに気がついてメッセージをくれたのが浅井だった。それはおじさんとやり取りをする前の話である。

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『20年後のゴーストワールド』第2章(6)さよなら、ゴーストワールド(最終回)

『20年後のゴーストワールド』第2章(6)さよなら、ゴーストワールド(最終回)

イーニドとひとしきり話をしたり、音楽を聴いたりしたけど、まだ話は尽きない。イーニドの目線が私のトートバッグを捉えた。バッグからポータルのカセットプレイヤーが少し見えていた。

「ねぇ、あなたカセットで何聴いているの?」

「あっ、これ?今聴いてるカセットは銀杏BOYZ。日本のパンクバンドよ。私はこのバンドのこのカセットがきっかけで、またカセットにはまったの。90年代の終わりから一時期カセットは古く

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