見出し画像

目を覚ましたら、世界が変わっていた件

1963年11月22日金曜、ブラジル サントスの自宅。あの日、あの時間、私は昼寝から目を覚ましたばかりだった。

それが色なのか、ニオイなのか、わからなかったけれど、自分が全く違う空気に目を覚ましたことに気がついた。眠りにつく前と目覚めた後とで、世界は変わっていた。

何が起こったのかと大人達に聞いたら、ケネディという大統領が暗殺された、という答だった。あんなに不安そうな大人達を見たことはなかった。暗殺という言葉を聞いたのも、はじめてだった。

この地面の続きで何か大変なことが起こったこと。それが原因で、今、ココの空気が揺れていること。眠っている間に世界は変わってしまって、もう元どおりにはならないこと。

それだけは7歳の子供にもわかった。

アメリカという国がどこにあるのかも、ケネディという人がどんな人なのかもわかっていないのに、テレビで事件の映像を見たわけでもないのに、(当時、家にはテレビは無く、ニュースを聞いたのはラジオからで、それもポルトガル語だったから、当時の私が事件の震度を理解できたのは、大人達の反応を通してだったと思う)私にとってそれは忘れることのできないできごとになった。

眠りにつく前と目を覚ました後の世界が変わってしまって、それが二度と元に戻らないこと、そんなことがあり得るということに心底オドロイタ。

あの時感じた「空気のゆれ」。アレはいったい何だったのだろう。ねぼけまなこの子どもの肌に刻まれるほどの、あの震度は。現場にいたわけでも、同時中継を見たわけでも無いのに。

あれから60年+。地球の皮は今、もっと薄くなってきている。地球の裏側で起こったことも、高精細の映像と音声で瞬時に伝わってくる。AIだ、デジタルだ、GPSだと、先進テクノロジーで覆い尽くされている地球まんじゅうの皮はますます薄くヒリヒリしてくる一方だ。

肉体に増設されたスマホで情報を24時間受信している私たち。(良くも悪くも)テクノロジーは「人間感情のエネルギー」を増幅させているとしか思えない。人間の皮もますます薄くなってきているのでは。

「眠りから覚めた時、違う世界に目を覚ます」ことがありませんように。地球の傷が日に日に広がっていく様子を見ながら、そう祈らずにはいられない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?