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【自作詩集】 霧の森〜記憶を彷徨いながら〜

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オーストラリアに来てからの風景や心情を綴った詩 心から消し去ることのできない想いなどの書き殴りの詩
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記事一覧

【詩】漂う

【詩】漂う

夢を越え
宇宙を越え
時空を越え

あてもなく漂う

どこに行きたいのか
わからなくて

空気や
水や
エネルギーのように

引き寄せられるままに
彷徨い続ける

「何処に行きたい?」

僅かな記憶の欠片から
悲しい音色だけが流れる

安らかに留まれる場所が
見つかるまで…

【詩】祈り

【詩】祈り

全ての経験は
祈りに代わる

楽しかった経験
嬉しかった経験

『素晴らしい経験をありがとう』と
笑顔で魂に語りかける

美しい記憶は
内なる世界を
愛に満ちた
優しい場所にしてゆく

悲しかった経験
怖かった経験

『大丈夫安心して』と
手をひき
愛に満ちた
内なる世界に
連れていく

私とわたしが出逢う場所

何人も何事も
評価する事なく
素直な心情を
受け入れ抱きしめる

魂に微かな光が宿り

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【詩】願望

【詩】願望

大脳辺縁系が正しく機能していません
扁桃体が急激な負の感情を放出したため
海馬にダメージを齎したようです

取り出せるだけのデータをバックアップして
大脳辺縁系を削除できますか

それとも

トラウマになっている過去の悍ましい記憶を
大脳皮質から取り出して
書き換えることは可能ですか

どちらでも構いません
やって頂けたらと
半分AIになっても良いんです
感情はもう必要ありませんから

AIが人間

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【詩】霧雨の降る街

【詩】霧雨の降る街

鉄の扉を両手で開くと
霧雨に包まれた街が
視界に広がっていた

小高い丘の上に建つこの家からは
街全体を見下ろすことができる

あの頃は
雨に濡れたグレーの街が
湿り気を含んだ黴臭さが
私を陰鬱の果てへと押しやった

変わらぬ信念と祈りを大空に掲げ
見知らぬ敵から身を護り
傷つきながら森を彷徨い戦い続けた

希望に向けて最後の光の矢を放つ

悲しみの果てに築き上げた
魂のディストピアは
燃え上がる

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【詩】自己愛

【詩】自己愛

いつもと同じように
鏡の前に立ち
指でゆっくりと
唇をなぞりながら
口紅をつける

長年愛用している
ピンク色の口紅
初めて買ったのは
いつだっただろう

あの頃の私と今の私
ふふっと笑みが溢れた
目尻と口元にできる笑い皺
祖母譲りの頬骨

悪戯に知識と知恵を
詰め込んだけど
瞳の奥に棲む私は
あの頃と変わらない

今にも壊れそうな
脆いガラス細工
自信がなくて不安で
いつも「これで良いのかな?」

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【詩】ボトルの破裂

【詩】ボトルの破裂

先日夢と現実の狭間でウトウトしていた時に見た
不思議な光景を書いてみました。

バン!

空中で
グラスボトルが
音を立てて
破裂した

破片の一つ一つが
繊細で柔らかな
虹色を放ちながら
放射状に広がっていく

破片を見ていると
重なる懐かしい感情が
あちこちの毛穴から
込み上げてくる

その様は
スローモーションで
やがて破片が緩やかに
形を変えながら
空間に漂うモレキュラーと
溶け合っていく

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【詩】傷跡

【詩】傷跡

眠れぬ夜
微かな月の光が
忘れていた傷跡を
薄らと照らした

そっと指で触れてみる
まだ痛い

この傷跡が
完全に消える時が
くるのだろうか

こぼれ落ちた涙で
傷跡を撫でた

すると突然
月明かりの方から
柔らかな声がした

「一人で我慢して苦しまないで
いつでもあなたを見守っているから
痛みを優しく抱きしめて
星となって輝くまで」

あ…
月の妖精

ありがとう😌✨

【詩】暗闇を叩いて

【詩】暗闇を叩いて

広がる暗闇を
ハンマーで叩く

崩れ落ちるまで
叩いて叩いて

あちこちの裂け目から
光の筋が差し込んで

暗闇は星屑のように
流れて落ちた

粉々になった暗闇を
そっと手に取り
舐めてみる

砂糖のように
甘かった

【詩】生きる

【詩】生きる

何かを食す

美味しくても
不味くても

食べたものは

お腹の中で
消化され

血肉となり
骨となり

体を温め
生きる力となる

余分な物は
形を変えて
排出される

何かを経験する

楽しくても
辛くても

経験した事は

脳のどこかで
消化され

知恵となり
優しさとなり

心を養い
愛となる

余分な感情は
夢となって
排出される

【詩】自然の摂理+(プラス)

【詩】自然の摂理+(プラス)

真夜中に
人が吐いた
二酸化炭素を
観葉植物が吸う

真夜中に
観葉植物が吐いた
酸素を
人が吸う

誰もが知ってる
自然の摂理

でも思う

真夜中に
人は
心の痛みを混ぜて
二酸化炭素を吐く

真夜中に
観葉植物は
癒し成分を混ぜて
酸素を吐く

人が穏やかに
眠れるように

【詩】気配

【詩】気配

暗闇に聞こえる
シルバーフィッシュの呻き声
銀色に光る魚の尾を震わせ
床に落ちた人の垢や髪を貪る

暗闇に聞こえる
ゴミ虫の衣擦れの音
人の心の奥底に棲む
汚いゴミを漁り
衣をつむぐ

シルバーフィッシュは溢れ
ゴミ虫の衣は膨れ上がる

調理した肉も
その生臭さは完全に取れず
鼻先に血生臭さが残り
屠殺された時の叫び声が
聞こえてくる

自由にならない手足
喉に詰まった声
誰か…誰か…

次の生贄

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【写真とエッセイと詩】トロウィープ

【写真とエッセイと詩】トロウィープ

今回のロードトリップの山場とも言えるグランドキャニオンのトロウィープ。正直この発音で正しいのか?(笑)
予定では、ここでキャンプをして翌朝の日の出の写真も撮影することになっていたのだが、病み上がりの私にはキャンプはキツイということで、急遽日帰りに変更した。ここは、グランドキャニオンの一角にある秘境の地とも言える場所で、訪れる人は数少ない。その理由の一つは、辿り着くまでの道のりが極めて困難で、まず四

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【エッセイと詩と写真】サンスターを追え!

【エッセイと詩と写真】サンスターを追え!

欧米でよく売れる写真の一つがサンスター。
太陽光を星が輝くように撮影した写真のことである。
サンスターは、希望、夢が叶う、縁起が良いなど色々言われているらしい。
私は、太陽の光が眩しくて、撮りたいと思う被写体が見つからないとサンスターを撮り始める。
もちろん、最も美しく、縁起が良いサンスターは日の出直後。
山の端であったり、木や岩の陰から輝く様を切り取る。
カメラ側も、サンスターを撮るための設定を

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【詩】通り過ぎた香気

【詩】通り過ぎた香気

有名ブランド店が立ち並ぶ大通り
ウインドウを横目に見ながら
少しだけ時間を気にして歩いていた
今日は面接の日だ
昨日まで何度も練習したから大丈夫
それでもまた
頭の中で繰り返し繰り返し
シミュレーションしていた

完璧...絶対に上手くいく

時々すれ違う人のことなど気にかけていられない
よくありがちなこの街のグレーの空だが
溢れる街のエナジーが
街全体を灰色に染めることはない

突然頭の中に艶か

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