マガジンのカバー画像

【墨絵本】線のたび

13
埋もれていたスケッチブックを発掘したことから、思いつきで始まった物語。 墨絵本。
運営しているクリエイター

#墨絵本

線のたび(12)

線のたび(12)

美しい碧色に囲まれた何処かから来た
天の子との出逢い。
自分もその憧れの場所へ辿り着いた
宙の子。
ただ、居心地が良かった其処は、何故かずっと居てはいけないと感じた。
そして、また再び、自分が来た"宇宙"へと、帰ることに。

「なんだか、あっという間だった。
もっと長く居たかった氣もしたけど、ずっと居たくないなぁ…とも感じたしなぁ。何故だろう?」

宙の子は、帰りながら、高く昇りながら、
ぼんやり

もっとみる
線のたび(7)

線のたび(7)

宙の子は、今から向かおうとしている、
遥か下に観える碧色らしき何処かから、真っ直ぐに昇ってくるモノに驚いた。

な、なんだろう…。

向かってくるモノは、深く濃い暗いような、
重たい、真っ黒な塊のようにみえた。
宙の子は、動きを止めて、じっと、それが
勢いよく昇ってくるのをじっと眺めていた。

それが近づいてくると、真っ黒ではなくて、
なにか、たくさんの色が織り混ざっていることがわかった。

そし

もっとみる
線のたび(6)

線のたび(6)

落とした何かを探しに降りてきた事を
思い出した宙の子は、ぼんやりと何かを思いながら、スルスルと下へ下へと向かって伸びて行った。

仄かに、みどり色が見える場所に。
明るく見えて、なんとなく薄暗くも見えてきたあの場所に。

なんだったかなぁ、落としたモノ…。
さっき出会った子とおしゃべりしてたら、すっかり忘れちゃったなぁ…。

ま、そのうち思い出すかもしれないから、
いいかな。
今は、見えてきたたあ

もっとみる
線のたび(4)

線のたび(4)

空がどんなふうか?
これから向かおうとしている
天の子は、ちょっぴり、怖かった。

宙の子は言った。
「みんな、"空"って言うけどさ、
もっともっと、ずぅ〜っと遠くて
高くて、広くてさ、"宙"って言うんだ。」

「あら! "空" じゃないのね?
…で、そこは、どんな色なのかしら。」

「そうだなぁ、何色って言うのかな。
赤かな、いや、黒だったり、紫だったり、
たまにはそう、白かったりもするしね。

もっとみる
線のたび(2)

線のたび(2)

宙の子は言いました。

「こんにちは。はじめまして。」

天の子は言いました。「はじめまして。こんにちは。
 ねぇ、あなたはどこに行くの?」

「僕かい?
  この雲の下にさ、碧色に包まれた
  素敵な場所があるんだって。
  とってもキレイな、みどりいろの。 
  君、知ってるかい?」

「うん。
  知ってる。
  私、そこから来たの…。」

「へぇ! そうなんだ。
  どんなところかなぁって

もっとみる