瀕死の科学者

科学を哲学してます。 2020年の末にバッド・キアリ症候群という肝臓の難病と診断され…

瀕死の科学者

科学を哲学してます。 2020年の末にバッド・キアリ症候群という肝臓の難病と診断され闘病中。 趣味は温泉♨️。

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  • 臓器移植について

    臓器移植に関する記事です。

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    難病に関する記録・エッセイのまとめ

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    自分の執筆した科学記事です。読者は高校生くらいをイメージして書いています。

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臓器提供の欄が未記入だとどうなる?

 臓器提供に関して○をつけるあれ。  未記入で空欄のままだとどうなるんだろうか? 未記入だとどうなるの? 結論から言うと、提供される確率は低いだろう。  加えて言うと、「はい(提供します)」に◯をつけても、提供されるとは限らない。 なぜ低いと言えるの? それはオプトイン/オプトアウトという制度が関わっている。  説明の前に、そもそも臓器提供って何? という人は以下の記事を読んでほしい。  この制度のため、日本では臓器提供が行われるまでにクリアしなければならない条件

    • 3分でわかる臓器移植

      「臓器移植? よく知らんから3分で教えて」 わかりました頑張ります。  臓器移植については日本移植ネットワーク(JOT: Japan Organ Transplant Network)のHPが詳しくてわかりやすい。ただけっこう分量が多いので、ここではかいつまんだ説明をしたい。 臓器移植とは 他人の健康な臓器を移植する治療法のことだ。  臓器を提供する人を「ドナー」、臓器をもらう人を「レシピエント」と呼ぶ。  臓器移植は、生きている人が自分の臓器の一部を提供する「生体臓器

      • 突然難病と診断されて人生初入院してきた

        2020年の末にバッド・キアリ症候群という肝臓の難病と診断され、突然2ヶ月弱の入院生活を体験した。 この入院は人生初の長期入院で、いろいろな経験をした。 特に、たくさんの辱めを受けた。 そこでこのnoteでネタにして供養したいと思う。 また、入院生活の様子がわかるように書いたので、これから入院予定の人の参考になれば嬉しい。 入院は怖くて嫌なイメージがあると思うが、この記事を読んでイメージをしていけばきっと楽しめると思う。 1周間の検査入院2020年の11月末頃に突然お

        • 肝臓難病になって死にかけたので入院してみた

          僕は現在、バッド・キアリ症候群という、肝臓の血管が詰まって組織が壊れていく難病を患っている。 治療法は今のところなく、余命もどれくらいになるかわからない。 これまでにも何度か入院をしたが、最近また治療のため入院していた。 僕は痛いのが嫌いなので入院は毎回ヒーヒー言ってるのだが、今回の入院でもいろいろあった。 今回もいろいろ辱めを受けたので、記事にすることで供養する。 電撃の尿道カテーテル2021年10月末、肝臓の血管の治療をするため、板橋の帝京大学医学部附属病院にやって

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          コスト0円で車中泊の快適さ爆増させてみた

          僕はルートを決めずに山深い秘境をドライブするのが好きだ。 そんな予定のないドライブ旅行では、宿はとらずに車中泊になることが多い。 車中泊の場合、車内の快適性が寝心地を左右する。 寒さだったり、蚊だったり、快適性を決める要素はたくさんあるが、一番重要なのは寝床の角度だろう。 車中泊について調べると、「フルフラットになる車種」とか「車をフルフラットにするDIY」とか書かれたページがヒットする。 全人類は平らな場所で寝たいのだ。 はっきり言おう。 フルフラット? そんな

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          豊富な知識と自由な発想を両立させる

          僕は大学院を卒業した後、とある企業の研究所に就職した。 仕事内容は装置を組んで実験をしたり、論文や特許を書いたりとかだ。日々の仕事はかなり地味な作業の繰り返しだ。しかもその作業が成果に繋がるかもわからない。 どうして僕は研究者になったのか?  多くの研究者に仕事を選んだ理由を尋ねると、「宇宙が大好き」とか「生命の神秘を解き明かしたい」など、その分野に強い興味があったという答えが返ってくるケースが多いと思う。 しかし、僕はそうじゃない。 僕が研究職に就いた理由は、自分

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          突き抜けた人になる秘訣は、「できる」でなく「できない」と思うことではないか

          「俺にはSASUKEしかないんですよ」 これは、ご存知ミスターSASUKEこと山田勝己の名言である(最近YouTubeも始めたらしい)。第10回大会の3rdステージで惜しくも落水してしまい、「今後どうされますか?」とインタビューされて悔し涙を流しながら答えた言葉だ。  先日のSASUKE2021でも、期待を裏切らず開始4秒で落水したのは記憶に新しい。  さて、なぜ山田勝己の名言を引用したのか。  それは、「俺にはSASUKEしかないんですよ」には、人生の上手く動かす秘訣があ

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          「ヒトゴト目線」で"普通"の人生を楽しくする

           僕は現在、肝臓がどんどん壊れていく難病を患っている。  治療のためにこれまで何度か入院生活を送っていて、つい2週間前も病院にいた。入院では、自分と似た病状の人が亡くなって恐怖を感じたり、陰部に管を挿し込まれて悶絶したりと、毎回そこそこ辛い目に遭う。しかし振り返ってみると、どれも辛さはありつつも楽しい思い出になっている。  思い返すと、これまで体験した出来事はどれも「おもしろ体験」の思い出の箱に入っている。僕はたいていの出来事は楽しく受け止められるんじゃないかと思う。  た

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          「バッド・キアリ症候群」闘病記Vol.2〜生体肝移植の検討からバルーン拡張手術まで

           この記事は筆者のバッド・キアリ症候群(BCS: Budd-Chiari Syndrome)の治療の軌跡である。ここでは、僕が診療過程で得た知見を全てシェアしていく。この記事がBCSと診断された人の動き方のガイドラインとなることを願っている。なお、本記事はVol.2であり、Vol.1の記事は以下。 生体肝移植の相談&準備 慶應義塾大学病院と京都大学医学部附属病院に、生体肝移植の相談のため外来訪問した。2ヶ所訪問したのは、ドナー候補が岐阜在住の母親と東京在住の弟の2人いたため

          「バッド・キアリ症候群」闘病記Vol.2〜生体肝移植の検討からバルーン拡張手術まで

          脳死と植物状態の違い

           日本では、移植医療(特に死体からの臓器移植)が海外と比べて非常に遅れている。その一因として、脳死の理解が進んでいないことが挙げられる。筆者も脳神経や救急医療の専門家ではない(物理学専攻)ため、正直理解できていない。  そこで、この記事では、「脳死というのはいったいどのような状態を指すのか?」「その状態は死といえるのか?」について書いた。非専門家が1から疑問点を調べて解消していって書いたからこそ、素人目線の疑問に答える記事になっていると思う。なお、この記事については、医学の専

          脳死と植物状態の違い

          臓器提供したら骨と皮だけにされる?

           臓器提供について調べていると、「臓器提供して全ての臓器が提供されたら身体って空っぽになるのかな……?」とか「眼球だけは抵抗がある。顔は綺麗なままがいい」など、提供後の見た目に関する懸念の声があることに気がついた。  そこでこの記事は、臓器提供後の遺体の取り扱いや見た目の変化について調べて簡単にまとめた。  結論だけ簡単に書いておくと、骨と皮だけになることはなさそう、という感じだ。

          臓器提供したら骨と皮だけにされる?

          生物の死とは何か? 人類の死の概念の発展と脳死

           僕は、数年後に肝移植を希望している難病患者だ。そのため、当事者として、臓器移植について、自分なりに調べたり考えたりしたことをまとめている。  この記事は、そのうちの「脳死」について書いたシリーズのVol.1である。この記事では、「生物の死とは何なのか?」という根本的な疑問について書いた。ただし、筆者は生物学の専門家ではないため(物理学専攻)、概念論的な話をここではしたい(医学の専門家のレビューはもらっているので、基本的な知識の間違いはないはずだ)。  臓器提供に関するイン

          生物の死とは何か? 人類の死の概念の発展と脳死

          「臓器提供の意思表示って記入めんどいよね」と放置してたら死にかけた話

          保険証とか免許証の裏、書いてますか? 臓器提供に関して○をつけるあれ。  書いてますか?  筆者は免許証をもらった20歳の時に初めて読んだ。 「死後」とか「臓器」とか、ドキっとする言葉が並んでいて、車を運転することの重みを改めて突きつけられて身が引き締まったのと、「これからは自分のことは自分で決めるのか」という、大人の階段登る的な感覚を味わった記憶がある。 なぜ臓器提供の話をするのか それは、筆者が臓器移植の当事者になったからだ。病気になって死にかけて臓器をもらう側の人間

          「臓器提供の意思表示って記入めんどいよね」と放置してたら死にかけた話

          臓器提供の意思表示しようとしたら「脳死」が難しすぎて脳が溶けた

           僕は、数年後に肝移植を希望している難病患者だ。移植以外の根本的な治療法は今のところない。  しかし、日本の移植医療は海外と比べて非常に遅れていて、臓器提供の数がとても少ない。移植を希望していても実際に臓器移植を受けられる確率は、ガリガリ君の当たりくらい低い(3%)。このままでは僕の命がやばいので、少しでも自分にできることはないかといろいろ調べて発信しているのがこの記事である。  臓器提供シリーズのイントロダクション的な記事はコチラ。  臓器提供がガリガリ君レベルになって

          臓器提供の意思表示しようとしたら「脳死」が難しすぎて脳が溶けた

          保険証と免許証の裏の臓器提供の欄、わかりにくくて書けなくない?

          保険証とか免許証の裏、書いてますか? 臓器提供に関して○をつけるあれ。  記入してますか?  現在筆者は32歳で肝臓の難病を患っている。肝臓移植以外の根本的治療法は今のところなく、2, 3年後くらいに移植手術になるだろうと言われている。  しかし、日本では移植を希望していても実際に臓器移植を受けられる確率は、ガリガリ君の当たりくらい低い(3%)らしい。ガリガリ君なんて1回も当たったことないよ……。  調べてみると、日本の移植医療は海外と比べて遅れていて、臓器提供の数がとても

          保険証と免許証の裏の臓器提供の欄、わかりにくくて書けなくない?

          臓器移植について当事者が必死に調べてみた

           僕は現在、肝臓の難病を患っていて、助かるには肝臓移植を受ける必要がある。そんなわけで、臓器移植に対して関心増し増しなわけだ。  この記事は、他人の肝臓が欲しくてたまらない僕がなんとかして他人から肝臓を入手するために臓器提供を受けたい当事者の目線から日本の臓器移植を巡る問題について勉強したり考えたりしたことを書いたものだ。 欧米と比べて理解が進んでいない日本 さて、そんな僕は将来、肝臓移植を受けられるのだろうか? 日本の臓器移植の現状を見てみよう。  2019年のデータで

          臓器移植について当事者が必死に調べてみた