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肝臓難病になって死にかけたので入院してみた

僕は現在、バッド・キアリ症候群という、肝臓の血管が詰まって組織が壊れていく難病を患っている。
治療法は今のところなく、余命もどれくらいになるかわからない。

これまでにも何度か入院をしたが、最近また治療のため入院していた。

僕は痛いのが嫌いなので入院は毎回ヒーヒー言ってるのだが、今回の入院でもいろいろあった。
今回もいろいろ辱めを受けたので、記事にすることで供養する。

電撃の尿道カテーテル

2021年10月末、肝臓の血管の治療をするため、板橋の帝京大学医学部附属病院にやってきた。

今回の手術はIVRといって足の付け根と首の血管からワイヤーを入れて血管を治療するものだ。
ワイヤーを肝臓の血管まで導いて病気の原因になっている部分を内側からゴネゴネして治すらしい。

難病になってから入院にもすっかり慣れて、ホテルにチェックインするような感覚でできる。
さくっと手続きを済ませて病室に移動し、荷物をまとめて優雅にベッドで読書を始めた。

今回は看護婦さんに心配してかまってもらえるように、持っていく本の表紙を工夫した。

死と向き合っているアピール


尿道カテーテル?

優雅に読書しながら待っていると、担当の先生がやってきた。
僕と同い年くらいの綺麗な女医さんで、よく通るいい声をしている。

まずいつもどおり手術の内容やスケジュールの説明を受けた。

女医「松田さーんすみませーん。明日の手術の前にーおしっこの管ー、いれさせていただきますねー」

松田「えっ おしっこ? えっ」

女医「大変ですけどーすみませんねー」

松田「えっ あっ はい(えっなにそのめっちゃ怖そうなの)」

なんなんだ。

僕はテンパると判断を先延ばしにする癖があるので、よくわからないままスルーしてしまったが、「おしっこの管」ってなんなんだ……。

「保留」が僕の本質


「おしっこのくだ……おしっこのくだ……」と不安になりながらトイレに行って戻ってくると、ベッドわきのボードに不穏な張り紙がしてあった。

尿カテーテル?

尿カテーテル?

これか? これがおしっこの管なのか!?


ググってみるとおぞましい映像が飛び込んできた。

予想していた太さの倍以上に太い管が急所に刺さっている

これはあかん。これはあかんやつや。


恐怖で震えながらスマホをいじっていると、いつの間にか時が経って執行タイムになっていた。

担当の女医さんとは別のクールな感じの美人女医さんが
「おしっこの管入れまーす」
と病室にフェードインしてきた。

そして、挨拶もする間もなく挿入作業が始まった。

恐怖で記憶が曖昧になっているが、「恥ずかしい」とか「美女にダサいとこ見せられねえわ」とか思ってる暇もなかった。

パンツを脱ぐよう指示され、「いきまーす」と言われてササッと挿入。
執行中は怖くて自分の急所を見れなかった。

痛みと衝撃で硬直する僕に目もくれず女医は立ち去った。

悶絶


このシーツの下がどうなっているか見てみたい勇気のある人は、「尿道カテーテル」で画像検索してみるといい(マネキンの画像が出てくるので安心してね)。


入れられている時の感覚は、もうこれは言葉では表現できない。

一言でいうなら「落雷」
まじで電撃くらったかと思った。

ベジータが人造人間18号にボコられている時みたいな声出た。

人造人間18号にボコられるベジータ


そういえば尿道カテーテルを入れられてる様もベジータのようだった。

尿道カテーテルを挿入されるベジータ


ちなみに、翌日になって自分のTwitterの検索履歴を見たら昨日の自分がどれだけ尿道カテーテルにビビり倒していたかが伝わってくる。
自分で笑ってしまったのでスクショしておいた。

Twitterで尿道カテーテル体験談を調べて心の準備をする32歳

32歳のおじさんを怖がらせてTwitterに張り付きにさせてしまう治療、よくない。優しくない。もうやめよう。


手術スタート

挿入の衝撃でベジータ体制のまま全く動けず、手術の時間になった。
急所に管が差し込まれているので、ストレッチャーという搬送用のベッドに乗って手術室まで運ばれる。

手術室に行きときは看護婦さんがたくさん励ましてくれるので手術が少し楽になる。


手術が始まった。

まず、脚の付け根に局所麻酔をして、血管の中にワイヤーを入れていく。
脚の付け根をいじられるとこそばゆくて気持ち悪くて毎回硬直してしまう。

前に同じ手術をした時けっこう痛かったので、今回は局所麻酔をあらかじめ多めに打ってもらったら痛みはあまり感じなかった。

三国志の軍神 関羽 は強さをアピールするため、あえて麻酔無しで部下と酒盛りをしながら矢傷の手術をしたらしいが、軍神と崇められたい人以外は見栄を張らずに麻酔をたくさん打ってもらうといい。
現代では見栄は役に立たない。


ちなみにこのときの手術の結果は、予想よりも血管が狭くなっていて、ワイヤーでつんつんしても治らなかった。
そのため、やり方を少し変えてもう一度手術をすることになった。


IVR手術の術後は8時間絶対安静で、ベッドで動けなくなる。
これが手術よりもしんどいのだ。背中が痛くて痛くて。

しかも今回は急所に管が刺さっているオプションが付いている。
これをうっかり引っかけたりぶつけたりするとマジで痛い。


尿道カテーテル引き抜き

術後8時間経過して、尿道カテーテルを外す時間がきた。

Twitterの検索結果から、カテーテルを引き抜くのは入れるときほどは痛くないという情報はすでに得ていた。

しかし、入れられるときの痛みを知ってしまったぶん恐怖は大きい。
こんな感じの引きつった表情でその時を待っていた。

尿道カテーテルの引き抜きを待つベジータ


引き抜きは看護婦さんがしてくれた。
看護婦さんは「入れるときよりは痛くないですよー」と安心する言葉をかけてくれたのでリラックスできた。

確かにいざやってみると意外と痛みはなかった。
表情でいうとこんな感じだった。

尿道カテーテルを引き抜かれるベジータ


挿入時の画像と見比べると違いがよくわかると思う。

左:挿入時のベジータ 右:引き抜き時のベジータ


胃カメラ問答

肝臓を悪くすると、食道や胃に静脈瘤という血のコブができる。
僕も静脈瘤ができていて、そいつが破裂したら大量吐血してやばい。だから定期的に内視鏡(胃カメラ)でチェックしなければいけない。

僕は1年に1回くらい胃カメラをしている。前回の検査から1年くらい経っていたので、手術入院に合わせて胃カメラをすることになった。

胃カメラは、口からカメラのついた管を差し込んで胃を見学する検査だ。
そのため検査中はオエオエとえずきまくる。

「オエッ」が次の「オエッ」を呼び、またさらにその次の「オエッ」が飛んできて……といった感じで、ストリートファイターで画面端コンボを延々くらい続けるような検査になってる。
普通に考えて人権侵害である。人間のする検査ではない。

ただし、胃カメラには鎮静剤と呼ばれる眠くなる薬を飲んで、眠っている間に行うという人権に配慮したやり方もある。
僕は当然そちらを希望した。

女医「……という感じで、明日の胃カメラは13時に呼ばれます」

僕「えーと先生、胃カメラって鎮静剤するんですよね?」

女医「すみませーん、基本は鎮静剤はしてないんですー」

僕「えっ お願いできないですか?」

女医「いやー、してないんですー。頑張ってくださーい」

僕「えっ」

女医「すみませーん」

この女医、ドSである。


結局、鎮静剤なしで検査が行われて、えずきにえずいた。
途中で、「あれ? このオエオエしている状態が普通なんじゃね?」と思えてきたくらいオエオエした。そう思ったらちょっと楽になったけど。
結局15分間えずきまくって首がムチ打ちになった。


余談だが、胃カメラの検査を終えて、医療行為ってSMプレイに最適なんじゃないかと思った。
医療行為って「身体に傷をつけずに苦痛を与える」ということに特化しているものが多いから。

そう思って調べてみると、あった。尿道カテーテル。
いやぁすごい。エロの世界は広い。


リベンジ治療

前回と少しやり方を変えたIVR治療するため、1月後の2021年12月初旬に再び帝京大学へ入院した。

尿道カテーテル問答

治療内容は前回と同じだ。
だからあれも同様にある。
そう、悪魔の尿道カテーテル。

尿道カテーテルが嫌すぎて嫌すぎて、今回はゴネることにした。

ちなみに昨年東京医大病院でIVR治療(検査)をした時は、尿瓶という尿をためる専用の瓶に看護婦さんが尿をとってくれた。

だったら尿瓶でいいはずだ。
だったら尿瓶でいいはず。
だったら尿瓶でいいに決まってる。

医師「明日尿道カテーテル入れますんで」

僕「えっと、それってなしにできませんか?」

医師「無理ですねー」

僕「えっ 尿瓶……尿瓶じゃだめなんですか!?」

医師「だめです」

僕「看護婦さんを呼んで尿瓶で……」

医師「尿道カテーテルは必須だと思ってください」

僕「……」

押し切られてしまった。


SNSでこのことをグチったら友達からメッセージがきた。

「宇宙飛行士って無重力で尿が出なくなることがあって、その場合は尿道カテーテルを自分で入れて尿を出すらしいよ」

心強い励ましの言葉だ。

なるほど。
自分は宇宙飛行士と同じなのか。

「おれ、宇宙行くんだ!」と考えれば乗り切れそうだ。

宇宙に行くための希望のトレーニングだと言い聞かせながら挿入されることにした。

おれは宇宙飛行士 おれは宇宙飛行士 おれは宇宙飛行士 おれは宇宙飛行士 おれは宇宙飛行士 おれは宇宙飛行士 おれは宇宙飛行士 おれは宇宙飛行士 おれは宇宙飛行士 おれは宇宙飛行士 おれは宇宙飛行士 おれは宇宙飛こああああああああああああああああああああああああああ!!!!



ぁぁぁぁ



 宇宙飛行士訓練くらい辛いらしいので全ての尿道カテーテル経験者はは誇っていい。

宇宙飛行士訓練を経て

結論から言うと手術は成功だった。
肝臓の病気になっている場所を、前回とは逆方向からつっついたところ上手くいった。

宇宙飛行士訓練を乗り切ったかいがあった。


術後は例によって8時間安静にした後、尿道カテーテルを引き抜く。

尿道カテーテルは、引き抜いた後も辛い。
カテーテルで尿道が少し傷つくようで、引き抜いた後1、2日は放尿時かなり痛い。
今回普通に血尿が出た

痛むので放尿には非常に気をつかう。

尿の勢いが強すぎると痛みも強くなる。
だから膀胱の緩め具合を絶妙に調整して、ゆっっっっっっっっくりと放尿する必要があるのだ。

これはもはや念能力者のレベルの技が要求される。

尿道を「硬」でガードすると尿が出ない。
しかし、「堅」ではダメージは免れない。
膀胱で「凝」を行いつつ、適切な攻防力で尿道を覆う必要がある。

傷んだ尿道を尿が通過する瞬間に、尿道の攻防力を超高速で移動させる…!! 尿道と膀胱の攻防力を何対何で振り分けるか…おそらく誤差1%以下の精度を要求される!! これほど経験とセンスが要求される技術は他にない!!

レイザー
尿道の攻防力移動に脱帽するレイザー


入院生活について

 病室はいたって普通の4人部屋。

4人部屋

今回の病室は前回入院した東京医大病院に負けず劣らず眺めがいい。窓からは富士山が見える。

朝焼けと富士山


最後は、入院生活で気になったことをつらつらと書いて終わりにしたい。

まず、帝京大学病院はなぜか食器が持参だ。ここは疑問だった。患者が下手に自分で食器管理したりすると、衛生上良くないのでは?
あと、ここはWiFiの電波が来ていない。東京医大病院も病室には電波が来ていなかったが、フロアの談話室はしっかりWiFiが来ていてPC作業するのに助かった。WiFi設置してくれよー。


この記事が、これから入院する予定の人、宇宙飛行士になる予定の人の参考になれば嬉しい。

#やってみた大賞

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