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突き抜けた人になる秘訣は、「できる」でなく「できない」と思うことではないか

「俺にはSASUKEしかないんですよ」

 これは、ご存知ミスターSASUKEこと山田勝己の名言である(最近YouTubeも始めたらしい)。第10回大会の3rdステージで惜しくも落水してしまい、「今後どうされますか?」とインタビューされて悔し涙を流しながら答えた言葉だ。
 先日のSASUKE2021でも、期待を裏切らず開始4秒で落水したのは記憶に新しい。

 さて、なぜ山田勝己の名言を引用したのか。
 それは、「俺にはSASUKEしかないんですよ」には、人生の上手く動かす秘訣があるからだ。

できないマインド

 その秘訣とはなにか? それは「できないマインド」である。

 「『できない』と決めつけるのは人間の可能性を潰してしまう。だから『なんでもできる』というマインドを持とう!」という意見はよくきく。
 たしかになんでもできるというマインドはすごく大事だろう。しかし、何かに打ち込みたい人にとっては邪魔になることもある。実際、僕にとってはマイナスに作用することが多かった。
 僕は、あれこれ欲張っていろいろ手を出してしまうタイプだ。世界中旅行したいし、安定した生活もしたいし、モテたい。結果、全部中途半端。これまでの人生で1つのことに長く打ち込めたことがなく、自分には「これだ!」というものがない。

 そんな捨てられない僕への処方箋が「俺にはSASUKEしかないんですよ」だった。
 この言葉を少し言いかえると、「俺はSASUKE以外はなにもできない」になる。これは「できるマインド」のその、「できないマインド」である。
 なんでもできると思っているから欲が出てしまうのだ。だから、「なにもできない」と思えばいい。

 僕はそうすることによって欲がなくなって、1つのことに打ち込めるようになった。
 ちなみに、ONE PIECEのルフィもできないマインドの使い手である。

ONE PIECE 10巻

 僕は、1年前のあるきっかけから できないマインド を駆使して、自分の「これだ!」というものを見つけることができた。

難病になった

 そのきっかけというのは、2020年12月に、医師から難病の告知を受けたことだ。
 「非常に珍しい病気で、今のところは根本的な治療法はありません」
 どうやら僕は、肝臓がどんどん壊れていく不治の難病になったようだ。今後どうなるかはわからないけど、最悪数年しか生きられないらしい。

 最初は青天の霹靂すぎて現実感がなかった。
 しかし、治療のため何度か入院して病棟のベッドで過ごすうち、少しずつ自分が病気なんだという現実を受け入れてきた。

 その後、病気を受け入れつつ、今後の人生をどうしようか考えはじめた。
 何をやっても中途半端な自分にそろそろおさらばしたい。できれば、自分が天命と思えるような仕事を残したい。

できないことを決める

「できるマインド」が素晴らしいという思い込みを捨てたらとても視界が開けた。

 まず、余命を5年と仮定することにした。
「できるマインド」は、人生は長いという思い(込み)からも生まれる僕は今32歳なので、平均寿命で考えるとあと50年くらい生きることになる。50年も時間があるとなれば、自分の可能性は無限に思えてくる。
「今後10年でスキルが身につけば……」とか「10年もあればもっと人脈が増えて……」などと、未来の、もしもの自分の可能性を考えるのをやめて、の、現実の自分ベースで真剣に考えることができた。

 そして「できないこと」を決めていった。

 まず、「運動はできない」と決めた。
 病気になって激しい運動ができなくなったからだ。ハイキング程度なら問題ないのだが、ここは思い切って運動全般を諦めよう。

 次に、「モテない」と決めた。
 実は僕、病気の薬の副作用で乳房が女性化してきている(現在Aカップくらいある)。乳房が女性化したのは「モテようとするな」というお告げだろう。よし、モテたい欲は消し去ろう。

 こんな感じで「できないこと」をバシバシ決めていった。

 そうして最後に残ったのが「科学」だった(正確には「科学の考え方や考えることの楽しさを伝えること」)。僕は「科学ができる」のだ。
 僕は、科学ついて考えたり、人に話したりすることをいつも自然にやっていた。

ONE PIECE 10巻

俺には科学しかないんですよ

 つまり「俺には科学しかないんですよ」になった。山田勝己ありがとう。

 その後、「科学」をベースとして何をしたいか? ということを言語化して、似たような思いを持っていそうな友人を1人1人口説いていった。数人が思いに賛同してくれ、活動をスタートさせることができた。最近は自分たちの思いを形にして、実際の教材を作り始めている。その活動も1年近く継続できている。

 このように、僕が1つのことに熱中できるようになったのは「自分はできない」と思うことがスタートだった。

 何かに打ち込みたい人はぜひ「できるマインド」が素晴らしいという思い込みを捨てて、「できないマインド」を駆使して自分なりのSASUKEを見つけてほしい。

※ サムネイル画像は TBSのSASUKE公式サイト から引用。

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