保険証と免許証の裏の臓器提供の欄、わかりにくくて書けなくない?
保険証とか免許証の裏、書いてますか?
臓器提供に関して○をつけるあれ。
記入してますか?
現在筆者は32歳で肝臓の難病を患っている。肝臓移植以外の根本的治療法は今のところなく、2, 3年後くらいに移植手術になるだろうと言われている。
しかし、日本では移植を希望していても実際に臓器移植を受けられる確率は、ガリガリ君の当たりくらい低い(3%)らしい。ガリガリ君なんて1回も当たったことないよ……。
調べてみると、日本の移植医療は海外と比べて遅れていて、臓器提供の数がとても少ないらしい。どうして日本は海外よりも遅れているんだろうか?
そもそも臓器提供って何? という方はこちらの記事を読んで欲しい。
臓器提供がガリガリ君レベルになっている一因として、臓器提供の意思表示をしている人が少ない(未記入である)ことが挙げられる(注1)。本人の生前の意思表示が、残された家族の最終判断に影響するのだ。
そして、意思表示の記入率は全体の12%程度と非常に低い(注2)。
なぜ記入率は低いのだろうか?
原因の1つとして、保険証などの裏面の記入欄がわかりにくいことがあると思っている。
この記事では、筆者の感じた臓器提供の意思表示欄の「わかりにくさ」について書いている。
加えて、自分なりの改善案も載せた。読んでくれた方は、意見やアイディアをいただけると嬉しい。
まずは見てみる
まずは健康保険証を裏返して見てみよう。
……なんかよくわからん。
そう思わないだろうか?
よくわからないと記入する気も起こらないものだ。
臓器提供の意思表示はそもそもボランティアなので見返りがない。しばらく見てみてわからなかったら「めんどくせっ! やーめた!」となってしまうだろう。世論調査の結果を見てもわかりにくさによって記入に至っていない人がいると推察できる(注3)。
ではどこがわかりにくいのだろうか?
筆者の思うわからないポイントは大きく2つ。
意思表示サインの使い道がわからない。
「脳死」が難しくてわからない。
謎1:使い道がわからない
最初に感じるのが、この意思表示サインがどう使われるのかがよくわからないことだ。
「ここに記入したら100%臓器提供されるの?」「逆に記入していなかった場合はどうなる?」「自分は良くても家族が嫌がるかも……」とかわからないことだらけだ。
こういった疑問が次々に浮かんできて、やがて疲れて記入をやめてしまう。
謎2:「脳死」が難しくてわからない
難しいポイントその2、いきなり「脳死」というワードが出てくる。
多くの人は「脳死」については深く知らない。あえて言うなら「回復しないらしい……ただ奇跡の回復例とかも聞いたことある……」程度の理解だろう。。
よく知らないけど、助かる確率がほんの少しでもあるなら、脳死OKにサインするのはリスクが大きすぎる。万一を考えて「提供しない」を選びたくなるのが記入する人の心情だろう。
改善案
以上を踏まえて、臓器提供の意思表示の文言の変更を提案したい。
使い道わからない問題
意思表示したものがどう使われるのかは、移植の現場を知ることでかなりイメージが湧くと思う。良い動画を見つけたので4:19〜をぜひ見てほしい。
移植実施のプロセスは下のようになっている。
移植の最終判断は家族が行っていることがわかる(注3)。
しかし、移植の現場をイメージすると、最終判断が家族とはいえ、提供者本人の意思表示がやはり重要だと改めて感じた。
患者が死亡したと思われる状態になった直後に、医療者と患者家族が話をするのをイメージしてほしい。患者が亡くなった悲しみの中で臓器移植の説明は行われるのだ。
患者家族は、本人の生前の意思表示がない状態で臓器提供について考える気持ちになれるだろうか? 生前の臓器提供の意思表示があれば、その気持ちを尊重して「とりあえず話を聞いてみよう」という気が少しは湧くかもしれない。
また、医療者側も生前の意思表示があったほうが臓器提供の話を家族に切り出しやすいだろう。
「脳死」難しすぎ問題
「脳死」が難しいのはもう仕方がない。
だから、しょっぱなから「脳死」という言葉を使うのは避ける方針がいいと思う。
一方で、重要な説明が抜けている。脳死が臓器提供においてどういう意味があるか、すなわち心停止後よりも脳死後のほうが提供できる臓器が多くなるという説明だ。
「それくらい調べたらわかるっしょ」という意見は間違っている。多くの人は調べる前に記入をやめて保険証を財布にしまっている。
どういう文言にするか
使い道と臓器移植のプロセスを踏まえると、最も大切な質問は「臓器提供する意思があるか?」だ。
だから最初の質問はこうだ。
次の質問で初めて「脳死」を出そう。
しかし脳死は難しい。フェルマーも「脳死について書くには健康保険証の裏の余白は狭すぎる」と言っていた。そこで選択肢「わからない」を用意する。
細かい使い道については、全て注釈でまかなう。
改善案の雛形
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皆様の意見もいただけると嬉しいです。
・文言を変えたほうがいいのは同意する。ただし、提案内容には同意しない。もっとこうしたほうがいい。
・文言を変える必要はない。今のままで十分わかりやすい。
・意思表示の有無に記入欄の「わかりやすさ」はあまり関係ないと思う。
などなど。
Twitter → @matuda_takafumi
いただいた意見
こちらで要約させていただいています。
臓器移植に関する記事は以下のマガジンにまとめているので参照して欲しい。