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思い出の扉

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2025年1月の記事一覧

給食室

給食室

 この間、用があって、ぼくが通っていた小学校の近くまで行った。

 当時木造だった校舎は、鉄筋校舎に変わっていた。位置も若干移動していて、木造校舎の建っていた場所が運動場になっており、運動場のあった場所に鉄筋校舎が建っていた。位置的にまったく変わってないのはプールだけだった。かつては田んぼだらけだった周りの景色も、今は住宅地に変貌していた。

 というわけで、母校ではあるが、母校とは言い難い雰囲気

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【詩】西から風が吹いてきたら

【詩】西から風が吹いてきたら

西から風が吹いてきたら
朝一番の汽車に乗って
懐かしいふるさとに帰るんだ
向かい風をたどってね

雨が降ったってかまわないよ
傘の一本もいらないよ
だってぼくのふるさとは
いつだって晴れているんだから

 小さな思い出をたどっても
 ぼくは懐かしいとは思わないよ
 だって東京の風はいつだって
 雨を誘うんだから

何も告げずに行くよ
恋人よ、ぼくのことは忘れとくれ
会おうとも思わないでおくれ
本当

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空飛ぶ円盤

空飛ぶ円盤

1,
 小5の3学期だった。
 5時間目の授業中に、ぼくは隣の席のヤツとおしゃべりしていて、「二人とも廊下に立っとけ!」となったことがある。
 3学期の廊下は寒い。さらに当時の校舎は木造だったので、窓から隙間風が入ってきて、その寒さに追い打ちをかける。その寒さを忘れるために、ぼくは一緒に立っているヤツにしゃべりかけた。
「おれ、さっきから気になっとったんやけど、あの雲の横に何かないか?」
「どの雲

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同窓会の思い出

同窓会の思い出

 ずいぶん前の話だが、高校の同窓会に参加した時に、担任の先生が登場したことがある。頑固な先生だったが、そんな先生ほど生徒の心に残っているのだろう、割れんばかりの拍手をもらっていた。

 その担任とは色々ないきさつがあり、ぼくは無視を決め込んでいたのだが、友人が何度も、
「先生がお前に会いたがっとるぞ」と誘いに来る。それを聞いてぼくは、
「会いたがっとるわけないやないか。それに何十年経ったと思っとる

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【詩】成人の日の歌

【詩】成人の日の歌

あの日ぼくはギターを弾いて、
歌をガンガンうたっていた。
絶叫していた。怒鳴っていた。
おかげで酔いがいっぺんに回り、
歌はだんだん無茶苦茶になり、
終いには過呼吸になっていた。
周りは白けたムードになって
誰も聴いてくれる人はいない。

とにかくあの頃のぼくは
どこへ行っても変人扱いされて、
どんなことを言ってもやっても
誰も相手にしてくれない。
声をかけても振り向かれない。
だから彼女も出来や

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ブルーにこんがらがって

ブルーにこんがらがって

コンクリートの床の冷たさが
上履きの底からしみてくる。
その日は朝から気温が上がらない
寒い寒い一日だった。昼休み、
ぼくは予約していたその日発売の
ボブ・ディランのアルバム『血の轍』が
入荷しているかどうかを確かめるため
レコード店に電話をかけていた。

「少々お待ちください」から
どのくらい時間が経ったのか
えらく待たされているような気がする。
窓の外ではとうとう雪が舞いだした。
「・・・・申

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ハリアタマテツオ先生

ハリアタマテツオ先生

 中学の頃に、『ハリアタマテツオ』とあだ名された理科の先生がいた。そのあだ名のとおりいかにも堅そうな髪質で、寝癖でもついているのか髪の毛の一部がいつも針金のごとく立っていた。

 ハリ頭ではあるがハゲ頭ではなく、その半分くらいは白髪で占められていた。そのせいでけっこう老けて見えたのだが、おそらくはその容姿よりも年は若かったはずだ。

 ぼくはある時期、そのハリアタマ先生のごとくに髪に癖がついてしま

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雪の朝(2005年12月18日の日記)

雪の朝(2005年12月18日の日記)

 昨日は夕方から断続的に雪が降っていた。夜が深まるにつれて、吹雪だし、寒さはだんだん増していった。
 日記を更新したあとに窓の外を見てみると、すでに前の公園は真っ白になっていた。天気予報で、朝方は冷え込むと言っていたので、朝はもっとひどい状況になっているだろう。
 ということで、朝は確実に大雪が積もることが予想された。

 そのため、早い段階から、今日のJR通勤を覚悟していた。いつもより1時間早く

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【詩】三学期の妖怪

【詩】三学期の妖怪

三学期は早々と日が暮れる。
夕方になれば街は真っ暗で
ついたりきえたりの街灯と
つめたくさみしい風の音が
三学期の妖怪を連れてくる。
子供たちはすでに家に帰り
三学期の妖怪に怯えながら
真冬の宿題をこなしている。

無表情な面接官

無表情な面接官

かつてある企業の面接官にぼくは
「君はこういう仕事向きじゃない。
他の仕事を探したほうがいい」と
無表情な顔で言われたことがある。
「向きや不向きはやってみないと
わからないじゃないですか?」と
ぼくが言うと、無表情な面接官は
「追って連絡するので」と言って
サッサとぼくを追返したのだった。
不採用だったのは言うまでもない。

その後ぼくは別の企業ではあるが
不向きだと言われた仕事に就いた。
あれ

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