城谷正博

オペラを生業としています。ここでは私が人生を懸けて愛するワーグナーのことを中心に、さまざまな音楽の話題をお届けできればと思っています。 また私はメディカルアロマコンサルタントとして、お薬に頼らずエッセンシャルオイルで日々の健康をサポートすることもお伝えします。

城谷正博

オペラを生業としています。ここでは私が人生を懸けて愛するワーグナーのことを中心に、さまざまな音楽の話題をお届けできればと思っています。 また私はメディカルアロマコンサルタントとして、お薬に頼らずエッセンシャルオイルで日々の健康をサポートすることもお伝えします。

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    オリヴィエ・メシアンの作品の解読を行なっています。特にトゥランガリーラ交響曲の分析が中心です。

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ワーグナー、そしてメシアン

こんにちは、城谷正博です。 日々オペラと向き合う生活を送っています。 あらゆる時代のオペラと関わっていますが、その中で最も頻繁に取り組んでいるのがワーグナーの作品です。 これまでに主要10作品の上演に関わり、すべてをレパートリーとして持つことができました。作品を知れば知るほど深みにハマっていくその魅力を解き明かしたいと、飽くなき興味を持って研究を積んできました。難しいと思われているワーグナーをもっと身近にしたいという思いで「わ」の会を立ち上げたのが10年前、その活動は認知さ

    • 2014年新国立劇場「死の都」稽古日誌

      前回2010年新国立劇場「影のない女」の稽古日誌を公開したが、「昔の劇場の様子がわかっていい」とか「オペラを作っていく過程が面白かった」などオペラ業界人の意見を頂戴した。そこで第2弾として2014年に上演した「死の都」の日誌も公開してみることにする。当時書いたまま一字一句変えていないし、時には愚痴だったり、内情を露わにしている部分もあるが、すでに10年前ということに鑑みお許しいただきたい。 *************** ・死の都 立ち稽古初日 2014年02月12日2

      • 2010年新国立劇場「影のない女」稽古日誌

        先ごろ終演した二期会「影のない女」について記事を書くために過去の資料を見返していました。するとmixiに2010年の新国立劇場上演について、稽古初日から千穐楽までの詳細な稽古日誌をつけていたことを思い出したのです!14年前に私自身が書いたものですが、今見るととても面白いですし当時の貴重な記録かとも思いましたので、mixiから引っ張り出してきてnoteにまとめようと思い立ちました。音楽スタッフの仕事ぶり、私自身が感じたことなど、当時のまま一字一句変更なしに載せますので、是非楽し

        • Die Frau ohne Schatten

          1992年のバイエルン国立歌劇場来日公演「影のない女」、NHKホールでの公演だと舞台機構の影響でカットが増えると聞いていたので、全貌を知りたいと思った私は愛知県芸術劇場まで車を飛ばして行ったのだった。当時藝大指揮科の1年生、この劇場の柿落とし公演でもあり、素晴らしい劇場を目の当たりにしてすごくときめいたのを覚えている。演出は市川猿之助、指揮はヴォルフガング・ザヴァリッシュ。ミスターストップと言われた猿之助による歌舞伎を取り入れた演出は斬新かつ美しいものだった。まだオペラにそれ

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          「ジークフリート〜神々の黄昏」 物語の時間軸

          「ジークフリートは何歳?」 「ブリュンヒルデは起きたら何歳になっている?」 ワグネリアンの間でよく話題に上る質問です。皆さんはどのようにお考えでしょうか? 「ジークフリート」3幕でジークフリートによって起こされたブリュンヒルデは「ワルキューレ」の最後からジークフリートが青年になるまで眠っていたのですから、少なくとも18年ほど経過しているでしょう。眠った時が20歳として現実的に年齢を割り出すと38歳!ということになります。 でもこうやって考えてしまったら青年とおばさんの恋⁉

          「ジークフリート〜神々の黄昏」 物語の時間軸

          ベルリオーズ「夏の夜」

          皆様はベルリオーズってどんなイメージでしょうか?私にとっては少し遠い存在、普段ベルリオーズという作曲家に接することはあまり多くありません。以前オーケストラで「ローマの謝肉祭」「ベンヴェヌート・チェッリーニ」を取り上げたくらい。オペラ作品も新国立劇場では取り上げたことがありませんしね。 第九の少し後に書かれたとは思えない「幻想交響曲」がもちろん有名ですが、私にはかなり「ぶっ飛んだ」作曲家というイメージ。「幻想」もぶっ飛んでますが、「イタリアのハロルド」の変わった発想と和音進行

          ベルリオーズ「夏の夜」

          メシアン『トゥランガリーラ交響曲』 分析ノート 第10楽章

          第10楽章「終曲」 Final この楽章は一聴すると第5楽章「星々の血の喜悦」によく似た音楽に聞こえる。同じ3/16という拍子で書かれ、調性も Des dur 〜 Fis dur と対置される。3度の連鎖である「彫像の主題」で構成された第5楽章のテーマと、3度と4度を中心に構成される第10楽章のファンファーレ主題とは親近性を感じることもできる。しかしながら音楽の構造や語法、とりわけテンポ(第5楽章は1小節138、第10楽章は1小節100である)の違いも顕著であり、与える印象

          メシアン『トゥランガリーラ交響曲』 分析ノート 第10楽章

          メシアン『トゥランガリーラ交響曲』 分析ノート 第9楽章

          第9楽章「トゥーランガリラ3」 Turangalîla 3 全曲中3つ目の「トゥランガリーラ」楽章。冒頭に提示されるテーマと3つの変奏で構成されるが、それより中心的な役割は打楽器によるリズムセリーだ。途中から参入する13人の弦楽器は、そのリズムとハーモニーが打楽器のセリーに従属するという特殊な仕組みをとっている。 本稿ではオリヴィエ・メシアンの以下の著作物から引用を行っている。引用元は "OLIVIER MESSIAEN TURANGALÎLA SYMPHONY pou

          メシアン『トゥランガリーラ交響曲』 分析ノート 第9楽章

          メシアン『トゥランガリーラ交響曲』 分析ノート 第8楽章

          第8楽章「愛の展開」 Développement d'Amour 昔のCDではこの楽章の和訳は「愛の敷衍」となっており、この「敷衍」という言葉が Développement のニュアンスをよく表していて、私は好きだ。しかしここでは一般的に用いられている「展開」という言葉を使いたいと思う。 「トゥランガリーラ交響曲」のような巨大な作品においては「音楽的展開」となる一つの楽章が必要だった。それがこの第8楽章である。あちこちに散らばっている短い展開を除いて、この作品のいくつかの

          メシアン『トゥランガリーラ交響曲』 分析ノート 第8楽章

          メシアン『トゥランガリーラ交響曲』 分析ノート 第7楽章

          第7楽章「トゥランガリーラ2」 Turangalîla 2 第3楽章「トゥランガリーラ1」に続く「トゥランガリーラ」楽章。この楽章は短いながら最も変化に富んだアクション満載の楽章。リズムセリーや音価の操作など、多くのアルゴリズムが設定されている。 なお本稿ではオリヴィエ・メシアンの以下の著作物から引用を行っている。引用元は "OLIVIER MESSIAEN TURANGALÎLA SYMPHONY pour piano solo,onde Martenot solo

          メシアン『トゥランガリーラ交響曲』 分析ノート 第7楽章

          Tristan und Isolde 徒然⑪ ある1つの単語について 〜開幕の日に〜

          本日は2024年3月14日、新国立劇場「トリスタンとイゾルデ」幕開きの日です。この3週間あまり、公演の稽古に明け暮れ、この作品のことだけを考え過ごしてきた幸せな時間でした。その成果を公演という形でお客様にご覧いただけるのは望外の喜びです。 「トリスタンとイゾルデ」第1幕は船上で話が進みます。第3幕はイゾルデの船を待ち望むトリスタンのモノローグが主です。ということで「船」という単語がたくさん登場することになるわけです。第1幕では4回、第3幕では、何と17回も登場します。ここで

          Tristan und Isolde 徒然⑪ ある1つの単語について 〜開幕の日に〜

          メシアン『トゥランガリーラ交響曲』 分析ノート 第6楽章

          第6楽章 愛の眠りの庭  Jardin du Sommeil d'Amour 前楽章とは対照的な穏やかな響きに満ちた楽章。「愛のテーマ」が完全な形で出現する。このテーマはのちの第8、10楽章で大きく展開されていく。 なお本稿ではオリヴィエ・メシアンの以下の著作物から引用を行っている。引用元は "OLIVIER MESSIAEN TURANGALÎLA SYMPHONY pour piano solo,onde Martenot solo et grand orchest

          メシアン『トゥランガリーラ交響曲』 分析ノート 第6楽章

          Tristan und Isolde 徒然⑩ 死への憧れ

          トリスタンは「死にたくても死ねない」運命を背負った人物でして、幾度も死を覚悟した瞬間があるのにも関わらず、死ねないのです。詳しくは過去記事をご覧ください。 そんな彼ですから「死に対する憧れ」は人一倍強いのです。それを体現するようなライトモティーフが存在します。「死への憧れの動機」です。 2幕2場昼の対話の最後の場面です。これを最後に長〜い夜の対話に入っていきます。トリスタンの歌う「神聖な夜への憧れ」というのは「死ヘの憧れ」と言い換えても良いかもしれません。 このテーマの

          Tristan und Isolde 徒然⑩ 死への憧れ

          Tristan und Isolde 徒然⑨ お団子4個をいろんな並べ方にしてみよう!

          今日は最初にちょっと「和音」のお勉強をします。でも決して堅苦しいことはありませんよ。これがわかると「トリスタン」の秘密が見えてくるようになるので、楽しみながらお読みください。 一般的に「和音」と呼ばれるものはどのように出来ているでしょうか?その組み合わせの基本は3度音程をだんご🍡のように重ねていくことです。音階の音を一個とばしで重ねる、ということです。普通は3つ以上の重なりを「和音」と言います。 「ド」の音を基準に考えてみますと、基本は「ドミソ」の和音です。「ド」は変えず

          Tristan und Isolde 徒然⑨ お団子4個をいろんな並べ方にしてみよう!

          Tristan und Isolde 徒然⑧ 前奏曲冒頭のヴァリエーション その4

          今回は「薬」に関する場面に登場するヴァリエーションのご紹介。まずはいつものように前奏曲冒頭の楽譜を再掲します。 「トリスタンとイゾルデ」における「薬の交換」は劇における重要なファクターです。これはワーグナーの創作でありまして、原作にあるわけではありません。ブランゲーネがイゾルデに命令された「死の薬」を「媚薬」に取り替えたことで起こるドラマなのです。 ところで前奏曲冒頭動機は全体がひっくるめて「憧れの動機」とか「憧憬の動機」と呼ばれますが、今日見ていくように最初のチェロの導

          Tristan und Isolde 徒然⑧ 前奏曲冒頭のヴァリエーション その4

          Tristan und Isolde 徒然⑦ 前奏曲冒頭のヴァリエーション その3

          前奏曲冒頭の音楽のヴァリエーションを探るシリーズ3回目は、第3幕に現れるシーンから。いつも通り前奏曲の楽譜を再掲します。 そして今回俎上に乗せるのが第3幕のこの場面。 2幕最後、メロートの剣に自ら飛び込んだトリスタンは深手を負い気を失います。肩幅の広い屈強の男クルヴェナルによって運ばれ、小舟で故郷カレオールに連れ戻されました。その後トリスタンは意識を取り戻すものの、傷は悪化しており、クルヴェナルは治療のためイゾルデに使いを送ったことをトリスタンに告げます。それを聞いたトリ

          Tristan und Isolde 徒然⑦ 前奏曲冒頭のヴァリエーション その3