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「仕事に対してやる気が出ないんです」と言われたら

前の職場で部下だった若松君から電話が掛かってきた。
聴くと、少し相談に乗って欲しい とのこと。声にも心なしか元気がない。
彼は品質管理の仕事をしていて、生産された製品の品質評価をする事が主な業務だ。
高卒で入社して今年で四年目。 以前は、元気にやっていたのだが。

やる気がでないんです・・

さっそく会って話を聴くと、

「最近、仕事に対してやる気が全く出ないんですよ。
職場の雰囲気は悪くないし、 仕事だって特に大きなトラブルが起きている訳でもないんです。職場の人間関係も問題はありません。
でも、仕事に対して情熱が湧かないというか、やる気がでないんです。」

「そうか。やる気が出ないんだ。それで以前よりも元気がないように見えるのかな。ところで、いつ頃からやる気が出なくなったの?
以前はそうでもなかったように思えたけど。
何かきっかけになるような出来事があったの?
例えば、仕事内容が変わったとか、 上司が変わったとか。」

「いつ頃からか?と訊かれると・・・ここ数か月くらいですかね。
仕事は変わってないです。
上司もここ一年変わってないし、きっかけのようなものは特に思い浮かばないです。」

「そうか・・。何かきっかけがあった訳じゃないんだね。分かったよ。
それじゃあ、若松さんの主観でいいんだけど、やる気が出ない理由は何だと思う?」

「それが分からないから相談したんですけど・・」

「まあそう言わずに、 少し考えてみて。」

「・・・。うーん。そうだなぁ。強いて言えば、仕事にやりがいを感じなくなったのかも。ひたすら決められたことを繰り返しているように思えるんですよ。多分ですけど、僕はもっとやりがいを感じるような仕事がしたいのかもしれません。だとすると、転職もありかなと思えてきました。」

「そうなんだ。やりがいを感じられる仕事ね。
もしかして今、他にやりたい仕事があるの?」

「いや、特にはないです·。」

「やりたい事がないのに転職するのは、後悔するかもよ。
おそらくだけど、それだと転職先でも、いずれ同じ問題にぶつかると思わない?」

「確かにそうですね。じゃあ丸部さん。やりがいを感じられるような仕事を知りませんか?」


やりがいのある仕事を見つけるのではなく、 仕事の中にやりがいを見つける

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「これをやれば必ずやりがいを感じられる なんて仕事は無いよ。」

「そうなんですか?」

「そんな仕事があったら、私だってやりたい。やりがいのある仕事なんてのは幻想だよ。仕事の中にやりがいを見つけてみたらどうかな。

「?・・難しくて、よく分かりません。」

「そうだなぁ。例えば、あなたの職場に藤木さんっているだろ。」

「いますよ。 彼女はいつも元気ですよね。」

「そう。彼女はいつも元気に働いてるよね。」

「そうですね。でも、それがどうかしましたか?」

「彼女の仕事とあなたの仕事の内容は、取り扱っている製品が少し違うだけで、ほぼ同じだよね。
同じ職場で同じような仕事をしているのに、一方は活き活きと仕事をしていて、 一方はやる気なさそうに仕事をしている。

「やる気なさそう・・ですか。そうかもしれません。」

「その差は何だと思う?」

「その差が、やりがいなんですか?」

「正解!」

「いや、正解!は、いいんですけど、その仕事にやりがいを感じない僕はどうしたらいいんですか!」


好きな要素は何なのか?

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「そういえば、若松くんってランニング好きだったよね。」

「話を反らしましたね・・・。 
確かに走ることは僕の一番の趣味ですね。昨年のマラソン大 会では自己ベストを更新したんですよ。嬉しかったなぁ。」

「自己ベスト更新!すごいね。そのランニングの大好きなところはどこ?」

「やっぱり、風を切って走る爽快感。
あとは、自分の努力や工夫なんかでタイムが短くなったときの達成感ですかね~。」

「いいね~。それを仕事に取り入れてみたらどう?」

「え?」

「例えば 。若松くんのチームは一日に製品評価を何台しているの?」

「二時間毎に5台抜き取るので、一日あたり八時間として20台ですね。」

「5台の評価をするのにどのくらいの時間がかかるの?」

「えーっと。評価は約100分です。その後、データのまとめとか製品評価の判定とかをするから 二時間丸々かかることも多いです。
それがどうかしましたか。」

「じゃあ評価時間を80分にしよう。でも品質基準を下げちゃだめだよ。」

「えっ。そんなの無理ですよ。作業標準通りにやったら、どうがんばっても100分近くかかりますよ。以前いたのに知らないんですか。」

「それは痛い所を突かれたね。まぁそこは置いておいて、若松くんは作業標準に書いてある評価工程の理由を全部理解してる?」

「いや全部は知らないです。」

「じゃあ今度調べてみたら、もしかするとムダな工程があるかもしれない。
それに評価のやり方も理由を理解していれば、工夫する余地があるかもしれない。
若松くんは、創意工夫でタイムを短縮するのが好きなんだから、 この評価にかかる時間も短くできたら、やりがいや達成感が得られるんじゃないの?」

「まぁ一応調べてみますけど・・そんなこと出来るんですかねえ・・。」

と言って、若松くんは懐疑的に帰っていった。

趣味は本当にいいと思います。
誰かから指示されなくても、どうやれば上手くいくか?
どう工夫すれば良くなるか? を自分で勝手に考えて実行してしまう。
趣味の中に潜んでいる自分の好きな要素はきっと仕事の中にも隠されていると思いませんか?
そこを見つけて、 活かすことで、 仕事も楽しめたらいいですよね。


その後

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若松くんは、職場に戻って作業標準の工程理由を調べていきました。
すると、製造ラインの検査精度が向上したことで、評価しなくてもよい工程が見つかった と連絡がありました。
製造ラインの改善が、評価の標準に反映されてなかったのです。
さっそく、社内の会議にかけて標準の改訂を実施したとのことでした。
これですんなり時間短縮できるかと思ったら、製品の仕様変更によって、今度は評価が追加になったところが出てきてしまい、期待したほどの時間短縮にはなりませんでした。

「でも、少しだけ時間は短縮できました。
もし、削減できる工程を見つけてなかったら 2時間以内に終わらせること自体が困難になった可能性が高かったので、調べておいてよ かったです。
作業標準は絶対変えてはいけないものだと思いこんでいたので、自分の調査によって変更 できたのは、 嬉しかったです。」

と連絡をくれました。

今は、他に削減できる工程はないか?
他の製品でも削減できる工程があるのではないか?
と色々調べているようで、表情も明るくなってきました。

みなさんにも、大好きな趣味があると思います。
その趣味のどのような要素が好きなのか?
一度考えてみるといいかもしれません。

鉄道が好き。といっても、乗車するのが好きな人もいれば、写真を撮ることが好きな人もいるし、鉄道の歴史が好きという人もいる。

どのような要素が好きなのか、その要素は今している仕事の中にないのか。
探してみるのもおもしろいでしょう。

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