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俳句

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俳句を始めました。 ご指導よろしくお願いします。
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#私の作品紹介

花の雨ひとりの部屋の壁白し
碧萃生

東京で一人暮らしを始めた頃、まだ何もない部屋で、新しく買ったスチールの本棚もすかすかで、まだ連絡を取れる友人もなく、そんな時の雨はどこか寂しさを誘い、それはホームシックとはまた別の感情であったと思います。
初めて都会を感じる時かもしれません。

銀幕は大団円に春休
碧萃生

「ゴーストバスターズ/フローズン・サマー」を見た後の、妻との語らいの時間です。

【俳句】新社員〜碧 萃生

【俳句】新社員〜碧 萃生

同じ服同じ返事の新社員

今はまだノーとは言はぬ新社員

僕は入社式の風景が嫌いだ。
みんな同じスーツ、同じ髪型、僕には同じように見える目をして、同じ方向を向いている。
いったいどこの国の儀式なのだろうと考えてしまう。
強制されてもいないのに、みんなが同じような服を着てくる国は、それを強制される国よりも危険な香りがする。
会社には入社式はあるが、学校のように卒業式はない。
入る時には社長まで出てき

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【俳句】四月馬鹿〜碧 萃生

【俳句】四月馬鹿〜碧 萃生

あれこれの初めが四月馬鹿の国

双子座の順位見てゐる四月馬鹿 

四月馬鹿休日出勤してをりぬ

一年も四ぶんのいち四月馬鹿

妻からの連絡遅し四月馬鹿

4月1日は年度初め。
早生まれと遅生まれの別れる日。
入学、進級の日。
新社会人は入社式。
人事異動、昇格、昇給。
営業目標など、新しい年度計画が始まる日。
新しい法律や制度が施行される日。
こんなに重大な日が、エイプリルフール、四月馬鹿とはね。

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【俳句】朧月 # シロクマ文芸部

【俳句】朧月 # シロクマ文芸部

朧月なかなか会へぬ待ち合はせ

先日京都市内へ行った時に、こんな光景を目にしました。
女の子が携帯で話しています。
「どこ?今駅出たとこ…右?どっち向いて右なん?…信号渡ってすぐに右?渡ったら川やで…え、橋を渡ってから?もう、今どこ?」
京都市内は観光客でいっぱいです。
かつてのハチ公前ほどではないですが、京都も今では場所を細かく決めておかないとなかなか会えなくなってきました。
果たして、彼女は出

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【俳句】雪柳〜碧 萃生/非正規/老朽化マンション

【俳句】雪柳〜碧 萃生/非正規/老朽化マンション

契約は満了ですと雪柳

大学を卒業して、61歳で退職するまで、ずっと正社員で働いてきた。
その間、バブルが崩壊して、世間では倒産やリストラが横行した。
しかし、幸いにも働いていた会社は、多少ボーナスが減ったり、昇給が少なくなったりしながらも、リストラなどすることなく持ちこたえた。
非正規の大量解雇がニュースになったこともあるが、「大変だなあ」と他人事だった。

退職後、1年間を失業手当で過ごして、

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【俳句】雛の間 古雛 雛の段〜碧 萃生

【俳句】雛の間 古雛 雛の段〜碧 萃生

小暗きをみな足早に雛の間

歳月を一身に受け古雛

空箱をいくつ重ねて雛の段

母の実家(と言っても、祖母の再婚相手で母の実父ではない)は、福岡県田川市であった。
炭鉱で羽ぶりがよかったのであろう、大きな家で広い庭に池もあった。
幼い頃には、母に連れられて何度が訪れていたが、その中に雛祭りの時期もあったのだろう。
五段か七段の立派な雛人形が飾られていた。
しかし、何故か、飾られるのはいくつもある部

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【俳句】春疾風 うららか 朧夜〜碧 萃生

【俳句】春疾風 うららか 朧夜〜碧 萃生

ともかくはトートバッグに春疾風

うららかや投句葉書を指先に

朧夜の足どりはオー・シャンゼリゼ

昨日、初めてのリアルな句会に参加してきた。
場所は、小さなアトリエの一室。
平均年齢は高めで、最初は賑やかにおしゃべりしていたのが、句会が始まるとみんな真剣そのもの。
出句したうちの二句に並選をいただいたが、点数の高い句が必ずしもいい句とは限らない。
「みんなの感想が同じ内容ということは、類想句でも

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【俳句】バレンタインの日 バレンタインデー〜碧 萃生

【俳句】バレンタインの日 バレンタインデー〜碧 萃生

チョコはチョコ黙ってバレンタインの日 

バレンタインデーの義理とか人情とか

おはようもどこかバレンタインの日

チョコレートは、カカオ豆の栽培から始まり、多くの人の手を経て、その手にやってきた。
義理とか本命だとかつべこべ言ってないで、まずは感謝していただけばいい。

僕は自意識過剰とも思える、関西弁で言うところの「気にしい」だ。
だから、バレンタインの日の朝は特に気を使った。
もちろん、義理

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【俳句】建国記念の日 建国祭〜碧 萃生

【俳句】建国記念の日 建国祭〜碧 萃生

建国記念の日や顎髭も白髪に

好きなもの数へ建国記念の日

肉まんを昼食にして建国祭

植字工建国祭の活字組む
活字組む建国祭の植字工

父は印刷工として小さな印刷所で働いていた。
当時は活字をひと文字ずつ組んでいく活版印刷が主流で、本や新聞もそれで印刷されていた。
だから、新人と熟練工では1ページ組むのに大きな時間差があったらしい。
ひょんなきっかけで父は新聞社に移り、そこで新聞の印刷に携わる。

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【俳句】冬を惜しみながら〜碧 萃生

【俳句】冬を惜しみながら〜碧 萃生

粉雪や古紙回収の「罪と罰」

半ドンの子ら風花を眉に受け

雪雲に包囲されたり敵味方

駅までを妻と歩みし寒月下

硬球の音らくらくと春隣

血管の図に似てゐたり枯桜

作業着のポケット多し春隣

古紙回収の朝、この冬一番の寒気み見舞われ、粉雪が待っている。
古新聞や雑誌に混じって、「罪と罰」の文庫本が出されていた。
新潮文庫の米川正夫訳。
それも、表紙にドストエフスキーの顔が印刷された、今から4

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【俳句】豆撒 鬼は外〜碧 萃生

【俳句】豆撒 鬼は外〜碧 萃生

豆撒の福より鬼の人気かな

結局は鬼も豆食ふ鬼は外

もう、夫婦二人で豆撒きなんかしない。
せいぜい恵方巻きを頬張るくらいか。
そもそもは大阪の寿司と海苔の組合が仕掛け人だとか、セブンイレブンが広めたとか、いろいろな説があるらしい。
今年の恵方は、東北東のやや東だとか。
まあ、信じて食べればいいことがある。
ところで、恵方巻きって、関西だけ?
だとしたら、「秘密のケンミンSHOW」に出て来る地方の

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【俳句】青写真 # シロクマ文芸部

【俳句】青写真 # シロクマ文芸部

青写真父の機嫌の良き日には

歳時記では、「青写真」=「日光写真」で冬の季語となっている。

日に当てておくと、鉄腕アトムや鉄人28号の姿が浮かび上がってくる。
今から思えば、他愛もない遊びだ。

日光写真もそうだが、蝋燭の火で動くブリキのポンポン船、竹ひごを蝋燭の火で曲げ紙を貼り付けて作るグライダー、マブチモーターのプラモデル、凧上げ、コマ回し、それらを最初に教えてくれたのは父であった。
だから

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