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読書記録

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頭が動いたままに、心が感じたままに、記録を残しています。読書感想に正解はなくていいのです。
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読書ノート『グレイスは死んだのか』

読書ノート『グレイスは死んだのか』

 第55回新潮新人賞を「シャーマンと爆弾男」で受賞した著者「赤松りかこ」さんは、大江健三郎さんを敬愛する獣医師です。
 本書にはシャーマンと爆弾男も併録されています。

 赤松さんの文章を読んでいると、腹の中、さらに奥の奥からエネルギーが沸き立ちます。帯に「圧倒的筆力」とありましたが納得の筆力、とてつもない力強さは刺激的で虜になります。

 ネタバレになるから軽く……
 とても読みづらくて頭がモヤ

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読書ノート『軽いノリノリのイルカ』

読書ノート『軽いノリノリのイルカ』

 満島ひかり × 又吉直樹

 満島ひかりが生んだ回文をもとに
 又吉直樹が物語を書き下ろした
 GINZA連載の回文物語集「まさかさかさま」書籍化

ーー感想「回文」

 こどもの頃に流行った「上から読んでも下から読んでも」ってあったなあ、と懐かしい思いだけで手にとって、回文ってこんなに長い文章が書けるんだ! って衝撃をもらった。
 タイトルがすでに回文になっていて、オシャレでかわいい。
 満島

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読書ノート『むらさきのスカートの女』

読書ノート『むらさきのスカートの女』

 第161回芥川龍之介賞 受賞作

――こんな話

「むらさきのスカートの女」と呼ばれる彼女が気になって仕方のない「黄色いカーディガンの女」わたしは、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で彼女が働きだすよう誘導する。
 ホテルの清掃係として働くようになった彼女は、同僚から認められ、しだいに健康的になっていき、性格も明るくなる。職場に馴染んだ彼女は所長と不倫をするようになり、同僚から嫌がら

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読書ノート『蛇にピアス』

読書ノート『蛇にピアス』

 第27回すばる文学賞
 第130回芥川賞

ーーこんな本

 赤い髪に龍の刺青をいれ、ピアスとスプリットタンが特徴的な束縛気質な恋人アマ。ルイの苦しむ顔や泣いている顔を見ると欲情するサディストの彫り師シバさん。ふたりと関係をもつルイは、痛みに快楽を感じる。
 蛇のように舌を二つに割るスプリットタンに魅了されたルイは、身体改造にはまっていく。舌にピアスを打ち、背中には龍と麒麟の入れ墨を入れるけれど

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読書ノート『水たまりで息をする』

読書ノート『水たまりで息をする』

 芥川賞作家の高瀬隼子さん、大好きな作家さんのひとりになります。
 

ーーこんな話

 バスタオルを使っていない……夫が風呂に入っていないことにづいた衣津実は、なんとか風呂に入れようとするけれど入ってくれない。水が臭くて触れるとちょっと痛いと主張する夫は、風呂に入らないままでも会社へはいく。どんどん濃くなる臭いと溜まっていく垢に、衣津実は心配になるけれど夫はそれほど気にした様子ではない。
 ある

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読書ノート『日本語の作文技術』

読書ノート『日本語の作文技術』

ある作家さんのYouTubeで紹介されていて、その方曰く、文章の型は崩れていくから校正をしていかなければない、そのようなことをおっしゃっていました。

なんとなく感じていた読みにくさ、とは何かを知ることができました。
読みやすい文章は、型を守った構成になっている。そして意味が通じれば、型を守るよりもリズムよく読めることにこだわった方がいいみたいです

しかし実践するとなるとけっこう難しい。
今も書

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読書ノート『暗殺』

読書ノート『暗殺』

2022年7月8日11時31分、奈良県奈良市の近畿日本鉄道大和西大寺駅北口付近にて、元総理が凶弾に倒れた。
その場にいた、ひとりの男が捕まる。

2年前に起きた実際の事件をモチーフに、膨大な取材で描く作品となっている。本当にフィクションですか? と思わせるほどのリアリティがあり、重めの内容ながらリズミカルに物語が進むので読みやすい。

仕立てられた“表向き”の暗殺者、過去の事件とつながる“影の男

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読書ノート『能力で人を分けなくなる日』

読書ノート『能力で人を分けなくなる日』

著者の最首悟さんは87歳になる。妻の五十鈴さんと、重度の障がいをもつ娘の星子さんと三人で暮らしています。

障がいによって「目が見えない」ということや「しゃべらない」ということは、ないことではなく、もっていることだとおっしゃっています。

人間には「人が人といる場所」という意味があります。

◇ 心に響いたはなし

「聴す」は「ゆるす」と読みます。
心を開いて聞くという意味があり、意識を弛緩させて

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読書ノート『猫と罰』

読書ノート『猫と罰』

日本ファンタジーノベル大賞2024受賞作

猫に九生あり。
主役となる黒猫はクロとよばれ、転生を繰り返して九つめの最後の命を生きることになる。三つめで夏目漱石と暮らした黒猫クロの物語。

古書店『北斗堂』には訳アリの猫たちが集まってきます。
過去生で作家とともに暮らした猫たち。
店主の北星は猫たちから魔女と呼ばれ、猫の言葉を理解します。
不思議な古書店にたどりついたクロはすこしづつ過去のキズを克服

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〈読書ノート〉ウクライナにいたら戦争が始まった

〈読書ノート〉ウクライナにいたら戦争が始まった

戦争を知らない。
それは悪いことではなく、良いことです。
わたしも戦争は知りません。映像でしか見たことはなく、文章で読むしかありません。

祖父母は戦争を経験していたので、ことある毎に戦時中の話は聞かされました。

祖父はいつも言っていました。
「役人がそれでは困るが、庶民が平和ボケしていられる。いい国になった」
そう語る祖父の顔には、悲しみながら喜んでいるような、切ないシワが刻まれていました。

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〈読書ノート〉集中力を超える「没入力」を手に入れる

〈読書ノート〉集中力を超える「没入力」を手に入れる

どうにも集中できない。
なんだか頭の回転が鈍い。

この本にある方法を使えば、そんな悩みから解放されます。

TVショッピングくさい紹介になりましたが、確実に効果を実感できます。
即効性があり、いつでも、どこでも、会議中にだってできるんです。

それではポイントだけ紹介します。

「一点集中」から「全体集中」へ

どこか一点に【5秒間】意識を集めます。

たとえば、モニターの電源ランプなど、文字通

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〈読書ノート〉論理的思考問題

〈読書ノート〉論理的思考問題

Google、Apple、Microsoft、米国国家安全保障局が採用試験につかうだけあって、激ムズの問題ばかり……。
ほぼ解けませんでした。
まあでも、試験じゃないからゆっくり時間をかけて楽しめます。
解けなかったら解説を読んで、じっくり考えたらいいだけです。

脳を鍛えるためには、思考の得意や苦手を知りたい。学ぶための目的づくりにもなります。
目的があると、モチベーションをつくりやすいです。

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〈読書記録〉老いない体は意外と不便

〈読書記録〉老いない体は意外と不便

 第11回ハヤカワSFコンテスト特別賞受賞作。
 純文学 × SFといった印象をうけました。

 すぐに「読みづらっ!」って感じます。
 ひらがな多い。文体が煩わしく、疲れる。
 ちょっとだけ我慢。
 すると、すらすら読めるようになります。
 もちろん文体にも意味があって、作者の意図がわかると「あー!」って、おもしろくなる。

◇ 本の中身

 名前の明かされない「わたし」と家族の物語。
 母は亡

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〈読書記録〉短歌と散文のマリアージュ

〈読書記録〉短歌と散文のマリアージュ

くどうれいん × 東直子
2人の歌人が、短歌と散文でつなぐ、みずみずしい歌物語。

◇ 本の中身

29歳の「みつき」は、この先の人生を思うと、途方もない気持ちになる。こちらが、くどうれいんパート(黒文字)。
謎の存在「ミメイ」は、おなじ街を漂よっている。こちらが、東直子パート(青文字)。

短歌の背景を語るように散文が綴られているので、短歌がよくわからなくても楽しめる。

みつきの物語は、たまに

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