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読書ノート『グレイスは死んだのか』
第55回新潮新人賞を「シャーマンと爆弾男」で受賞した著者「赤松りかこ」さんは、大江健三郎さんを敬愛する獣医師です。
本書にはシャーマンと爆弾男も併録されています。
赤松さんの文章を読んでいると、腹の中、さらに奥の奥からエネルギーが沸き立ちます。帯に「圧倒的筆力」とありましたが納得の筆力、とてつもない力強さは刺激的で虜になります。
ネタバレになるから軽く……
とても読みづらくて頭がモヤ
読書ノート『軽いノリノリのイルカ』
満島ひかり × 又吉直樹
満島ひかりが生んだ回文をもとに
又吉直樹が物語を書き下ろした
GINZA連載の回文物語集「まさかさかさま」書籍化
ーー感想「回文」
こどもの頃に流行った「上から読んでも下から読んでも」ってあったなあ、と懐かしい思いだけで手にとって、回文ってこんなに長い文章が書けるんだ! って衝撃をもらった。
タイトルがすでに回文になっていて、オシャレでかわいい。
満島
読書ノート『むらさきのスカートの女』
第161回芥川龍之介賞 受賞作
――こんな話
「むらさきのスカートの女」と呼ばれる彼女が気になって仕方のない「黄色いカーディガンの女」わたしは、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で彼女が働きだすよう誘導する。
ホテルの清掃係として働くようになった彼女は、同僚から認められ、しだいに健康的になっていき、性格も明るくなる。職場に馴染んだ彼女は所長と不倫をするようになり、同僚から嫌がら
読書ノート『水たまりで息をする』
芥川賞作家の高瀬隼子さん、大好きな作家さんのひとりになります。
ーーこんな話
バスタオルを使っていない……夫が風呂に入っていないことにづいた衣津実は、なんとか風呂に入れようとするけれど入ってくれない。水が臭くて触れるとちょっと痛いと主張する夫は、風呂に入らないままでも会社へはいく。どんどん濃くなる臭いと溜まっていく垢に、衣津実は心配になるけれど夫はそれほど気にした様子ではない。
ある
読書ノート『能力で人を分けなくなる日』
著者の最首悟さんは87歳になる。妻の五十鈴さんと、重度の障がいをもつ娘の星子さんと三人で暮らしています。
障がいによって「目が見えない」ということや「しゃべらない」ということは、ないことではなく、もっていることだとおっしゃっています。
人間には「人が人といる場所」という意味があります。
◇ 心に響いたはなし
「聴す」は「ゆるす」と読みます。
心を開いて聞くという意味があり、意識を弛緩させて
読書ノート『猫と罰』
日本ファンタジーノベル大賞2024受賞作
猫に九生あり。
主役となる黒猫はクロとよばれ、転生を繰り返して九つめの最後の命を生きることになる。三つめで夏目漱石と暮らした黒猫クロの物語。
古書店『北斗堂』には訳アリの猫たちが集まってきます。
過去生で作家とともに暮らした猫たち。
店主の北星は猫たちから魔女と呼ばれ、猫の言葉を理解します。
不思議な古書店にたどりついたクロはすこしづつ過去のキズを克服
〈読書ノート〉ウクライナにいたら戦争が始まった
戦争を知らない。
それは悪いことではなく、良いことです。
わたしも戦争は知りません。映像でしか見たことはなく、文章で読むしかありません。
祖父母は戦争を経験していたので、ことある毎に戦時中の話は聞かされました。
祖父はいつも言っていました。
「役人がそれでは困るが、庶民が平和ボケしていられる。いい国になった」
そう語る祖父の顔には、悲しみながら喜んでいるような、切ないシワが刻まれていました。
〈読書記録〉老いない体は意外と不便
第11回ハヤカワSFコンテスト特別賞受賞作。
純文学 × SFといった印象をうけました。
すぐに「読みづらっ!」って感じます。
ひらがな多い。文体が煩わしく、疲れる。
ちょっとだけ我慢。
すると、すらすら読めるようになります。
もちろん文体にも意味があって、作者の意図がわかると「あー!」って、おもしろくなる。
◇ 本の中身
名前の明かされない「わたし」と家族の物語。
母は亡