きらたかし『ハイポジ』|絶対に忘れられない漫画が、そこにはある
天野光彦は妻に離婚を切り出され、会社もリストラされたばかりの 46 歳。自身の境遇を嘆いていた光彦だが、気がつくと 16 歳の自分の中に。時は 1986 年。密かに想いを寄せていた小沢さつき。高校時代は話したこともなかった妻の幸子。セピア色だった想い出がカラフルに輝きだす!
『僕だけがいない街』など、タイムリープして学生時代に戻る設定はよくあるが、46 歳の中年真っ盛りが風俗店で倒れて高校時代に戻り、あの頃の青春を恋を取り戻そうと奮闘するこの物語は、凄く切なくて、心に響いてしまった。それは一周くらい違うが私もおっさんで、気持ちが分かってしまうから。意外にも学生時代って、鮮明に覚えていて、長い月日が流れた気がしない。特に、好きだった女の子のことを未だに忘れていない。勇気が出なくて言えなかった言葉を、今なら言える、大人になって、後悔を知ったから。家庭とか仕事とか、今の境遇が上手くいってなくて不満があるなら、悔しいなら、尚更、次は上手くやりたいと願って読んでしまう。勿論、私たちの現実では無理なのに。だから学生時代を思い出して、胸が苦しくなって、泣いてしまったし、特に最終回の展開は、呼吸が乱れるくらいだった。青春時代に、青春を満足に謳歌しなかった、その後悔は、自分の責任。後はもう、若返ることなく、死に向かっていく。せめて、漫画の中で、憧れた青春を取り戻せたら、いいんじゃないかと思う。ところで、きらたかしは『赤灯えれじい』連載から暫く読んでいなかったのだが、この絵の進化にも若干の感動。
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この漫画も忘れられない
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