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#短編小説
【SS】火星のおじいちゃん
おじいちゃんは地球人だ。
地球が滅んで、人類が火星に移り住んだ時、おじいちゃんは今の僕と同じ小学生だった。
今のおじいちゃんはもうボケてしまって、地球のことを聞いても何も話してくれない。
けど、まだ僕が4歳だった頃、おじいちゃんが言っていた。
「俺は、ラーメンが好きだったよ」
教科書で見たことがある。小麦粉を使った細長い「麺」と呼ばれるものが、濃い色の汁に浸かっているものだ。
火星には
【SS】違法の冷蔵庫
誰しも、心に違法の冷蔵庫があるんだ。
自分の法律を破る時に使うものが入っているの。
秩序を保つためにやってること、みんな実はあるでしょ。
無闇に怒らないとか、約束は守るとか、わがままは言わないとか。
理性的に生きるとか、冷静にいるとか。
でも、それが苦しくなる時がある。
そんな時、人は違法の冷蔵庫を開けて中身を使うの。
それぞれが影響を与えないように、プラスチックのビニールで密閉され
【SS】株式会社リストラ
「なんでこんな会社名にしたんですか」
丸い耳をしゅんとさせながら虎島が不満を呟いた。
「そりゃあ、リスとトラが開いた会社だしな!」
利洲山が前歯を出して笑った。ふわふわなしっぽが椅子から溢れている。
会社を開いて三ヶ月、利益はほとんどなし。仕事仲間も見つからず、社員はこの2匹のみの小さな会社。つけた本人は大満足なようだが、相方は不服なのか尻尾をいじいじ。
「リスを名前の最初に入れたかった
【1分マガジン】夢を売る人
しゃぼん玉、好きな夢が見れるしゃぼん玉作りませんか。
そう声をかけてきたショートカットのお姉さんは、どこからともなく小瓶を取り出した。
青みがかった瞳なのに、顔はスッキリ整った日本人顔。そのアンバランスさが、不気味に見えた。
そもそも、仕事帰りの夜の街中で、突然声をかけられるというのも不可解だ。
胡散臭いにもほどがある。そう思っていたのに、僕は気づけば小瓶を手に持っていた。
「夢を見たい人は
【SS】カーテンの世界
うちのリビングのカーテンは、なぜか人を魅了する力があるらしい。
そのカーテンは居間から外に出られる窓にかかっていて、カーテンを開けると小さな庭を見渡すことができた。
親の友人が家に遊びに来た時には必ず「素敵なカーテンですね」と言われるし、保育園に通う弟の友達は、必ずみんな包まりにくる。
そして人だけではなく、家の猫でさえ昼寝をするときはこのカーテンの下に来るのである。
だが、そこま