【1分マガジン】夢を売る人
しゃぼん玉、好きな夢が見れるしゃぼん玉作りませんか。
そう声をかけてきたショートカットのお姉さんは、どこからともなく小瓶を取り出した。
青みがかった瞳なのに、顔はスッキリ整った日本人顔。そのアンバランスさが、不気味に見えた。
そもそも、仕事帰りの夜の街中で、突然声をかけられるというのも不可解だ。
胡散臭いにもほどがある。そう思っていたのに、僕は気づけば小瓶を手に持っていた。
「夢を見たい人は、その気持ちに抗えないの」
青い瞳を細めて、お姉さんは呟いた。耳にかかったショートカットが、ふんわりと揺れたかと思うとその姿は消えていた。
僕は、高揚しながら足早に家へ帰り、すぐベランダへと出た。少し曇り空な上に、残暑もあって空気が緩い。どちらかと言えば不快な夜だ。
早速ポケットにしまっていた小瓶を取り出して、蓋を開けようとした。だが、なぜか開かない。
よく見てみると、先程にはなかった文字が浮かび上がってきた。
「夢を見たい人は、誰かの夢を叶えてあげましょう」
違和感を覚えて、もう一度ポケットに手を入れハッとした。
そこには自分がもらった小瓶と、全く同じものが入っていたのだった。