web マクロネシア

リトル・マガジン。日本列島を含む、アジア太平洋の島々や半島を「マクロネシア世界」としてとらえ、民俗文化や文学を考察。旅のナビゲーターらによる書評、エセー、論考、動画などをアーカイヴします

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マガジン

  • WEBブック 「映画研究入門」

    レポートや論文で映画を研究するには、どんな方法があるのか。手法や項目別に豊富な具体例を使い、わかりやすく解説するWEBブックの試み

  • ショート・ムービー

    アジア太平洋の島々や半島をめぐる、民族音楽、ダンス、祭り、呪術などの短い動画を集めます。

  • シリーズ 「人類学と民俗学」

    人類学や民俗学とアートの交点で言葉をつむぐ、思索的なエセーをまとめます

  • 連載 「つまみ食い哲学・思想」

    哲学、精神分析、社会学…。本屋の「哲学・思想」コーナーには、難解な本がならぶ。身につけたい最低限の人文知を、入門書でおさえる

  • 連載 「走り読み近代文学」

    気候変動、円安にインフレ、感染症や老後への不安。不安定な時代を限りあるリソースで生き抜き、生を充実させる「教養」を近代文学にまなぶ

最近の記事

映画研究入門(1)「作家研究の切り口 ゴダール篇」

1A 作家とその時代性 【作例1】 『ヒア&ゼア こことよそ』        数年前にヨルダン川西岸地区のラマッラーを訪ねたときのことだ。ちょうどイスラエル軍がカザ地区に攻撃し、パレスチナの民間人に死傷者が多数でていた。夕方ホテルのロビーに戻ったとき、ニュース番組でそれを知った。翌日ベツレヘムの難民キャンプにいくと暴動が起きており、分離壁のまえでタイヤを燃やし、少年たちがイスラエル側に投石していた。一部始終をビルの屋上から取材しながら「まるで新聞やニュースで観た光景にそっ

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      ラフ族のシャーマンによる呪術

      タイ北部の山奥にあるラフ族の村。そこで暮らす40代のラフ族のシャーマン。何度も彼の夢のなかに精霊が登場し、シャーマンになるように要請された。彼は祭壇の前で精霊たちに祈りを捧げ、村人の健康と幸運を呼ぶための呪術をおこなう。 Spellcraft by a Lahu shaman A Lahu village deep in the mountains of northern Thailand. A Lahu shaman in his 40s lives there. Many times, spirits appear in his dreams and request him to become a shaman. He prays to the spirits in front of an altar and performs spells to bring health and good luck to the villagers. YouTubeで見る https://www.youtube.com/watch?v=-HYdX1lP8-M

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        インドネシアの男性グループによるハドラの演奏

        インドネシア人のイスラーム文化祭において行われたハドラの演奏。スーフィーズム系の教団がおこなう宗教的なテクストの暗唱や唱和 Hadra performance at an Islamic cultural festival of Indonesian.Recitation and chanting of religious texts by Sufi orders

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          ジャカルタ、ブロックMの大晦日

          インドネシアの首都ジャカルタ。大晦日の夜、ブロックMという中心部の街路では、出店が軒を連ねて、人々が手にした花火が自由に打ち上げる。 New Year's Eve in Block M, Jakarta Jakarta, the capital of Indonesia. On New Year's Eve, the central street called Block M is lined with stalls and people freely set off fireworks with their hands.

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        • WEBブック 「映画研究入門」
          1本
        • ショート・ムービー
          5本
        • シリーズ 「人類学と民俗学」
          21本
        • 連載 「つまみ食い哲学・思想」
          21本
        • 連載 「走り読み近代文学」
          30本

        記事

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          バナ族のゴング演奏

          ベトナム中部高原、コントゥムから山間部に入った小さな村。ゴング演奏の名手といわれるおじいさんの演奏を記録しました。 大きさと音の高さ異なる、突起があるゴングを手に持ち、仲間たちがその周囲をまわりながらリズムを叩きます。 A small village located in the mountainous area from Kon Tum in the central highlands of Vietnam. I recorded the performance of an old man who is said to be a master gong player. Holding gongs with protrusions of different sizes and pitches in their hands, their friends circle around them and beat the rhythm.

          バナ族のゴング演奏

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          ジャライ族のシャーマンによる祝福歌

          カンボジアのラタナキリ州で撮影した、ジャライ族のシャーマンによる祝福の歌。Andoung Mea村に住む70歳のシャーマン、Kachol Ternさんがジャライ語で、将来の健康と幸運を祈って歌をうたってくれた。 A blessing song by a Jarai shaman, taken in Ratanakiri province, Cambodia. Kachol Tern, a 70-year-old shaman from Andoung Mea village, sang a song in the Jarai language, praying for good health and good fortune in the future. ចម្រៀងប្រសិទ្ធពរដោយ ចារ៉ាយ ចារ៉ាយ ថតនៅខេត្តរតនគិរី ប្រទេសកម្ពុជា។ លោកតា កៅ ឆុល ថេន អាយុ ៧០ ឆ្នាំ រស់នៅភូមិអណ្តូងមាស បានច្រៀងជាភាសាចារ៉ាយ បួងសួងសុំឱ្យមានសុខភាពល្អ និងសំណាងល្អនៅថ្ងៃអនាគត។

          ジャライ族のシャーマンによる祝福歌

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          呪術師を知る

          ジャワ再訪  2019年9月にジャワ島のジョグジャカルタ近郊の村で、ジャティランと呼ばれる憑依芸能の調査と記録映像の撮影をおこなった。2020年3月にルソン島の山間部をめぐった旅をさいごに、パンデミックによって海外へ調査旅行にいく機会は失われた。ひとまず撮影したフッテージをもとに短編ドキュメンタリーを完成した。2022年8月、およそ3年ぶりにジャワ島に行けることになった。インドネシア語通訳が同行したこともあり、約1ヶ月の滞在のなかでジャティランの撮影だけでなく、パワン(呪術

          ¥500

          呪術師を知る

          ¥500

          憑依芸能の社会学

           これまでブラジルのウンバンダや、ベナン共和国のヴォドゥンなど、精霊がダイレクトに人間に憑依する儀礼を意識的に調査してきた。ところが、2019年の秋にジャワ島中部のジョグジャカルタ近郊の集落で見ることができた「ジャティラン」という憑依芸能では、言葉にならないほどの衝撃を受けた。  そこで、わたしはフィールドワークの方法として映像と写真を使うことが多いので、ギャラリーにてインスタレーション展示に挑戦した。写真パネル27枚と2面マルチの映像によるインスタレーション作品を展示し、

          憑依芸能の社会学

          『熱源』 川越宗一

          ¥300

          『熱源』 川越宗一

          ¥300

          『山の彼方の棲息者たち』 加藤博二

           著者の加藤博二については、国有林を管理する森林官だったこと以外よくわかっていない。一九三〇年代から四〇年代にかけて『深山の棲息者たち』『密林の怪女』といった山奥に暮らす人々についての書物を発表している。本書は信濃や飛騨にいたサンカ、炭焼き、猟師、山稼ぎ人、箕売りの乞食婆などとの邂逅を書いた掌編集である。序文で東京・中野の寓居で彼らの面影を思いだすと書いているから、森林官の任にあったのは明治後期から昭和にかけての時代だろうか。  著者が原生林で迷い、サンカの未亡人の小屋に泊

          『山の彼方の棲息者たち』 加藤博二

          『辺境を歩いた人々』 宮本常一

           本書には、近藤富蔵、松浦武四郎、菅江真澄、笹森儀助という四人の、それぞれ時代も立場も異なる人たちが、日本列島の辺境を歩いたさまが評伝風に書かれてている。一八世紀半ばの江戸時代後期から明治末までの一五〇年ほどの時期は、まだ日本という近代国家は確立しきれておらず、中央から遠くはなれた地域まで行政の目が行き届いていなかった。北は千島列島、樺太、蝦夷地、東北など、南は八丈島、奄美、沖縄、宮古、八重山の島々に移動して、彼らはその土地の地理や人びとの生活を記録しようとした。その旅の多く

          ¥300

          『辺境を歩いた人々』 宮本常一

          ¥300

          『中島敦の朝鮮と南洋』 小谷汪之

           「山月記」「李陵」などの作品で知られる小説家の中島敦は、戦前に少年期の五年半を日本統治下の朝鮮で暮らし、後年は南洋庁編修書記として一年近くをパラオで過ごした。本書はこれらの植民地体験を検証していくのだが、中島敦と南洋のテーマは多くの人が論じてきたものだ。私が拙著を書いたときは、あえて中島敦を外して「南進論」を唱えた鈴木経勲、ミクロネシアの民族誌を書いた松岡静雄、彫刻家の土方久功に光を当てたものだ。著者もまた有名人である中島を入り口にし、一九世紀末から二〇世紀初頭にかけて外国

          『中島敦の朝鮮と南洋』 小谷汪之

          『「混血」と「日本人」』 下地ローレンス吉孝   

          ¥300

          『「混血」と「日本人」』 下地ローレンス吉孝   

          ¥300

          ハニ族の通訳さん

           次の本を書くため、東ヒマラヤ、ミャンマー、ラオス、フィリピン、パラオといった地域に暮らす少数民族を訪ねる旅を続けている。九月に念願だった中国の雲南省にいくことができた。ヴェトナムと国境を接する河口[ハーコウ]の町から、乗合バスで紅河の上流へむかう。町をはなれると漢族がいなくなり、ヤオ族やミャオ族の人たちの土地らしくなる。二千メートル級の山岳地帯にかかる霧をかきわけるようにして進んだ。辟易としたのは、公安辺防という警察の検問所の多さだ。金平[ジンピン]まで八時間の旅程で、三度

          ハニ族の通訳さん

          『マニラ–光る爪』 エドガルド・M・レイエス

           フィリピンは熱帯の多島海であり、めまぐるしく表情を変える褐色の美女だ。三月に訪れたときは、ビサヤ諸島の小島にあるビーチで遊び、マニラのショッピングモールで映画祭を観て、トンド地区のスラム街を歩いた。  経済成長を遂げつつある若い国だが、そこかしこに貧困や犯罪などの社会的矛盾がある。島から島へ移動しながら読んだのは、エドガルド・レイエスの小説『マニラ—光る爪』。政治的にも文学的にも長らく列強に支配されたフィリピンだが、六〇年代後半になるとレイエスらはタガログ語文学にリアリズム

          『マニラ–光る爪』 エドガルド・M・レイエス

          ジャン・ルーシュ 西アフリカ映画への貢献

           フランスの映画作家であり、映像人類学者としても知られるジャン・ルーシュ(1917-2004)は、24歳のときに初めて西アフリカの地を訪れた。フランスの植民地だったニジェールで、土木工事の技師として働くためだった。そのときにニジェール川の近くの町で、後年の映画撮影における協力者として欠かすことのできないソンガイ人の友人たちに出会っている。その友人たちのなかから、将来の西アフリカ映画を支える人材が出てくることになるとは、誰が想像することができたろう。戦時中はフランスにもどってレ

          ジャン・ルーシュ 西アフリカ映画への貢献