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嶋田青磁
2018年11月30日 23:16
雪原と紛う白妙の砂漠砂粒はすべて諦念の化石である氷河のように永い時をかけ生の淵へむけ悠然と流れ往く 空と地平線の狭間一羽の鳥が白い翼を瞬かせ光の線を引いた 逃げ水を追い虹の都を夢見少女たちは旅を続ける この世界が巨大な砂時計であると知りながら #詩 #散文詩 #自由詩 #文学 #哲学 #小説
2018年11月12日 00:51
幽かな波音に呼び覚まされた昨夜から降り続いた雨音はなく、月の女神によって夜気のヴェールがかけられた世界は静寂のエーテルで満ちていた 満月の明かりが室内を朧げに照らし、天井には光の波紋が仄かに揺らめく レースのカーテンを開けると、潮騒と海の香りが、恍惚を伴ってわたしを抱擁した髪の、耳の、あらゆる隙間に潮の甘い風が指をすべらせる わたしは出窓に腰掛け、ネグリジェの裾を垂
2018年10月7日 22:31
薄青いステンド硝子が、寂寞としたサンルームに水面のような光を映す。その水源は、此処から遥か遠くであった。 立ち枯れた観葉植物は隅で静かに眠り、埃をかぶった八角形のテーブルと椅子は、あの女(ひと)が立ち去ったときのまま何も言わずに佇んでいる。こちらに向いたままの椅子が、なにかを言おうとして押し黙っているように思えて、わたしはたまらず目を逸らした。 邸の部屋から部屋へうつるたび、
2018年9月14日 22:04
一日に一度 あなたはわたしにキスを送るあなたが額に口づけると、そこに真っ赤な芥子が咲いた左耳のたぶには金木犀ほほには女郎花首すじには蔦が絡みつき乳房は勿忘草で覆われた腹には静かな海色の紫陽花が咲いたが、それはやがて宵の紫色に変わった最後にあなたは左の手をとり、なか指に口づけたすると大きな白い百合が二輪気だるげに頭をもたげた 指輪には重すぎたがその香りはどこまでも濃く