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歴史の逆展劇 〜古代仏教のドラマ〜
九條です。
私が信仰している法相宗(南都六宗のひとつで現存する日本最古の仏教宗派)の根本の教えは「唯識」の哲学。
これは「ただ識あるのみ」という思想。すなわち、私たちが見ているすべての世界は私たちの意識(無意識の領域をも含む)によって成り立っているという思想です。
この「唯識思想」は、法華仏教(法華経を中心とした教え=天台宗、日蓮宗、法華宗など)における「諸法実相」と共通するものがあると思います。
「諸法実相」とは「諸法」すなわち森羅万象すべての「実相」すなわちその存在の根本原理を極めるという教え。
我が国では飛鳥時代の終わり頃(大化改新の頃)に法相宗が伝わり、平安時代のはじめ頃に最澄(伝教大師)によって法華仏教である天台宗が伝えられました。そして中世(鎌倉時代)になって日蓮上人によって日蓮宗(法華宗)が立教開宗されました。
しかし、中国大陸においては隋代に天台宗が興り、唐代に法相宗が開かれたのです。
すなわち、日本へは法相宗よりも天台宗のほうが新しく伝わりましたが、本家の中国大陸では法相宗よりも天台宗のほうが古い教えということになります。これを図示すると…
【中国大陸】
天台宗(隋代)→法相宗(唐代)
【日本】
法相宗(飛鳥時代)→天台宗(平安時代)
と、このような歴史の逆転現象が起こっているのです。しかし唯識仏教(法相宗)も法華仏教(主として天台宗)も、どちらもその起源は古代中国で栄えて古代の日本にもたらされた仏教ですね。^_^
【豆知識(ちょっとだけ専門的)】
天台宗とは
正式名称は「天台法華宗」または「天台法華円宗」。平安時代初期に遣唐使として唐へ留学した最澄(伝教大師)によって唐から日本へ伝えられた。ただし古代中国においては天台宗は隋代に興った宗派であり唐代には少し古い宗派となっていた。
天台宗を伝えた最澄と、当時日本の法相宗随一の学僧(学者僧)であった徳一との間で勃発した「三一権実論争」は日本仏教史上最大かつ最高の論争としてあまりにも有名。
ちなみに空海(弘法大師)もこのとき最澄とともに唐へ留学し、空海は当時、唐の最新・最先端の仏教であった密教(真言宗)を日本へ伝えた。この空海が伝えた密教のインパクトは日本仏教史上(もしくは日本文化史上といっても過言ではない)最大で、当時の既成仏教であった南都六宗をはじめ最澄の天台宗にまで計り知れない影響を与えた。
諸法実相とは
『妙法蓮華経(略して法華経)』の「方便品第二」の初めのほうに出てくる「十如是」すなわち「所謂諸法」とは「如是相」「如是性」「如是体」「如是力」「如是作」「如是因」「如是縁」「如是果」「如是報」「如是本末究竟等」の経文から有名な天台の「一念三千」論が展開されて諸法の実相が説き明かされる。この「一念三千」論は唯識仏教で説くところの「識」の領域内に収まる概念だと思います。
◎「如是=かくのごとく」
◎「本末究竟等=本末(最初から最後まで)は究竟(究極)において等し」
一念三千とは
「一念」すなわち人の一瞬の思い(無意識での思いをも含む)の中に「三千世界」すなわち全ての世界が存在しているという教え。
「諸法実相」も「一念三千」も法華系の仏教(天台宗、日蓮宗、法華宗など)の信仰をされている方にはお馴染みの概念だと思います。^_^
©2023 九條正博(Masahiro Kujoh)
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