モビプレップの悪夢を乗り越えて
、、ふむ、不味いなあと言うのが最初に思った事
モビプレップと言う名前の経口腸管洗浄液を
15分に一回ずつ200ml飲むという事が
どれほど大変なのか実際に体験するまでは
知らなかった
9時30分に初めの一杯目
その15分後、9時45分に二杯目
10時に水を飲んでから
再びモビプレップ一杯目、、二杯目、、
モビプレップモビプレップモビプレップ、、
悪夢そのものだった
モビプレップの悪夢は
はじめの一口目から始まった
ノンアルコールのビールを2日3日外に放置して
炭酸が抜けたあとの残り滓の様な
2、3日前の風呂の残り湯の様な
つまるところ全く美味しくない
飲み物を計十回に渡り飲み干さなければ
行かなかったのだ
腸内環境を清潔にする為に
致し方ない代物なんだろうけど
最後の方はもう背筋どころか体全体がフルフルと
震えてしまって飲もうにも体がそれを拒んで
ちびりちびりとしか飲みこめなかった
ちびりちびりと飲む方が
むしろ辛さは際立つ様に思えたが
一気に飲んだ後の苦しみを味わいたくないと言う
ささやかながらの本能的拒絶反応が
僕にそうさせたのかもしれない
検査を受ける為に健康であると証明する為に
腸内洗浄液を飲むほどにむしろ心は弱まる一方で
体力は奪われて手は震えて目は泳ぎ
目尻に溜まる涙の滴袖口で拭う球体
現実逃避したくなる心の有様
健康ってなに?と思いたくなるくらい
精神的に身体的にもダメージを食らってしまった
僕はそれでも飲まなければいけないのだと
自らに言い聞かせながらちびりちびりと
口に含んではごくりと喉を鳴らし飲み込み
はあ〜、、、、ああっと息を吐く
健康を証明する為にはものすごいエネルギーが
いる事が分かった
頭の中でもう一人の僕と言い争いながらも
使命感と我が体に押し迫ってる影の事を
思えば逃げるわけには行かなかったのだ
例えそれがたまらない程に不味くても
逃げ出したくても投げ出したくても
含んで飲み込んでこそ確立されていく未来の形
液体を飲むと言う単純で日常的な行為が
こんなにも辛く厳しい葛藤を強いられるだなんて
夢にも思わなかった、、
男の人の貧血はやばいとネットには書いてあった
胃に潰瘍があったり腸に癌があり
そこから出血しているからこその
貧血なのだと、、
死に直面する危機的状況を
見つける為には仕方ないのだが
もう少しましな味付けにしてもらえたら
嗚咽混じりに涙を流しながら
飲む事もなかっただろうに、、
いちご味だのココア味だの
子どもの歯磨き粉的な味付けにして
もらえていたら苦しまずに済んだのに
いろいろ今の世の技術を持ち寄れば
なんだって出来そうなものなのに、、、
心にダメージを喰らうほどの
不味さを乗り越えた僕は
人生初の胃カメラ大腸検査を
受ける為によろよろと立ち上がった
こんなに辛い目にあったのだ
健康以外の何かがあったら
踏んだり蹴ったりだから
健康以外の何かは認めない
明るい未来に向けて自分を奮い立たせて
僕は病院に向かって歩き出したんだ
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