
Photo by
kohrogi
蒲郡みかんの香り
冬になるとダンボールいっぱいの蒲郡みかんを
もそもそと食べるのが我が家の当たり前だった
祖父から毎年のように送られてくる蒲郡みかんは
みずみずしくて甘いからいくらでも食べられた
しかもダンボールに詰められたみかんは
不思議な事にいくら食べても
無くならないのだから
やめられない
とめられないと
某かっぱえびせんの歌を
口ずさんでしまうのは
仕方ない事だと思う
五つ食べようが
十つ食べようが
まだまだダンボールの中には
みかんがゴロゴロあるのだから
こたつで暖まりながら
指先が黄色くなるまで
食べていられるのは至極贅沢
至福の時間である
気づけばダンボールに手を伸ばして
気づけばみかんの皮を剥き
気づけば果肉に吸い付き
齧り付き飲み込み
また新たなみかんに手を伸ばす
その繰り返し
エンドレス
祖父が亡くなってから
ダンボールいっぱいの蒲郡みかんを
見なくなってしまったがついこの間
実家に帰ったら蒲郡みかんが
テーブルの上に置いてあった
母に聞けば親戚から送られてきたらしい
手のひらサイズの懐かしい蒲郡みかん
小ぶりだが手に取ると確かな存在感
喜びの球体
皮を剥くと破けた皮の繊維から
みかんの香りがふんわりと漂ってきた
冬の香り
懐かしいきいろい香り
柔らかな皮を剥いて一房
ちぎって口に入れて浸る
久しぶりの味わい
懐かしの甘さ
みずみずしさ
あぁ冬の喜びが
ぎゅっと濃縮
冬になると
無性に食べたくなる
みかんへの欲求は
蒲郡みかんを小さな頃から
食べてきたからだろう
こたつで暖を取って
みかんをもそもそと
食べていた頃が懐かしい
ダンボールいっぱいの蒲郡みかんが
当たり前のようにあった頃の日常
きいろい思い出が蘇ってくる