傘に願って
恋しくなって傘に願っても雨は降らない
焦がれる気持ちを傘を開く事で伝えようにも
空はどこまでも青く果てしなく広くて
そして雲一つ見えない
太陽が笑っている
蝉が鳴いている
盛り上がっていく夏の到来
陽射しを遮るにはあまりにも頼りない
まあるい影の中から見上げる青空は
眩しすぎて目が痛いくらいだ
長靴なんて似合わない空
雨の気配なんて微塵も感じさせない
まったくの快晴だ
凶暴なまでの陽射し
汗で濡れても気持ち良くない
首筋や背中は塩辛っくてべたべただ
あぁ今この瞬間に雨が降ってきたら良いのになあ
熱せられた大気も柔らかくなって
過ごしやすくなるだろうなあ
熱い風も冷えて生暖かくなって
急にあたりが冷えたものだから
くしゃみの一つでもしてみたら
それも理想的なシチュエーションだ
軽やかに傘を叩く雨粒の音に心が踊る
熱せられたアスファルトの上で
ばたばたと踊るより
雨粒と一緒に軽やかに踊りたい
球体的リズムに合わせて
長靴でがっぽがっぽと踏み鳴らしたい
傘を逆さに持ち替えて雨粒をたっぷりと
その中に溜め込みたい
そんな夢のような雨模様を
夢みてしまう
大気はムワッと暑くて重たい
暑い熱い夏の陽射しの中で
ポタポタと滴る汗の玉
雨が降らなくても濡れていくけど
雨で濡れる喜びとは全然違う
あぁ次はいつ雨が降るのかな
このまま暑い日が続くと
カラカラに乾いていってしまうから
カラカラに乾く前に雨雲には
僕の住む街を濡らしにきてもらいたい
暑さを和らげてもらいたい
束の間の幸せに浸りたい
雨粒でびしょびしょに濡らしてもらいたい
さぞや気持ちが良いだろうなあ