南国の香りとパイナップルな夜
とげどけした球体
ずっしりとした重みには
期待感を高めてしまう説得力があった
普通のパイナップルよりはやや小ぶりだが
立派なパイナップルには違いない
職場の人が沖縄に旅行に
行った際のお土産として我が家の台所で
甘い香りを漂わせながら
堂々とした存在感を醸し出している
パイナップル
スナックパインという品種であると言う
トゲトゲしたウロコの様な房?の部分を
一粒ずつ指でもぎって
食べていけば良いという話だが
ふーむと思う
もぎって食べるって?
え?
つまりどう言う事?
疑問に思ったがはやいか
妻がネットで検索して
YouTubeでスナックパインの
食べ方の動画を見せてくれた
ツンツンしたワイルドな頭と
お尻の部分を包丁で
ごとんと切り落としてしまう
それから文字通り
トゲトゲした房を指で
つまんでちぎれば
果肉が引っ張られて
一口サイズのパインが
指先につままれていると言う塩梅
ふむふむ
なかなかにユーモアな果物じゃないか
なにやら芯の部分まで
食べられるみたいな事を
YouTubeのその動画では
言っていたので
早速実食に移ろうと思う
パイナップルの
ワイルドな頭と
お尻をごとりと切り落とすと
パイナップル特有の甘い香りが
ふわりと漂ってきた
切り口から果汁が溢れてきた
切り落とした断面は鮮やかな
オレンジ色混じりの黄色
みずみずしい肉質に
いただいたパイナップルが
間違いなく美味しい事を証明していた
妻がトゲトゲを指でつまんで
引っ張っていると
繊維がしっかりしているのか
やや力がいる様子だったが
ぶちっと千切れる音がした
「とれた!」と満面の笑みで
楽しそうな声を上げた
そのまま指先につままれた
一口サイズの果肉に
齧り付く妻の姿を見て
僕も一房指先で
もぎって見る事にした
パイナップルの繊維が
千切れる音が聞こえるのが
このパイナップルが
新鮮だからなのだろう
ちぎって食べる果物なんて
巨峰やぶどうの類くらいしか
見た事ない人間からすると
摩訶不思議な体験だ
皮の部分をつまんで果肉に
齧り付くとパイナップルの
香りが口の中いっぱいに
広がった
甘酸っぱい果肉から
染み出した果汁に
全身がふるふると
震えてしまった
めちゃくちゃ美味しいのだ
ジューシーなのだ
繊維がしっかりしていて
噛んで味わい舌が喜んだ
喉が鳴っておかわりを求めてる
房をちぎっては
齧り付いて
ゆっくり味わって食べたらいいのに
妻も僕もわっせわっせと
パイナップルを口に運びこんでいった
もぎもぎの儀式に
夢中になってしまったのだ
おかしな夫婦だ
口や手をパイナップルの汁で
ベタべタしながら
心ゆくまで堪能して
ようやく満たされた頃には
パイナップルの芯もすっかり
食べつくされた後だった
芯の部分は果肉の部分より
歯応えがあってざくざくとした
食感とジュワッと滲み出す
甘酸っぱさがこれまたクセに
なる魅力的な部分だった
あぁパイナップルが
こんなに美味しかったなんて
知らなかった
もぎって食べられる
スナックパインを
もしもどこかで見つけたら
絶対に買わなきゃ!
そう心に誓った熱い火曜日の夜でした
パイナップルの甘い香りが
指先に染み込み
今宵は南国の夢でも
見られるだろうか
もしも南国の夢が見られたら
パイナップルにがっつり
ありつきたいものである
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