寒い日 風の強い日 1304日
街の上空を見えない大きな手がしきりに
ぐるぐると動き回り
何かをかき混ぜているかのような天気だ
強い風が時折吹き抜けていく
街路樹がしなり看板はばたばたと踊り
車はよたよたと赤子のように危なかっしい
おぼつかない足取りで歩く人の姿を横目に
吹き抜けていく冷たい風
狭い路地を抜けては
家々の窓に幾度もぶつかり
揺さぶっていく際に聞こえる音が
なんだか笑い声にも
聞こえるのは気のせいだろうか
厚手のコートにマフラーを
巻きつけてポケットには
ホッカイロを仕込み
背中を丸めてそそくさと
歩いていく人々の姿も
一度ぶわりと木枯らしが吹きば
誰もがその場でぴたりと
動きを止める姿は不思議なものだ
みんな寒いのは苦手なのだ
震えながら風が止むのを辛抱強く
待っては再び歩き出していく
街の上空を見上げれば
やけに足早に流れていく灰色の雲
じっとそんな空の向こうを
見ていたならばやがてとてつもなく巨大な手が
ぐるぐると何かをかき混ぜている姿が
見えてきそうで恐ろしい
あぁコートの襟を立てて
寒さを少しでも避けながら
温かい家に早く帰りたいと望んでしまう
今日は異様に寒い
あの巨大な手に捕まらないように
寄り道はせずに歩いて帰ろう