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青い空の下のアヒルさん1384日
足漕ぎボートと言ったらアヒルさん
遊園地の真ん中にある小さな池には
今日も今日とて何羽かのアヒルさんが
ぐわぐわと漂っている
寒い日曜日の昼下がりだろうと
火曜日の平日の昼下がりだろうと
アヒルさんたちは変わらずにぐわぐわと
漂っている
家族連れで賑わう遊園地で
異質の雰囲気をもつアヒルさんボート
白雲がやけに早い速度で流れていく青い空の下で
波を立てながら進む白い鳥はそのつぶらな瞳で
いつも何を見つめているのだろうか
騒めきに揺れる楽しそうな顔をした人々の姿
浮かぶ白雲揺れるバイキング船
回るコーヒーカップ
あぁここは遊園地楽しそうな声が溢れんばかり
あぁいくらペダルを漕いでも
彼らの様には楽しめない
あの雲の下までは辿り着けない
小さな波にすら押し負けて右に左に
ゆったりゆったり揺れながら
進んでいく事しかできない
がしゃごしょ必死にペダルを
漕いでようやくほんの少し前に進んでいる
アヒルたちを見ていて感じていた退屈さは
実際に乗り込みペダルを漕ぎはじめると
不思議と一時だけ忘れる事ができる
優雅さとはかけ離れたアトラクション
デートと言ったら足漕ぎボートだが
愛だの恋だの互いが意識し合ってるもの同士が
乗る様なアトラクションではないと思う
だが観覧車に乗り込むよりはアヒルさんボートに
乗り込むべきだ思うし
ジェットコースターで絶叫をあげるのも良いが
レトロでアナログで必死になってペダルを
漕ぐのもたまにはよいものだぜ
なかなかどうしてこちらも満たされるものがある
羽ばたけはしないがどこかに行きたいと言う
夢を見させてくれる
どこにもいけはしないと言う
現実も教えてくれる
アヒルたちは今日も今日とて
ぐるぐると池の周りを回り続けている
次に乗り込んできてくれる人たちを
そのつぶらな瞳で探している待っている
波に揺れながら騒めきの真ん中で
青い空の下で必死にペダルを漕げる
アトラクションはアヒルさんボートだけだ