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-そして少年は、”いのち”と向き合い始める-

フォロワーさんに触発され、二時間ほどで短編を書いてみました。
駄作なので、ご容赦ください。(フォロワーさんのご指摘で取り消します💦)



「着いたよー!」
母の声を聞いて、僕は眠い目をこする。今日は出かけることになっていて、朝が異常に早かった。
車に揺られること、かれこれ6時間。僕は今日、家族でキャンプに連れてかれたみたいだ。
「よし、父さんと母さんはさっそくBBQの準備をするぞ!」
なぜか息子以上にはしゃいでいる父。「まずは荷物運びでしょう」と楽しそうに笑う母。
そして、それを冷めた目で見ているのが、子供の僕。
何故かって?こんなWIFIも無い掘っ立て小屋で1日、シティーボーイが何をするって云うんだ。焼き肉が食べたいなら、あみやき亭でいいだろ。
外に出て、ジメジメとした空気を吸い込んだ。雨なのか霧なのか、山はいつも天気が悪い。一緒に薪割り手伝うかぁ、と父が云うのを無視して、僕はキャビンに入る。
くうん、とクヌギの匂いがした。家に匂いがあるなんて、嫌だなぁと思う。だが、外よりはまし。
一面だだっ広い床をぎしぎし鳴らして歩くと、奥に布団が三枚敷かれている。入ってみると、床の硬さが伝わってきて、家のベッドとは大違いだ。出るのも億劫で、僕は薄茶色の天井を眺める。外から、天気と場違いな威勢のいい声が聞こえてくる。
はぁ。 ため息をついた僕はそっと目を閉じた。

 ねぇねぇ おーい 
もう起こしに来たのかよ。「うるさいなぁ」と言って起きあがると、ひんやりとした空気に触れた。周りには露にぬれた草が生えている。
驚いてあたりを見渡すと、そこは一面、こじんまりとした雑木林だった。
目を凝らして周りを見ていると、こんにちは、と声をかけられた。振り向くと、そこには同学年ぐらいの女の子が一人。
勝気そうな顔で、肌が少し焼けているけれど、目はくりくりしていて、まぁクラスにいればかわいいほうだろう、と僕は勝手に思う。
よく見ると、女の子の後ろに、もっと小さい子供たちが、二、三十人くらいで輪になってお喋りしていた。
何か言わなきゃ、と女の子の顔を見ると、
「私たちはここで暮らしていたのよ」とその子は微笑んで言った。
「暮らしていた??」どういうことだろう。
「みんなばらばらになって、お引越ししないといけないの。もう今から、出るところだわ」
確かに、向こうのほうで喋っている子供たちは、どこかしんみりとしている。泣いてる子も数人。
「君は、どこにお引越しするの?」と訊く。僕は先月クラスに転校してきた男の子を思い出した。確か、オトナのジジョウって先生が言ってたっけ。
「私はね… 秘密! でもね、みんなが楽しくなれる、すごいところにお引越しするのよ!!」
それはよかった。僕はちょっぴり嬉しくなった。
「くぬちゃ~ん、そろそろ行くよ~!」
誰かに呼ばれて、「まきちゃん、もうすぐ行くよぅ」と返した女の子は、
「もう行かなくちゃ。。そうだわ、あなたとせっかく会ったのだから、私のお引越し先への招待状をあげるわ!きっと来てね!」
そう言って、僕の手に何かを握らせた。

「・・ちゃん? お母さんが通るわよ~」
ハッと目が覚めた。どうやら寝ている間に床のほうまで転がっていたらしい。
「あら、しょうちゃんがカギを持っていたのね。よかったわぁ。」
あっ、と僕は自分の右手を見る。僕はカギを握りしめて寝ていたみたいだ。
「お母さん、僕が寝ている間に誰かキャビンに入った?」
じゃなきゃ、さっきのは夢?
「誰かって、しょうちゃんがカギを閉めちゃうから、お母さん、マスターキーをもらって入ってきたのよぅ」
あ、そっか。僕は、自分の握っているカギを見る。”くぬぎ”と書いてある。
「この名前、何?」と訊くと、
「それは、このキャビンの名前よ。」と教えてくれた。
「このキャンプ場のキャビンは、それぞれ木の名前がつくのよね~」
あぁ、うん、なるほどなぁ。僕は、あの夢の正体が少しわかった気がして、嬉しくなった。
改めて、自分の寝てた床を見る。模様をじっと見ていると、人の顔のようにも思えてきて、僕はそっとそれをなぞる。しっとりとした手触りの奥で、僕は確かに「命」のコドウを感じていた。そのビートは、このキャビンが、僕と同じ”いきもの”でできていることを、教えてくれる。
「お母さん、やっぱり… 僕、さっきまで誰かと話してた気がするよ。」
「しょうちゃん、寝ぼけちゃって。。気のせいなんじゃない??」
外から、薪を割る音が聞こえてくる。きっと薪も、もとは大きな木だったんだ。ここもかつては雑木林、いや、くぬちゃん達一人一人の住処だった。
彼らの命は形を変えて、キャビンに、薪に、つながってる。
扉に向かいながら、思わず、フッとわらって。
「そうだね、きっと、”きのせい”だね!」
BBQのお肉も、火を燃やす薪も、キャビンも。
たくさんの命が、僕を囲んでいる。
キャンプが楽しくなってきた。きっと扉の向こうにも、たくさんの命がある。
「お父さん、僕も薪割り手伝うよ!」
僕は、命の大地へと飛び出していった。

⋯雲一つない青空が、少年を見つめていた。

実は全体でほぼ二千字です。
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