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日誌「京島の10月」

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筆者はライターとして2022年にすみだ向島EXPOを取材で訪れた。その後この街の魅力に惹かれ引っ越し、京島共同凸工所という工房を立ち上げたが、公私を問わず、半年ほどの生活の中でも…
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京島の10月|31. 各々、それぞれ、また今度

EXPOは昨日で終了。クロージングセレモニーの後、1時間だけオンライン会議に参加するため帰宅し、再び街へ出た。1ヶ月を過ごした人たちが街の各所に集まり、言いようもなく良い時間が流れていた。2日連続で深夜のうどんをすすり終え、家まで歩いて長い祭が終わった。 31日の朝、秋葉原でのミーティングに参加するため、身支度を整えて家を出る。丸の内線で浅草橋まで行くため、押上までの道を少し急いで歩く。日付を越えてから動いていた分があり、歩数計の進みはいつもよりペースが早かった。 会議を

京島の10月|30. 村一周、そしてまた日常へ

すみだ向島EXPO2023の最終日。月曜日なのでというわけでもないが、2-3 個人的な仕事を進める。お昼を過ぎて、1ヶ月間タイミングを逃し続けていた企画に行けそうなことを察知し、曳舟駅前の敷地へ。 飲食のテナントから生まれ変わる途中の建物と周辺の土地を活用し、複数の企業や作家たちでイベントなどに利用している場所だ。過去には大きなけん玉の大会なども開かれ、人があふれる光景を見たことがある。 お目当ての絵付けを依頼し、作業を待つ間、ピンポン台を横目に、けん玉のレクチャ

京島の10月|29. 語り継がねば消えるもの

凸工所は休みで、EXPOの展示を見て回る日曜日。せっかくなので、来年以降は会期中もう少し長く開けてもいいかもしれない。出展者が他の展示をなかなか見れないのは共通の悩みのようだ。 まずは踏切長屋でのワークショップに参加。商店街の中にある工場が主催するもので、パルプと樹脂を混ぜた丈夫な素材を活用。ポンチで穴を開け、カシメ止めるのもコツがいる。久々にアナログな感じで楽しかった。タオルを敷かないと下の階にも響いてしまうという長屋やならではの光景も。 綺麗に組み上がった箱に

京島の10月|28. 文字にするのが勿体ない

睡眠時間が増えた。布団に入る時間はさほど変わっていないので、日中の体力消費が大きいのだと思う。凸工所の10月営業は今日が最終日。今月の一般利用はさほど多くなかったが、それを補って余りあるEXPO関連の来場者やワークショップの参加者が訪れていた。今日も例に漏れず、会期の終わりに向けて増える見学者とたくさん話をした。 京島の人たちの写真を撮っている2人とも話をした。写真を撮っていいですかと聞くと、普通の街では7割くらい断られるそうだが、京島までは大抵OKだという。何となくわか

京島の10月|27. 汁物ドリブンコミュニケーション

昨日に続いて天気の良い日。定例のオンラインミーティングを終え、月末の締め作業などをしつつ午前を過ごす。1週間分の日記を印刷して凸工所に並べた。当初は表紙を31パターン、いろんな機材や素材で作るのだと息巻いていたが、全くもって無謀な挑戦だった。日誌を毎日書くことの作業量をなめていたのだ。アイディア自体は悪くないので、この場所で作れるもののサンプルとして、時間を見つけて少しずつ増やしていきたい。 営業開始後すぐ、レーザーカッターの利用があった。何度も使ってくれている方で、素材を

京島の10月|26. キノコとオブジェの余白

しばらく使っていた睡眠計測アプリを削除し、スマホを手放して寝た。寒くなってきたので腹巻をしてみたら、思いのほかポカポカで、朝の天気も良く目覚めはばっちりだった。チーズをのせたトーストで軽い軽食を済ませ、喫茶店まで歩く。日常から切り離された日が続いたせいか、いつになく仕事がはかどり、少し余裕を持って原稿を提出できた。 お昼過ぎ、隣人がキノコ会なるものを催すことをSNSで知り、行けそうだったので連絡。コンビニで甘いものを買って手土産にした。到着すると、入口のドアは半開きになっ

京島の10月|25. 「会いたさ」の匙加減

カレンダーに何も用事が入ってない平日は久しぶりだ。毎朝駅前の喫茶店で仕事を少しするというルーティンも、かなり間が開いたように感じられた。EXPOの公開日はもちろん、休みの日にも何かしらが催されているので、自分の中での「普通」や「平日」の感覚が揺らいでしまっている。自宅のデスクで黙々と原稿と向き合っているとき、ふとこういう感覚もあったなと思い出すほどだった。 夕方頃、定期的に通っている病院へ。数ヶ月に一度、いつもの薬をもらうだけなのだけれど、初めて「知り合いと出くわしたくな

京島の10月|24. 夜の忘れもの

10月も残り1週間になった。商店街ではハロウィンのチラシが目につく。EXPOが終わっても日常は続くのだから、11月に向けて諸々の準備をしなければいけない。凸工所には期間中たくさんの人が来て、何度も場所を案内したり、こんなことができたらいいねと話をした。受け取ったものをそのまま捨て置くわけにはいかない。次の1ヶ月、次の1年に向けて準備を進めよう。 中高生の頃、年に一度、3日間ほどの文化祭が終わるたび、達成感なのか安堵感なのかわからないが、よく涙を流していた。このメンバーでや

京島の10月|23. 空と地底と屋根裏と

午前の早い時間からしっかりしたオンライン取材。気合が結構入っていたので、終わって一安心しながら休む。昼ご飯を食べ、今日はEXPOをしっかり見るため、珍しくPCも持たずに軽いカバン一つで外に出た。 いざ展示を見ようとなっても、作品数が多すぎるため、最近人から聞いて記憶の新しい場所から足を運んでみる。商店街の中にある廃業した電気屋を活用した展示は、この地域一帯の変化を資料に当たりながらまとめたものだ。焼け残ったとか、崩れなかったという話を耳にする機会は多かったが、写真で見ると

京島の10月|22. 沢口靖子とインプロヴィゼーション

早朝から深夜まで出ずっぱりだった昨日を経て、凸工所の休業日を迎える。今日はお客として楽しむつもりで何となく予定を立てていたが、体がやりたいようにしていたら、動き始めたのは午後2時くらいになった。 バッテリーがほぼ空のスマホをケーブルに繋ぎ、充電する間に部屋の掃除を進める。EXPOの前から今日まで出会った人たちの名刺などを眺め、その広さを感じる。まちづくり、ものづくり、アート。京島の切り口の多さと、それらに魅力を感じている人たちが象徴されているようだった。 充電も大体完

京島の10月|21. そこらへんの物、そこらへんの人

昨晩商店街を歩いていると、いつもお世話になっている方に声をかけられ、凸工所でお願いしたいことがあるとのこと。イベントのプロモーションビデオに使うための道具が必要で、しかも撮影は午前中から行われるという。 イレギュラーな対応だが、朝7:30に集合し、すごい速さでデータを制作し、レーザーカットを動作させ、スプレーで布に柄を着彩するためのステンシルを制作した。 9時前には完成したものを持ち、自転車で颯爽と現場に向かっていった。慌ただしくも爽やかな朝だった。夕方過ぎ、無事にステンシ

京島の10月|20. 口コミに勝るものなし

もう20日になっている。noteに溜まる日誌のヘッダー画像を見るだけでも、本当にいろいろなことが起きたなと感慨深い。10月も半ばを過ぎ、午前中はつい昼寝をしてしまうほど心地良い天気だったが、暖かさが行き過ぎて、時には汗ばむ時間もあった。これはいよいよ異常というほかないのかもしれない。 早めのお昼ご飯をしっかり食べて凸工所へ。掃除や事務作業をするうちに、EXPOのお客さんがぽつぽつと訪れる。知り合いでもいつもと違う場所で出会うと、不思議な感じがする。機材のデモや場所の紹介以

京島の10月|19. 人は走り木々は停まる

今日も今日とて取材と執筆。月毎に担当している件数はさほど変わっていないはずだが、無性に忙しく感じるのは、家に帰ってからすべきことが増えたからだろうか。 別の場所に行って夜帰ってくると、時々、出稼ぎのような感覚になる。もちろん京島の中でも商売をする身ではあるのだが、まだそれだけでは食べていけないし、別の場所に行く方が実入りが良いこともある。こういう話は東京と地方の働き方みたいな文脈で見かけることも多い。お金を稼ぐための商売と、豊かに暮らすための商売は、必ずしもイコールではな

京島の10月|18. はじめの一歩のあゆみ方

ついにこの日が来たかという感じだが、若干酔っ払いながらテキストを書いている。ベロベロというわけではないが、普段より少しふわふわした感覚で、ペンと思考を走らせている。 昨日に引き続き、決まった予定のほぼない日。締め切りの近い原稿や仕事を自宅で淡々とこなしていく。2日連続でしっかり寝たこともあり、体がようやく元気を取り戻したようだ。やはり人間には誰にも会わずに黙々と過ごす日がたまには必要なのだろう。 お昼過ぎ、目を覚ましがてら、家の外に出てイトーヨーカドーへ向かう。半ば義務感