京島の10月|20. 口コミに勝るものなし
もう20日になっている。noteに溜まる日誌のヘッダー画像を見るだけでも、本当にいろいろなことが起きたなと感慨深い。10月も半ばを過ぎ、午前中はつい昼寝をしてしまうほど心地良い天気だったが、暖かさが行き過ぎて、時には汗ばむ時間もあった。これはいよいよ異常というほかないのかもしれない。
早めのお昼ご飯をしっかり食べて凸工所へ。掃除や事務作業をするうちに、EXPOのお客さんがぽつぽつと訪れる。知り合いでもいつもと違う場所で出会うと、不思議な感じがする。機材のデモや場所の紹介以外に、理由もなくふらっと過ごせる仕組みがあると尚良さそうだ。
午後、利用者さんの活動や製品を紹介する記事を作る相談をした。物書きと物作りの二つを組み合わせて生活している筆者としては、是非ともな内容だ。これまで自分でメディアを運用することはなかったのだが、凸工所という場所の試みを伝えるために、そういう媒体があってもいいのかもしれない。場所を開き、運営して、伝えていく。まだまだ未体験のことに溢れている。
EXPO企画のキーホルダー作りはじわじわ口コミで広がっているようで、最初に準備しておいたパーツが全て捌けた。子供の名前を刻印しているのだが、名前を聞くと元気に答える子も、控えめな子もいる。おそらく初めて見るであろうレーザーカッターを「熱いの?」などと疑問を持ちつつ見ながら、3つのパーツをワイヤーに通して結んだら、結構みんな喜んでくれる。
一度ラボに入ったことのある子が、他の子たちに紹介してくれることがある。「この大仏は3Dプリントなんだぜ」とか「レーザーカッターがさあ」とか言いながら盛り上がっていたので、中に招いてみた。5-6人がわさわさと入ってきて、3Dプリントサンプルのタコやらヨーダやらを帽子に載せてはしゃいだりしながら、ワチャワチャしたまま去っていった。また遊びに来てね。
元気の塊が過ぎ去った後は、明日のワークショップなどに向けて資材の片付けなどをする。結構前の破片なども残っており、だらしなくて恥ずかしいが、ようやく一息つけたということでもあろう。ひとまず買って放置していたゴムシートを見つけて、印鑑を試作したりしながら、静かな夜を楽しんだ。
ここ数ヶ月で生まれ変わった商店街のふとん店では、EXPO関連のレセプションが催されており、足元がきしむような空間で、何カ国もの人が対話をしていた。短いスパンで場が作られ、人が集まり、何かを残していく。ミクロなぎゅっとした活動体のパワーを感じる。
ふとん店の改装を手がけた大将は、交差点で海の家を増築し、勉強机なるものを完成させていた。四叉路を眺める廃材の机に惹かれて、ふらりと通りがかった人も話を聞いていた。
コンビニで少しお腹を膨らましてから、ビールとワインを飲みに行く。店には以前、EXPOのスタッフの打ち合わせでチラリとお会いした方がおり、筆者のすすめで来店したのだという。無自覚なうちに、自分もお勧めする立場になっていたのだな。
居合わせた人達と、旅行先のおすすめを話したり、食材や店の好みをシェアしたりするなどして時間を過ごす。人に誘われたり、案内されたりしたら、それに素直に乗っかってみるのが良さそうだ。
このnoteは「すみだ向島EXPO2023」内の企画、日誌「京島の10月」として、淺野義弘(京島共同凸工所)によって書かれているものです。