#348 「ビジネス頭の体操」 6月28日、29日のケーススタディ
はたらくおとな向け。普段の仕事と無関係なケーススタティで頭の体操。
その日にちなんだ過去の事象をビジネス視点で掘り下げています。
普段の仕事を超えて、視野を広げ、ビジネスの頭の体操をするのにぴったり。
考えるための豊富な一次情報やデータもご紹介。
→部分は、頭の体操する上での自分に対する質問例、です。
6月28日(月) 昨年の日本、貿易は赤字?黒字?
通商産業省(現:経済産業省)が1963年(昭和38年)に制定した「貿易記念日」です。
1859年(安政6年)6月28日(旧暦5月28日)、江戸幕府がアメリカ・イギリス・フランス・オランダ・ロシアの5ヵ国との間で結んだ友好通商条約に基づいて横浜・長崎・箱館(函館)の3港を開港し、自由貿易を許可する布告を出したことに因みます。
(この「貿易記念日」は、3月25日の「電気記念日」、4月18日の「発明記念日」、11月1日の「計量記念日」とともに経済産業省4大記念日の一つだそうです)
貿易。
昨年は感染症もあり大きな変化があったと思われますが、実際のところはどうだったのでしょうか?
一般社団法人日本貿易会(JFTC)「日本貿易の現状2021」から実際のところ、を見ていきます。
まず、全体像として2020年は、
☑️ 輸出は68.4兆円(前年比11%減)
☑️ 輸入は67.7兆円(前年比14%減)
と、いずれも2年連続の減少です。
結果、貿易収支は6,700億円と3年ぶりに貿易黒字となっています。
輸出相手国は以下の通り。
1位は中国、15.0兆円(シェア22%)
2位はアメリカ、12.6兆円(同18%)
3位が韓国、4.7兆円(同7%)
輸入相手国は以下の通り。
1位と2位は輸出と一緒ですね。
1位は中国、17.4兆円(シェア26%)
2位はアメリカ、7.4兆円(同11%)
3位はオーストラリア、3.8兆円(同6%)
次に、どのようなものが輸出入されているのかを見てみます。
日本から輸出される品目は以下の通り。
1位は自動車、9.5兆円(シェア14%)
2位は半導体等電子部品、4.0兆円(同6%)
3位は自動車の部分品、2.9兆円(同4%)
反対に世界から輸入される品目は以下の通り。
1位は原油及び粗油、4.6兆円(シェア7%)
2位は液化天然ガス、3.2兆円(同5%)
3位は医薬品、3.1兆円(同4%)
輸出、輸入とも1位、2位である中国とアメリカについては、国別でその詳細データを掲載します。
まずは対中国の輸出と輸入の品目詳細です。
昨年は、対中国では、輸出は2年ぶりに増加、輸入は2年連続の減少となっています。輸出では、非鉄金属が41%増、自動車が16%増、輸入では衣類が18%減、電算機類の部分品が26%と減少する一方、繊維製品が68%増となっています。
次に対アメリカの輸出と輸入の品目詳細です。
対アメリカは輸出入とも2年連続減少しています。輸出では自動車が19%減、原動機が26%減といったところが大きく、輸入では航空機類が47%減、原動機が27%減の一方、医薬品は14%増加しています。
結果、2020年の日中貿易、日本の貿易に占める対中比率は過去最高となっています。
以下の通り、輸出でも輸入でもシェアが急増していることがわかります。
要因としてはいち早く経済活動を再開したことによるものが大きいと考えられます。
日本とは離れますが、2020年の米貿易赤字は2008年以来の高水準となっていて、原油、民間航空機、自動車が押し下げ要因となっています。
→感染症によって世界の貿易の構図も変化した。継続的なものか、一時的なものがまだわからないが、物流の逼迫なども話題となっており、今後、日本企業としてどのようなサプライチェーンを持つことが良いだろうか?
6月29日(火) ○○○○は佃煮界のガリバー!?
東京都台東区東上野に事務局を置き、佃煮を扱う全国調理食品工業協同組合が制定した「佃煮の日」です。
日付は、佃煮の発祥の地である東京・佃島(中央区佃)の守り神である住吉神社が1646(正保3)年のこの日に創建されたことに因みます。
佃煮。
いきなり脱線なのですが、水産庁のHPに「佃煮の世界」というコーナーがあり、「水産庁職員は仮の姿、佃煮エージェントのK」さんなる人が、佃煮の歴史を紹介しています。本能寺の変と関係があるそうで(諸説あります)、ご興味がございましたら以下ご覧ください。
さて、佃煮の市場規模を、と思ったのですが、佃煮というのは主には魚介を材料としますが、広くは牛肉だったも含みますのできっちりしたものは見つけられませんでした。
困った時の総務省家計調査。世帯あたりの佃煮の消費額に世帯数をかけるという荒技で算出すると、佃煮の市場規模は推計で460億円程度です。
佃煮の消費には年代と時期に非常に特徴があります。
☑️ 年代:40代以降、特に70代以降の消費が多く、20代、30代ではほとんどありません。
☑️ 時期:12月に極端に購入が増えます。お節料理のため、でしょうか。
市場規模を他に見る方法はないでしょうか?
佃煮といえば…
そう、フジッコさん、ですね(個人の感想です)。
同社のIR資料を確認したところ、「昆布佃煮」の市場規模推計値がありました。
これによると、2020年の「昆布佃煮」の市場規模は338億円です。先程の家計調査からの推計値460億円というのは、かなり良い線のようです。
それにしても、微減傾向が続いていますね…これは、先程の家計調査の通り、購買層が高齢化し、若年層の取り込みが進展していないこともあるのでしょうか。
そして、驚いたのがフジッコのシェア。なんと50%を超えているんですね。
ちなみに、同資料にはメーカー別売上のデータもありますが、以下の通り圧倒的です(こちらには煮豆も入っていますが)。
ついでなので、フジッコさんの製品別売上高を見て見ましょう。
昆布製品は、塩昆布、佃煮、とろろ昆布、といったところが柱のようですが、当期実績は173億円。対前年で4%減と巣ごもりの恩恵は昆布製品にはなかったようです。
農林水産省の水産加工統計調査で佃煮を含む食用加工品生産量を見てみます。
令和元年の食用加工品生産量は153.8万トンで、ねり製品、冷凍食品、塩蔵品、などの順で多くなっています。
佃煮は「その他」に含まれ、しかも、「こんぶつくだ煮」という分類しかありませんが、2.9万トンとなっています。
最後に。
佃煮で新マーケット、というのはあまり考えづらい、と思っていたのですが、ありました。
環境面から注目されている昆虫食。むかーしにはイナゴなんかは佃煮にして食べていました。それが、おしゃれに(?)復活しているのです。
2020年6月4日(虫の日)にオープンし、コオロギラーメンや旬の虫を使ったコース料理で話題となり、ヒトサラの「2020年日本のベストシェフ&レストラン100」にも選出されたANTCICADA(アントシカダ)が、コオロギの佃煮、を販売して話題になっています。
→佃煮。顧客層の高齢化で市場は微減が続いている。このマーケットで成長するとしたら、どのような戦略が考えられるだろうか?
最後までお読みいただきありがとうございました。
みなさなの頭の体操ネタになるものが1つでもあれば嬉しいです。
昨年7月からこのような投稿を続けています。だいぶ溜まりました。こちらのマガジンにまとめていますので、よろしければ覗いてみて下さい。