ほかの人の好きな「note」を集めている。言葉、絵や写真、映像や音楽。読み返したり、もう一度見たり、聴いたりすることはあまりないと思う。じゃあなぜ集めているのかと問われると、なん…
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自分の言葉① 小林康夫先生
二〇一八年暮れのことです。
フリーランス校正者として通っている出版社の大理石の床の上に、十五センチくらいの一本糞が落ちていました。目を疑いましたが、どう見ても人糞でした。一階の奥の図書室につづく廊下を歩いていくと、トイレの手前に落ちていたのです。
大理石のビルにはもう十五年余り通っていますが、人糞に遭遇したのは初めてのことでした。あまりにも思いがけない景色だったせいか、たちまち動悸がしてきました。
子ども部屋に戻ってきたおじさん
ああ姉さん久しぶり。電話かけてくるなんて珍しいね。ゴールデンウイークも夏休みもコロナでこっちに帰って来なかったから結構長く会ってないね。おかんはコウタたちに会えなくて寂しがってるけど、お義兄さんとかコウタ、かれんは元気?お義兄さん相変わらずタイガースに入れ込んでんの。あの恥ずかしい刺繍入りの特攻服みたいなハッピ着て、かれん連れて甲子園行ってるんや。お兄さん背え低いから、ぶかぶかの特攻服地面に擦っ
もっとみるもう会えない人たちについて 「はじめに」
もう会えない人たちについて、書こう。
そう思いついたのは、つい最近のことだ。
ライターとしての仕事にいきづまり、私的な文章まで書けなくなってしまっている間、それでも私は「何かを書きたい」とずっと考えていた。何も書けないのに、何かが書きたい。でも、何が書きたいのかわからない。一体、何なら書けるのか。
そんなことを考えながら、半年が過ぎ、一年が過ぎ、私は仕事として書くことをやめた。そして、昔してい