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【連載小説】ラジオと散歩と味噌汁と

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あらすじ:散歩から戻り、朝食を摂りながらラジオを聞く。それが私の日常だった。ある日、いつものラジオ番組で、一年ほど前になくなったはずの君のリクエストが読まれた。私は椅子から転げ落…
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2024年3月の記事一覧

【連載】ラジオと散歩と味噌汁と(15/15)

15.リクエスト  曲が終わって、彼女の声が私の回想に割り込んできた。 <おハガキには、ま…

来戸 廉
8か月前
8

【連載】ラジオと散歩と味噌汁と(14/15)

14.菩提寺  実家からの帰りに、君が眠る菩提寺を訪れた。  義母から教えられた墓の場所は…

来戸 廉
8か月前
8

【連載】ラジオと散歩と味噌汁と(13/15)

13.調和  三度目の訪問。  素気なく追い返されると覚悟していたが、意外にも義母は暖かく…

来戸 廉
8か月前
11

【連載】ラジオと散歩と味噌汁と(12/15)

12.再び  翌日、再び君の実家を訪ねた。 「昨日は、突然お伺いして申し訳ありませんでした…

来戸 廉
8か月前
5

【連載】ラジオと散歩と味噌汁と(11/15)

11.訪問  翌日、私は安村に教えてもらった住所を訪ねた。そこは意外と近く、電車で二駅の所…

来戸 廉
8か月前
7

【連載】ラジオと散歩と味噌汁と(10/15)

10.捜索  去年の桜が咲く頃。  私は君に頼まれて買い物に出掛けた。  どこで調べたのか東…

来戸 廉
8か月前
7

【連載】ラジオと散歩と味噌汁と(9/15)

9.写真  ある日。  君が呼ぶ声に、私は寝室へ走る。 「どうしたの?」  そこには、いつものパジャマ姿ではなく、白い花柄のワンピースに着替えた君がいた。 「ねえ、お願いがあるんだけど」  君は寝室の窓際に椅子を置いて壁を背に座っていた。 「何に?」 「今の私の写真を撮って欲しいの」  君からの頼まれ事は久しぶりだった。君は、身の回りのことをほとんど自分でやった。見かねて手を出そうとすると、本気で怒ったものだ。  体調を気遣えば病人扱いするなと怒るし、そうかと言って放って

【連載】ラジオと散歩と味噌汁と(8/15)

8.味噌醸造  そして昨年、一月末のある日。  私は少し前から決めていたことを切り出した。…

来戸 廉
8か月前
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【連載】ラジオと散歩と味噌汁と(7/15)

7.味噌汁  ある朝のこと。  君が朝食を作るのさえ苦労しているのを見て、私は居たたまれな…

来戸 廉
8か月前
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【連載】ラジオと散歩と味噌汁と(6/15)

6.発病  いつ頃からか、君は時々散歩を休むようになった。  最初は体調不良ではなく、他の…

来戸 廉
8か月前
7

【連載】ラジオと散歩と味噌汁と(5/15)

5.散歩  結婚して、二回目の初夏の頃。 「あなた、最近胃の調子が悪いって言っていたでしょ…

来戸 廉
8か月前
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【連載】ラジオと散歩と味噌汁と(4/15)

4.変化  結婚して半年ほど経った頃、結婚前に応募した小説が大賞に選ばれた。  中堅どこ…

来戸 廉
8か月前
7

【連載】ラジオと散歩と味噌汁と(3/15)

3.結婚  君は仕事の帰り、僕はアルバイトの上がりに落ち合った。僕のアパートの近くの大衆…

来戸 廉
8か月前
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【連載】ラジオと散歩と味噌汁と(2/15)

2.再会  中学卒業から十五年目に開かれた同窓会の席で、君と再会した。四年前の夏のことだ。  当時、私は定職には就かずアルバイトで糊口を凌ぎながら、懸賞小説に作品を投稿する生活をしていた。だが小説家として生計を立てるという確固とした意志があったわけではない。そうできればいいなあぐらいに思っていただけだ。  人付き合いが苦手で、友達はいないし、会いたいと思う人もいないのに、なぜ同窓会に出席する気になったのか、自分でもよく分からない。強いて理由を探しても、暇だったからぐらいし