来戸 廉

主に、短編、ショート・ショートを書いています。過去作、新作を交えて公開しております。好きな作家は、星新一、阿刀田高、サキ、池波正太郎、柴田錬三郎、葉室麟 他。

来戸 廉

主に、短編、ショート・ショートを書いています。過去作、新作を交えて公開しております。好きな作家は、星新一、阿刀田高、サキ、池波正太郎、柴田錬三郎、葉室麟 他。

マガジン

  • 【連載小説】10 Days

    「10 Days」は、老人と少年の話です。 少年は、母親の仕事の都合で、殆ど会ったこともない祖父の元に預けられるます。平穏だった老人の日常に、好むと好まざるとに関わらず、たった10日間ですが、周りを巻き込んで色んなことが起こります。話は10年後の祖父の葬儀から始まります。では。

  • 【連載小説】ラジオと散歩と味噌汁と

    あらすじ:散歩から戻り、朝食を摂りながらラジオを聞く。それが私の日常だった。ある日、いつものラジオ番組で、一年ほど前になくなったはずの君のリクエストが読まれた。私は椅子から転げ落ちそうになるほど驚いた。混乱しながらも、君と過ごした日々を思い出す。それはとても奇妙な思い出だった……。

  • 【連載小説】冷蔵庫と魔法の薬

    【連載】冷蔵庫と魔法の薬

  • 【連載小説】リスト

    山村精一は、妻の死後に届いた手紙から、生前妻が杉本隆という男を捜していたことを知った。精一は妻の望みを叶えてあげたいと思った。手掛かりは妻の手帳に記された四名のリストだけだった。精一は、そこに杉本隆の名前を見つけた。一方、末期のガンで余命宣告されていた妻は、一人残すことになる精一のことが心配だった。生きる気力をなくしはしないか、急に老け込みはしないかと憂慮した。そうならぬよう、妻はちょっとしたお呪いを仕掛けた。それが、このリストだった。精一はリストにある人と連絡を取るが、中々杉本隆には行き着かない。繋がっては切れるを繰り返す糸に、やきもきしながらも、精一は杉本隆を捜しつづけるのだった……。

  • 【連載小説】『クール・ストラッティン』、再び

    昔のバンド仲間、笠井の訃報が石井に届いた。連絡してきたのは、当時バンドのマネージャだった景子。かつて石井は、笠井をリーダーとするジャズバンド『ジェイQ』のメンバーだった。大学三年の時、バンドは解散。石井だけがプロに進み、互いに好意を持っていた景子とも離ればなれになった。二十数年ぶりに通夜で再会した元メンバーは、思い出のライブハウスで笠井の追悼ライブをやると決めた。一夜だけのライブのために猛練習する元メンバー達とそれを見守る景子。彼らの思いが絡み合って当日を迎えた。

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 改めまして、来戸 廉と申します。主に、短編、ショート・ショートを書いています。過去作、新作を交えて公開しております。  好きな作家は、星新一、阿刀田高、サキ、池波正太郎、柴田錬三郎、葉室麟、他です。  幼少の頃は漫画ばかり読んでいました。小学4年生ぐらいだったと思いますが、夏休みの宿題で読書感想文を書くというのがありました。その時選んだ本が、「813」でした。数字だけの書名に惹かれて手に取りました。ルパン物です。面白かったでのすが、読書感想文を書くにはそぐわない本でした。

    • 【連載小説】10 days (10)

      6.2  その日の夜。 「こんばんは」  訪いを告げる声がした。 「師匠、どうした? こんなに遅く」  健一は師匠から少し離れて立つ影を認めた。ちらっと目をやって、師匠に戻す。 「佑斗君、いますか?」 「ああ、いるよ。おーい、佑斗」  健一は玄関に一歩入ってから二階に向かって声を張り上げた。 「何?」 「師匠が来てるぞ」 「今、行くよ」  佑斗は階段を駆け下りてきた。佑斗は師匠を見てぱっと顔を輝かせたが、その背にいる圭太の姿を見て表情を強ばらせた。多分圭太とはもう一度会う

      • 【連載小説】10 days (9)

        6.五日目(水曜日)6.1 「おう」  健一が青い顔をして食堂に顔を出した。 「おはよう。はい、水」  健一はそっと椅子に座った。 「すまんな」  痛てっ。健一は喋る度に顔を顰める。酷い二日酔いのようだ。 「何か、変なこと口走っていなかったか?」 「別に」  ママをどうかとか、源三の大馬鹿野郎とか、叫んでいたが、今は言わない方がよさそうだ。 「そうか。どうも夕べは悪酔いしたみたいだ。すまん」  またも謝る。醜態を晒したことを酷く恥じているようだ。 「いいよ、気にしなくても」

        • 【連載小説】10 days (8)

          5.四日目(火曜日)5.1 「午前中、俺は原稿を書くことに専念する」  朝食の後、健一が告げた。健一の職業が執筆業だと、昨日初めて知ったばかりだ。 「僕が来たせいで、遅れたんですか?」 「そうじゃない。子供がそんなこと、気にしなくていい。お前、午前中、どうする?」  佑斗は昨日の魚を釣った感触がまだ手に残っている。 「釣りに行ってもいいですか?」 「いいが、一人で平気か?」 「はい、大丈夫です」 「じゃあ、気を付けてな」  佑斗が商店街をぼちぼち歩いていると、『フルーツパ

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        • 【連載小説】10 Days
          10本
        • 【連載小説】ラジオと散歩と味噌汁と
          15本
        • 【連載小説】冷蔵庫と魔法の薬
          10本
        • 【連載小説】リスト
          14本
        • 【連載小説】『クール・ストラッティン』、再び
          8本
        • ショート・ショート
          59本

        記事

          【連載小説】10 days (7)

          4.三日目(月曜日)4.1 「おい、今日は釣りに行くぞ」  まったく健一の話は唐突で何の前触れもない。 「どこへ?」  佑斗は言った後、直ぐ近くに海があるのに随分間の抜けた質問だったと後悔した。しかし健一は気にする様子もなく、 「俺の長袖のシャツと麦わら帽子を用意したから、それに着替えろ。少し大きいかも知れんが、袖を捲れば着られんことはないだろう」  と食堂の椅子の上に置いた。日焼け止めを放り投げながら、いつもの命令口調は軽快だ。 「それから顔と首と腕には日焼け止めをたっぷ

          【連載小説】10 days (7)

          【連載小説】10 days (6)

          3.3  その日の夜。  けたたましく電話が鳴った。時計は九時を回っている。  ――時間的に、源三だな。  健一は急いで受話器を取る。もしもしと言う間もなく、 「今夜はどうする? 昨日、顔、見せなかったな」  声が跳び込んできた。知らない人には怒声にしか聞こえない。橘源三からの飲みの誘いだった。 「ちょっとな。今日も止めとくわ」  健一は言葉を濁した。本来なら、今日は昼間原稿を書いて、夜になったら飲みに行くという日課だった。そうしたい気持ちは重々あるのだが、流石に坂道を二往

          【連載小説】10 days (6)

          【連載小説】10 days (5)

          3.二日目(日曜日)3.1 「いつまで寝てるんだ。起きろ。もう六時だぞ」  佑斗は寝ぼけ眼で健一を見る。健一の不機嫌そうな顔を見て、自分が今どこにいるか思い出した。夕べ眠れなくて遅くまでラジオを聞いていたのだ。佑斗は飛び起きた。 「おはようございます」 「さっさと着替えろ。着替えたら、パジャマはきちんと畳むこと。ベッドメーキングもやること。いいな」 「ベッドメーキングって何ですか?」 「お前が寝る前、ベッドがどんな風になっていたか、覚えているか?」 「はい。何となく」 「じ

          【連載小説】10 days (5)

          【連載小説】10 days (4)

          2.3  日は天頂でぎらぎらと輝いていた。健一はすたすたと商店街の通りを歩く。佑斗は汗を拭きながらとぼとぼ付いていった。  健一がこの街に住むようになって、もう十年以上経つ。  この街は変わらないなあと思いながらも、少しずつではあるが確実に変わっている。少しずつだから気づかないだけで、人も街も少しずつ年を取り老いていく。それが生きていくと言うことだ。人の営みとはそういうものだ。それが世の常だと分かっていても少し寂しい。  商店街を通る。 「ケンさん、生きのいいのが入っ

          【連載小説】10 days (4)

          【連載小説】10 days (3)

          2.2  田原健一にとって、それは青天の霹靂だった。早朝の珍客なんて想像だにしていなかった。  ベル音が朝の静寂を引き裂き、寝室にけたたましく鳴り響く。うーっ。田原健一は、朦朧とした頭で手を伸ばし目覚まし時計を探って、停止ボタンを押す。しかし、ベル音は鳴り止まない。規則的に断続を繰り返す。  ――あっ、そうだ。  昨日取り替えた電話の着信音だと気づくのに少し時間が掛かった。  受話器を取り上げると、もしもしを言う前に、着信音に負けないくらいの声が耳に飛び込んできた。 「

          【連載小説】10 days (3)

          【連載小説】10 days (2)

          2.一日目(土曜日)2.1  窓から射す日が暑さを増してきた。植村佑斗は後部座席に転がっていた。  佑斗は朝早く、まだ暗いうちに母親の泰子に起こされて車に乗せられた。家を出て、途中から高速道路に乗ったのまでは覚えているが、いつ降りたのか記憶がない。腕時計を見ると、かれこれ二時間になろうとしている。空は段々明るくなった。今どこを走っているのかわからないが、開け放した窓から潮の匂いがしている。 「髪が乱れるから、窓を閉めて」  泰子が神経質そうな声を上げる。 「ねえ、聞いてる?

          【連載小説】10 days (2)

          【連載小説】10 days (1)

          1.プロローグ1.1  梅雨晴れの午後だった。 「いい葬式だったな」  背中で声がした。植村佑斗が振り向くと、老人がタバコを燻らせながら近づいてきていた。 「えっ、源さん?」  おう。  橘源三は小さく手を上げた。暫く見ないうちに髪もすっかり薄くなり、随分シワも増えたように見える。  佑斗は長年の無沙汰を詫びた後、さっきの言葉の意味を尋ねた。源さんはふうと紫煙を吐きながら、 「その通りの意味だ。お前は、葬式にいいも悪いもないと思うだろう。だがな見てみろ。あんなに大勢の人が別

          【連載小説】10 days (1)

          「10 days」は、老人と少年の話です。 少年は、母親の仕事の都合で、殆ど会ったこともない祖父の元に預けられるます。平穏だった老人の日常に、好むと好まざるとに関わらず、たった10日間ですが、周りを巻き込んで色んなことが起こります。話は10年後の祖父の葬儀から始まります。では。

          「10 days」は、老人と少年の話です。 少年は、母親の仕事の都合で、殆ど会ったこともない祖父の元に預けられるます。平穏だった老人の日常に、好むと好まざるとに関わらず、たった10日間ですが、周りを巻き込んで色んなことが起こります。話は10年後の祖父の葬儀から始まります。では。

          予告: 数年前から書き始めたものの、纏め切れず中断していた「10 days」という話を、この際仕上げたいを思います。1話4000文字程度で、20数話になる予定です。こういう場で予告して自分を追い込まないと、話が完成しそうもないので……。

          予告: 数年前から書き始めたものの、纏め切れず中断していた「10 days」という話を、この際仕上げたいを思います。1話4000文字程度で、20数話になる予定です。こういう場で予告して自分を追い込まないと、話が完成しそうもないので……。

          【ショート・ショート】パソコン

          「ちょっと出かけてくるよ」  それが、あの人の最後の言葉になろうとは夢にも思わなかった。  あの日、あの人は朝早くから秋葉原まで出掛けていった。  午後過ぎ、右手にどこかのパソコンショップの紙袋、左手にToposのケーキを持ってのご帰還。求める物が手に入ったようで、すこぶる上機嫌な夫は、私や子供達へのお土産を忘れていない。 「お茶でも入れる?」 「後でいいよ。先にやってしまうから」  そう言いながら、宝物が入った紙袋を大事そうに小脇に抱え、部屋に引き込む。  ガタゴトやる

          【ショート・ショート】パソコン

          【ショート・ショート】鍵

           郵送した方がよかったかしら。  エレベーターのドアが開いた時、私は後悔した。  でも、郵便受けにこの鍵を投げ入れれば、それで終わり。  自分を奮い立たせるように一歩を踏み出した。薄暗い廊下にコツコツと靴音だけが響く。ドアの前に立つと、想い出が走馬燈のように脳裏を巡り、私は軽いめまいを覚えた。  もう一度会いたい。  唐突にそんな思いが胸に湧き上がってきた。  それでどうなるって言うの、苦しいだけよ。  分かっているけど、一目だけ。  鍵を取り出そうとした手が止まり、躊躇

          【ショート・ショート】鍵

          【ショート・ショート】時計

           トイレに時計を置こうと言い出したのは、夫だった。  一日に数回、数分を過ごすだけの狭い空間には要らないと思ったが、それ以外に取り立てて反対する理由もなかった。もし気に入らなければ片付けてしまえばいい。そう軽く考えて同意した。  数日後。  外出から戻って玄関のドアを開けるや否や、けたたましい音が私の耳に飛び込んできた。  どん、どん、どん、と壁を震わせている。何事かと、靴を脱ぐのももどかしく音のする方へ駆け付けた時には、夫はほとんど作業を終えるところだった。 「何してい

          【ショート・ショート】時計