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様々な事情で世に出ることのなかった作品たちをご紹介。
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アパレルショップ綺羅の事件簿 29(終)

アパレルショップ綺羅の事件簿 29(終)

8 〈綺羅〉店内(承前)

うらら 「事件解決! これにて一件落着!」

ほのか 「(うららに向かって)あんたは黙ってていいから」

遥   「よかった? ちっともよくないよ。浮気をしてなかったのなら、最近ノブ君がデートを断るのはどうしてなの? 風俗街の怪しげなビルに出入りしているのはなぜ? 電話の向こうから聞こえてきた女性の声はなんだったの?」

楓   「遥……今まで黙っててごめん」

遥  

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アパレルショップ綺羅の事件簿 28

アパレルショップ綺羅の事件簿 28

8 〈綺羅〉店内(承前)

仁恵   「ロッカーの周りやフックの下に白い粉が落ちていたから、すぐにあんたの仕業だとわかったけど、名探偵さんが得意げに推理を続けるもんだから、なかなか途中で口をはさめなくって……」

遥   「白い粉? あれってマネキンさんの落としたものだったの?」

仁恵  「今は汗でほとんど流れ落ちちゃってるけど、この人、開店直後は顔も腕もおしろいで真っ白だったんだよ。よっぽどマ

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アパレルショップ綺羅の事件簿 27

アパレルショップ綺羅の事件簿 27

8 〈綺羅〉店内(承前)

遥   「だけど、みんなもこの人のこと無視してたよね?」

仁恵  「変なお客さんは下手に刺激しないほうがいいでしょ? 無視するのが一番。とくに害もなかったし、放っておいたらそのうちいなくなるかなあと思って」

麻美  「店長になにかいわれたら注意しようかと思ってたけど、マネキンの真似をして立ってるだけだから、私もまあいいかなと黙認していたわけで」 

早紀  「私も変

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アパレルショップ綺羅の事件簿 26

アパレルショップ綺羅の事件簿 26

8 〈綺羅〉店内(承前)

うらら 「いいえ。犯人はプリンス晶です」

麻美  「貴様、引くに引けなくなってるんじゃないか? プリンス晶が犯人だとしたら、どうやってマネキンに落書きをしたんだよ?」

うらら 「先ほど説明したとおりです。事前に糸を結びつけておいて、ライブの最中に指先でそれを操ったんですよ」

早紀  「マネキンを倒したり、服を脱がせたりすることはできるかもしれませんけど、さすがに糸

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アパレルショップ綺羅の事件簿 25

アパレルショップ綺羅の事件簿 25

8 〈綺羅〉店内(承前)

楓   「プリンス晶が犯人だとしたら、動機はなんだったの?」

うらら 「情報が足りないので、さすがの私もそこまではわかりませんが、(青マネキンの落書きに視線を移して)アホ、バカ、マヌケ、お前の母ちゃんでべそ……これだけ悪口が書かれているのですから、おそらくこの店に相当な恨みを抱いていたのでしょうね」

仁恵  「プリンス晶がうちの店に恨み? 来店したこともないのになん

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アパレルショップ綺羅の事件簿 24

アパレルショップ綺羅の事件簿 24

8 〈綺羅〉店内(承前)

早紀  「ふざけないでください。晶様は向かいの公園で、ずっとライブをしていたんですよ。マネキンに悪戯をする時間なんてこれっぽっちもなかったはずです」

うらら 「落ち着いて、私の話を聞いてください。(青マネキンの肩を叩き)まず、犯人がどのような方法で彼女を殺害したか、それを説明しましょう。(みんなの顔を見回し、咳ばらいをひとつして)まず、マネキンのからだに記された落書き

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アパレルショップ綺羅の事件簿 23

アパレルショップ綺羅の事件簿 23

8 〈綺羅〉店内(承前)

仁恵  「うっかり見落としたってことはないの? 店の前からだってプリンス晶は見えたはずだもん。つい、そっちに目が行っちゃって、警備がおろそかになったってことは?」

麻美  「私は人一倍責任感の強いガードマンだ。もし怪しい奴がいたなら、絶対に見逃すはずがない。なめてもらっちゃ困る」

仁恵  「わかった。ガードマンさん、あんたを信じるよ。でも、そうなると……」

うらら

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アパレルショップ綺羅の事件簿 22

アパレルショップ綺羅の事件簿 22

7 〈綺羅〉店内

 青マネキンが横倒しになっている。服を脱がされ、からだには大量の落書き。

 ほのか、早紀が下手から登場。満足そうな表情を浮かべている。少し遅れて、両肩を遥と楓に支えられた仁恵が登場。

早紀  「ああ……(うっとりとした表情で)今日も晶様はイケメンでした」

遥   「店長さん、大丈夫ですか?」

仁恵  「ああ……もう大丈夫。(一人で立ち上がり)迷惑をかけちゃったね」

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アパレルショップ綺羅の事件簿 21

アパレルショップ綺羅の事件簿 21

6 〈綺羅〉店内(承前)

仁恵  「プリンス晶って誰?」

ほのか 「店長、知らないの? 世界的に有名なイケメンミュージシャン。ギターを弾かせたら超絶すごいんだから。(ギターを弾く真似をして)ちゃららららーん、ちゃらちゃらちゃらちゃらーん」

仁恵  「お腹がかゆいの?」

ほのか 「そうじゃなくてギターを弾く真似! とにかく、ものすごい人なの! あまりのカッコよさに、店長なんて実物見た途端に失

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アパレルショップ綺羅の事件簿 20

アパレルショップ綺羅の事件簿 20

6 〈綺羅〉店内(承前)

遥   「すごい! 名探偵さん、天才だ!」

ほのか 「そうやって説明されれば、なるほどそんな気もしてくるけど、実際うまくいくのかなあ?」

うらら 「では名探偵、星崎うららが実演してみせましょう」

 うらら、青マネキンに近づいて右腕を取りはずそうとするが、うまくいかない。

うらら 「あれ? はずれない。……あれ? あれ?」

仁恵  「探偵さん、無理だよ。そのマネ

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アパレルショップ綺羅の事件簿 19

アパレルショップ綺羅の事件簿 19

6 〈綺羅〉店内(承前)

遥   「(合鍵のひっかかっているフックに手を伸ばして)もうあとちょっと背が高ければ、合鍵に手が届くよね? マジックハンドみたいなものがあれば、どうにかなったんじゃない?」

仁恵  「マジックハンドの代わりになるようなものはなにも置いてないでしょ?」

ほのか 「あ、わかった。(店内のハンガーを手に取り)これならどう? 店長、ハンガーを持ってフックに手を伸ばしてみてよ

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アパレルショップ綺羅の事件簿 18

アパレルショップ綺羅の事件簿 18

6 〈綺羅〉店内(承前)

うらら 「なるほど。ガードマンさんの仰るとおりですね。では皆さんにお訊きします。この中で合鍵の存在を知っていたのは?」

 ほのかと仁恵が手を挙げる。

うらら 「早紀さんは?」

早紀  「このお店には何度か来たことありましたけど、合鍵の置いてある場所なんてもちろん知りませんでした」

うらら 「ガードマンさんは?」

麻美  「私だって知らないさ」

うらら 「ガー

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アパレルショップ綺羅の事件簿 17

アパレルショップ綺羅の事件簿 17

6 〈綺羅〉店内(承前)

ほのか 「ほのか、出勤してすぐに、自分のロッカーへおやつをしまったの」

うらら 「おやつじゃなくて宝石ね」

ほのか 「ああ……宝石をしまったの。ロッカーには鍵をかけておいたんだけど、さっき、おやつ……じゃなくて宝石を取り出そうとロッカーを開けたら、跡形もなく消えちゃってて」

うらら 「(大声で)ザッツミステリアス!」

仁恵  「うわ。びっくりした」

うらら 「

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アパレルショップ綺羅の事件簿 16

アパレルショップ綺羅の事件簿 16

6 〈綺羅〉店内

 舞台中央にほのか。その周りを遥、仁恵、早紀が取り囲んでいる。下手に呆れ顔の麻美。上手に腕組みをしたうらら。

仁恵  「あれ? あなたのお友達はどこへ行っちゃったの?」

遥   「お腹の調子がよくないといって、公園のトイレへ駆けていきました。すぐに戻ってくると思いますけど」

仁恵  「なんか悪いものでも食べたのかな? たとえば、ほのかちゃんのシュークリームとか」

ほのか

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