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アパレルショップ綺羅の事件簿 29(終)

8 〈綺羅〉店内(承前)

うらら 「事件解決! これにて一件落着!」

ほのか 「(うららに向かって)あんたは黙ってていいから」

   「よかった? ちっともよくないよ。浮気をしてなかったのなら、最近ノブ君がデートを断るのはどうしてなの? 風俗街の怪しげなビルに出入りしているのはなぜ? 電話の向こうから聞こえてきた女性の声はなんだったの?」

   「遥……今まで黙っててごめん」

   「え?」

   「電話の向こうから聞こえてきた女性の声って、それたぶんあたしだよ」

   「どういうこと? ノブ君の浮気相手って楓だったの?」

   「違う違う。ノブ君は浮気なんてしてないってば。……さっき、お腹が痛いからって店を出ていったでしょ? あれ、実は嘘。ノブ君に電話してたの。このままだと遥、ノブ君が浮気をしているって誤解しちゃいそうだったから、遥に本当のことをしゃべっていいかどうか、ノブ君に訊いてみようと思って。……それでも黙ってろってノブ君はいってたけど白状するね。あたし、ノブ君から相談を受けていたの。遥にプレゼントを贈りたいんだけど、いい店を知っていたら紹介してほしいって」

   「プレゼントってどういうこと? クリスマスもあたしの誕生日もまだまだ先だけど」

   「(ためらいながら)それは……」

うらら 「遥さん。あなたの彼氏さんが出入りしているビルって……もしかして一階に〈バー孔雀〉ってお店のあるところなのでは?」

   「うん、そうだけど。え? 探偵さん、なんで知ってるの?」

うらら 「わかったぴろぴろ~ん。うららちゃん、あったまいいいいいっ!」

仁恵  「なになになに? いきなりどうした? なにがわかったっていうのさ?」

うらら 「そのビルの五階には、ハンドメイドの婚約指輪を製作する工房があります。もしかして、あなたの彼氏さんはそこに通っているのではありませんか?」

   「え……」

仁恵  「おめでとう。それってつまり……」

うらら 「私の推理によると、あなたとあなたの彼氏さんはまもなく結婚するでしょう!」

麻美  「この探偵さん、初めてまともな推理をしたよ。たぶん、それが真実だね。おめでとう!」

   「あーあ、バレちゃったか。あとでノブ君に怒られちゃうかもしれないけど、仕方ないや。遥、おめでとう」

ほのか 「うわあ、いいな。羨ましい。おめでとう!」

早紀  「おめでとうございます! 私もいつか晶様と結婚を……」

 全員、遥に向かって笑顔で拍手。

   「みんな……ありがとう」

 笑顔の遥。

 キラにスポットライト。

キラ  「〈アパレルショップ綺羅〉の怪事件。すべて平和に解決して、これにて閉幕! またのご来店をお待ちしております」

 客席に向かって深々と礼。

 ――幕。

終わり

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